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さて今回は、東京・渋谷にありますBUNKAMURA ザ・ミュージアムで開催中の「ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」展を、ご紹介させていただきます。

最後までお付き合いいただければ、幸いです。

 

今回の展示は、タイトルにもありますように、ベルギーを活躍の舞台にした作家の方達の作品が中心になります。

 

ところで、そもそもベルギーって、どういう国なのでしょうか?

 

ベルギーはヨーロッパのほぼ中央、ドイツとフランスに挟まれた場所にあります。

ここには、他にオランダ、ルクセンブルクと言った国もあります。

 

歴史を紐解きますと、古くは15世紀はスペイン領、16世紀はオーストリア領だったのが、フランス革命以後ナポレオンの活躍で、オランダと共にネーデルランド連合王国となります。

その後、1830年にオランダからの独立を宣言し、現在のベルギー王国となるのです。

 

このように、ベルギーは過去に様々な国の支配を受け、かつまた現在も北部と南部で民族・言語の異なる複雑な国家となっています。

こう言った国の歴史が、芸術にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?

 

では、早速本題に入って行きましょう。

 

第1章 15~17世紀のフランドル美術

ここでは、今回の美術展のタイトルにあります「奇想」と言う言葉にちなんだ作品をご紹介させていただきます。

 

まず、最初の作品は、こちらになります。

こちらは、1490年~1500年頃にヒエロニムス・ボスによって描かれた「トゥヌグダルスの幻視」と言う作品になります。

 

「ヒエロニムス・ボスによって描かれた」としましたが、実際には彼の工房の複数の人達が、分業して描いた作品と思われます。

工房や分業制につきましては、以前にもお話させていただいた事があったか、と思います。

 

この作品の最初の印象としましては、実に様々な人達が、実に様々な服装・格好をしている、と言う事でしょうか。

勿論、洋服を着ていない人もいますし、人の大きさもバラバラですよね?

 

そして、左下の赤い洋服の男性がトゥヌグダルス自身で、中央の大きな頭は懲罰の象徴とされています。

また、右端の方には罰として無理矢理ワインを飲まされる人、上の方には地獄を思わせる火災の様子が描かれています。

 

では、次の作品に参りましょう。

こちらは、ヤン・マンデインによって描かれた「聖クリストフォロス」と言う作品です。

いつ描かれたのかについては、分かっていません。

 

こちらも、キャンパス上に様々な人達が描かれています。

人と動物の違いはありますが、よく日本の教科書に出て来る「鳥獣戯画」を思い出しました。

 

また、キャンバスの右端には、聖クリストフォロスと思われる人物が描かれています。

ボスによって描かれ人気を博した、怪物や悪魔の世界は、このように継承されて行きました。

 

続いての作品は、こちらです。

こちらは、ピーテル・ブリューゲル(父)によって原画が描かれた「聖アントニウスの誘惑」と言う作品です。

これは版画の下絵であり、1556年の物になります。

 

ブリューベルは、ボスの作品の忠実な後継者である事を目指したようです。

 

右下に描かれている、頭に後光がさしている聖アントニウスは賢者ですが、その周囲にいる人達は怠惰な生活を送っています。

さらに、その怠惰の象徴として、中央の人間の頭部が描かれています。

 

次の作品は、こちらになります。

こちらは、ペーテル・パウス・ルーベンスの「反逆天使と戦う大天使ミカエル」と言う作品で、1621年に描かれています。

こちらも、「聖アントニウスの誘惑」と同様に、版画の下絵になります。

 

前出のブリューゲルと、こちらのルーベンスが、ボスの作品の影響が一番大きいようです。

そして、ボス、ブリューゲルと、このルーベンスがフランドル美術を代表する作家と言えますね。

 

ミカエルはキリストの守護者として神話に登場する人物ですが、この作品においても「守護神」としての役割を、存分に果たしています。

また、古代彫刻に影響を受けたルーベンスの肉体美がよく描き表されています。

 

第2章 19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派・表現主義

その後次第に、ベルギーでは想像や夢と言った、人間の内面的な分野について描かれた作品が多く登場します。

 

まず、最初の作品は、こちらです。

こちらは、1896年にフェリシアン・ロップスよって描かれた「娼婦政治家」と言う作品です。

この作品もロップスが原画を描き、版画として世に出回った物になります。

 

この作品の女性は、目隠しをしている上に豚に先導されて歩いています。

そして、この豚は欲望で頭がいっぱいになっている様子を表しています。

さらに、女性と豚の足元には、音楽・絵画と言った芸術が象徴的に描かれています。

 

つまり、この作品はタイトルからもお分かりのように、当時の政治家を風刺した物になっています。

 

続いての作品は、こちらになります。

こちらは、「レテ河の水を飲むダンテ」と言う作品で、1919年にジャン・デルヴィルによって描かれました。

 

