ひとが
だいじにされないことを
かなしむことを
よくしってる


きずつけるところ
いちばんいたむのは
どこなのか
わかってる


あしおともたてずに
ちかよりながら
みみをふさげば
ほら


眼は
からまわり


おちつかない
きもちにさせていく
ふあんなきもちを
あおっていくんだ


さあ

ほしいものはただひとつ
ぼくのつぎのふるまいかた


まちわびて


ねがい


ゆるしをこうのだ
なにもわるいことなどしていないのにね


それでいいのさ
ごほうびはイタミ


それからさっと姿をかくして
もうにどと
きみのまえにはあらわれないよ



いつものやりかたで
するりと身をかわした
あなたの足首を
したなめずりしながら掴んだ
あなたによく似たけもの


坊や
だれかつかまえてごらんと
望み通りに掴まえられて


あなたが欲しかったのは
こういうことじゃないはずね


こういうことじゃなかったはずね






 





…なんか、
そんなかんじにされたの、
あたし、あんまりなかったんだよね。


エッチは数え切れないくらいの人と、してきたのにね。


そのひととは、
そのあとどうしたんだったかな…、


エッチはしなかった気がする。


…その日のあと、
あたしは、しぬまでそのひとに会ってない。


しぬまでっていうのは、

あたしが死んだとき、
なんかにテキトーにくるまれて地面に落ちてる(笑)わたしのちかくに、


馬に乗ってるそのひとが来ていてね、


ちゃんと埋葬するように言ってくれたみたいだったんだ。


また会えたから嬉しかったな。


…ああ、
なんで死んだかって?


…あたしは、


あの夜のあと、


…つまり、あのひとが好きになっちゃったんだ。


それで、
神殿娼婦としては、つかえないやつになっちゃったみたいで、


そのあと、
あんまり長生きしなかったんだ。
なんでしんだのか、あまり思い出せないな…


思い出さなくていいか、そんなこと。


まあ、これで、はなしはおしまい。


あたしは、しあわせだったの。さいごのほう特に。』




 


 


…あのねえ、


このはなしは、
あたしのたからものなの。


だから…ね、
そういうつもりで、聞いてくれる?


…あのひの夜には、
月が明るくて、


ひとがあまりいなくなった、夜の階段広場は、白い舞台みたいで、


あたしは、
ひとりで、女優のまねをしてあそんでいたんだ。


あ、わたし、女優にもなりたかったの。
もっと器量がよくて、家柄とか、そういうのがよければよかったんだけど、
幸か不幸か、この神殿に置いておかれた子どもだったので。


赤ん坊だったら、だれかにもらわれたんだけど、


もう話せるくらいになってたので、神殿にいる子、になっちゃった。でも、悪くないでしょ?あたしんち、神殿!だもんね。


…まあ、そんなことはいいや。

ともかく、あたしがそこをあるいていると、
だれか男のひとが来たんだよね。


なんていうか、

顔小さいし身体細いし、
妖精みたいに動きがかるくて、

そんなひと、
みたこともない、


初めてこんなひとを見たわ…と思った。


そのひとは、
わたしのところに階段を駆け上がってきて、


『神託を』


と。


わたしは、
『汝の為すべきところを為せ』と答えた。


で、
そのひとは、
…たぶんあたしと変わらない15かそのくらい男の子は、


なにかに打たれたみたいな、
悲しそうな、顔をしてね。


そのまま、かえりかけたんだけど、
途中で腰を下ろしちゃったから、わたしはそばにいって、隣にすわってみた。


で、
すこし身体がふれたとき、


いろいろなものが、見えました。


そのひとはね、
身分の高いおうちの人で、


こんど、長としての立場につかなければならないし、決められた結婚にも同意しなければいけなくて、


自分の意志でなにかを選べるって状況じゃなくて。
それはもう、うまれたときから、そんな感じで。


でも、
そのひとは、
見た目よりもすごく、なんていうかな、フロンティアとかそういう感じの、
熱い性格のようでした。


結婚も、
好きになって恋した人とするのがほんとうなんだって、思っているみたいだった。


ああ、
だから、
あの神託にがっかりしたんだ…。


このひとは、
たぶん、ひとが欲しいとおもうたいていのものを何でも持っているのに、

どうして、
このひと自身が欲しいとおもうものが、手に入れられないんだろう?


そう思ったら、
なんか泣けてきちゃってね。


『わたしはいつもちかくにいる』と、ことばが出た。


そうしたら、
そのひとは、


わたしのことやさしく、抱きしめてくれたんだ。


(つづく)