空(まど・みちお)
 
この青くすんだ 空は
きのうの空のように 見える
百年まえの 千年まえの
もっともっと まえの
サルに にていたころの人間や
キョウリュウたちが 見上げていた
その同じ空のように・・・
 
けれども 地球は
太陽のまわりを まわり
その太陽も 銀河宇宙の中をまわり
その銀河宇宙も
むげんの 大宇宙の中を
むげんに まわっているのだとすれば
 
いま 見上げている
この頭の上の ひろがりは
いま 初めて ここにきたばかりの
ま新しい ひろがりだ
どんなものに とっても 初めての・・・
そしてもう 二どと くることのない・・・
 
ああ それが ぼくらの目には
なぜ 一枚の 空なのだろう
永遠に 変わることのないかのような
こんなに 青くすんだ・・・

●いつだったか、なぜ「蒼穹の涯」なんて名にしたの?と聞かれた。「なぜだろう?」自問してもわからなかった。「で、涯は何色になるの?」とも聞かれた。暗黒のイメージはないし・・・透明?光の粒粒?永遠って、何色だろう?でもそれは、永遠のことかな・・・?わからない・・・。