「青いとんぼ」(北原白秋)


 青いとんぼの眼をみれば
 緑の、銀の、エメロウド。
                  
 青いとんぼの薄き翅
 とうしんさう   
 燈心草の穂に光る。

 
 青いとんぼの飛びゆくは
 魔法つかひの手練かな。
 青いとんぼを捕ふれば
 女役者の肌ざはり。

 青いとんぼの綺麗さは
 手に触るすら恐ろしく、
 青いとんぼの落つきは
 眼にねたきまで憎々し。

 青いとんぼをきりきりと
 夏の雪駄で踏みつぶす。



 うすばかげろうのようなもろさ、に、またある危険なもの。
 恋慕すれば裏切りがある。満たそうとすると拒まれる。
 ・・・強烈な夏の臭い。陰りゆくための・・・葬送の準備。

 あれもこれも、ありやなしや・・・のはかなさ。