先日の先生からの手紙の中に「知的に生きていけば老いるのは怖くない」とあった。確かにヘッセも、人は成熟するにつれて若くなると書いている。
 いえ、怖いのではなく「イヤ」なんです。これは現代病でしょうか?先生。
 それとも、これから怖くなるのでしょうか?
 あるいは、先生、ご自身への言葉ですか?

 
 君看隻眼色 
 不語似無憂
 
 君看よ隻眼の色。
 語らざれば憂い無きに似たり。

 良寛さんの好んだ詩。きみ、あの人の両の眼を見てごらんなさい。あの目の奥にたたえられた深い色をよくごらんなさい。あの人は自分のことを語ろうとはしない。どんな人生、どんな過去をたどってきたかを話そうとはしない。
 だから、悲しみや切なさや苦しみや、そんなものはない人のように見える。でもあの人の目をよくごらん。
 あの人の目の奥には悲哀や苦しみが深く沈んでいる。語らないのではない。語れないほどの深い悲しみがあるからこそ、その瞳は澄みわたっているのだ。

 耐え忍ぶ・・・それも知性のカタチなんですね。