「ダンテ」と言うタイトルにもありますように、キャンバスの右側に描かれているのは、「神曲」の作者であるダンテです。

そして、左側は女神マテルダで、ダンテにレテ河の水を差し出しています。

 

そもそもレテ河と言うのは、人間が輪廻転生する時に渡る河です。

ダンテは、愛するベアトリーチェへの気持ちを貫けなかった事に対する後悔と懺悔の気持ちで、いっぱいだったのです。

 

次の作品は、こちら。

こちらは、ヴァレリウス・ド・サードレールが1928年に描いた「フランドルの雪」と言う作品です。

 

サードレールは、田園風景を神秘的に描いた作品が多く残されています。

さらに、時間を超越した静寂的かつ神秘的な作品に移行して行きます。

 

この作品では、風景が忠実に描かれています。

また、人間が一人もいない事が、その静寂性を一層際立たせています。

 

そしてもう一つ、この作品では空の占める割合が、作品の半分以上で、この事がこの作品の神秘性を物語っていますね。

 

次は、こちらです。

この作品は、1933年にジェームズ・アンソールが描いた「オルガンに向かうアンソール」と言います。

 

アンソールは最初、室内や海の絵を描いていました。

しかし、その後の画家としての活動においては、他人と意見が合わず孤独だったと言います。

 

その後も仮面や骸骨が作品にしばしば登場したり、自身をキリストとして描いた作品などを残しています。

 

オルガンに座っているのはアンソール自身ですが、この作品の上部は自分がかつて描いた作品である「キリストのブリュッセル入場」です。

自分の作品を前にしてご満悦、と言ったところでしょうか。

 

第3章 20世紀のシュルレアリスムから現代まで

20世紀のシュルレアリスムは、見えない物の中に物を見ようとしたり、夢や幻を表現しようとしたりしています。

 

では、早速参りましょう。

最初の作品は、こちらです。

この作品は、ルネ・マグリットの「9月16日」と言う作品で、1968年に描かれています。

 

マグリットは、ジョルジョ・デ・キリコの作品に強く影響を受け、自身もシュルレアリスムの作品を描き始めます。

シュルレアリスムの代表的な画家の一人、と言えると思います。

 

さて、この作品ですが、どこかおかしいと思いませんか?

答えは、月と木の位置関係です。

 

もし、月が木の後ろの空に出ているのだとしたら、月は木の陰に隠れて見えないはずです。

そして、反対に木が月の後ろ側に立っているのでは、物理的におかしな事になってしまいます。

いずれにしても、この作品における月と木の位置関係は、あり得ないのです。

 

シュルレアリスムでは、しばしばこう言った「現実にはあり得ない」作品が登場します。

 

そして、次の作品は、こちらです。

この作品は、1965年にポール・デルヴォーが描いた「海は近い」と言います。

 

デルヴォーは、初めの頃は古代ギリシア・ローマの美術に影響を受けた作品を発表していましたが、その後デ・キリコの作品に出会ってからはシュルレアリスムの要素を含んだ作品へと変化をとげています。

 

個人的な感想ですが、デルヴォーの作品、特に今回展示されている作品では、目を大きく描いた人物が多く見られます。

またこの作品では、建物はローマ風で古代的なのに対して電柱など近代的な要素もあり矛盾していますが、そこが逆に興味を惹かれます。

 

続いての作品は、こちらです。

こちらは、1963年ルネ・マグリットによって描かれた「大家族」と言う作品です。

 

ちょうど鳥の形をしたその中に、大空と雲が見えていますね。

まるで、空を鳥の形に切り取ったかのようです。

 

この空、海、鳥と言ったテーマはマグリットが他の作品でも取り上げています。

こちらの作品をご覧ください。

こちらは、マグリットが1938年に描いた「前兆」と言う作品です。

 

この作品は、何か洞窟の出口から外を見ているような感じですね。

そして、空と山が描かれています。

 

しかし、山の稜線をよくご覧になってください。

何か、鳥の頭のような形をしている所がありますよね。

 

マグリットは、鳥に何か大きな可能性を見出しているかのようです。

 

続いての作品は、こちらになります。

この作品は、ミヒャエル・ボレマンスが2008年に描いた「The Trees」と言う作品です。

 

ボレマンスのこの作品は、人物を描いていますが、肖像画ではありません。

そして、作品を描くにあたって、特にモデルがいた訳でもなく、従って人物を特定する事は出来ません。

 

また、背景が全く描かれていないのいで、どういう場所の作品なのか分からず、女性が手に持っている物も「?」と言った感じがします。

 

ボレマンスの作品は、このように作品の謎を解く手掛かりが全く無い物が他にもあります。

つまり、あらゆる情報を遮断して、絵画そのものを見よ、と訴えかけているかのような印象があります。

 

 

以上、かなり長くなってしまいましたが、「ベルギー奇想の系譜」展はいかがだったでしょうか?

少しでも興味を惹かれる部分があれば、幸いです。

 

今回も、最後までお読みくださいまして、有難うございました。(^◇^)

 

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