『…きょうは、
あたしが、神殿娼婦ってヤツだったころのはなしをするね。
ギリシャにパルテノンってあるでしょ、
まああれに似た神殿が、むかしあったんだわ。いまはないけどね。
あそこには、
ちかくからも遠くからも、かみさまに会いたい人たちが、
神託を聞きに来るの。
だれにって、あたしたちに。
神殿の中にいる、神官さまたちに、神託をいただけるのは、よほど身分のあるひとか、お金持ちで、
そのつぎくらいに裕福な人は、神殿のなかの広間にいる、きれいな女性神官と話せたりもする。
で、三番目くらいのリッチマンが、あたしのお相手ってことになるのね。
あたしは、
神殿までの広~い階段の、
けっこう上の方、
神殿のいりぐちちかくに、場所をとってた。
いちおう、あたしたちにもランクがあってぇ~、
まあ、わたしはそのあたりだったわけよ。
でも、
下の方におりてくのは自由だから、
たまには、いちばん下の方まで行ってみたりもした。そういう気分の時はね。
それで、
おかねなんてほとんど持ってないおっちゃんとも、話をしたし、
それがいま必要だなと感じたら、エッチもした。もちろんタダで。
こういう仕事を、
イヤイヤしてるひとも、階段広場にはいたけれど、
あたしは、
キライではなかったんだよね。
しけたおっちゃんがさあ、
あたしと話して、元気を出してくれたり、
もうそろそろ死にそうなじいちゃんが、
だれもハグさえしてくれないなんてとき、
あたしが抱いてあげたらやっぱりよろこんでたもん。
まあ、
イヤなやつには当たらないように、上の場所をゲットはしたけどね。
そんなかんじで、
あたしはわりと、まいにち楽しく暮らしていたのです。
さて。
そんなあるひのことでした。
(つづく)