「はまりそ~」「今度、一緒にいこ~」
 息子の言葉、息子の誘い。なんでも、裁判の傍聴に行ったそうな。朝から、4つ見たとかで。
 
 先日、勤めている書店で万引き犯が捕まったという前置きがあり、80過ぎた男性で、どこから、見てもそんなことするようには見えない・・・のに、その日盗ったのが5冊。それを据え置きの椅子で、同じく万引きした蛍光ペンと付箋でじっくり読みながら・・・店を出たところでアウト。
 「は?」は私。転売とかじゃないのね。「読むつもりだし、読んでたし」。

 傍聴の話。朝は窃盗と傷害のふたつ。一番目の窃盗犯は、傍聴席の家族にピースサインを送り、無視されてたと。
 お昼は裁判所の食堂で。「うどんが300円。けっこう、うまいよ」。
 老夫婦もお昼をとっていたのだとか。「80歳は過ぎてるみたい。でね、奥さんが泣いてて、旦那さんが、泣くなって慰めてるというか励ましてた・・・あ~こういう年齢で子供が捕まって、気の毒だなあ・・・って思ったんよ」。

 で、午後一の裁判。被告人席に立ったのは件の旦那。
 「え?」
 こちらも窃盗、傷害などの前科もあり、けっこうな現役。「ありゃ~、奥さん泣くわなあ」

 「行こうよ、すごい。映画どころじゃないよ。社会学やってたでしょ。本より見学よ」「2件目の犯人、ひとりで寂しいからわざと捕まるんだって」。

 「その人はいくつくらい?」
 「もうけっこうなお歳」。

 そういう人生を垣間見るわけだ・・・。
 人生って、どういうもんなんだろう。この世は生きやすいのか、生きにくいのか、謎だ。