「大手居酒屋チェーン東北事業部編1」


 [東北事業部にて]


東北事業部は、仙台、郡山、福島、長野、新潟の広範囲エリアを管轄しており、様々な課題を抱えておりました。

 

赤字が長く続き、しっかりとした目標も見出せない店長達は、仕事の上ではモチベーションも上がらず、ただ毎日店を開け、閉めるという日々を重ねていたのではないかなと思います。

 

前任者と引き継ぎもかねた初めての会議を仙台で行ったときの話です。

 

長野や新潟からも月に一度は仙台に来てもらっていましたし、現状大赤字を抱えている事業部なので、さぞ中身の濃い会議になるかと思っていました。

 

しかし会議中も缶コーヒーをのみながら

たばこを吸いながらの雑談のような会議が

始まったのです。

 

関東の会議では当然、会議前は自由ですが会議が始まってからは皆真剣に会議の内容に集中しておりましたので、本当にびっくりしたのと

同時にこの状態では立て直すことが出来ないなぁと感じました。


引き継ぎ後の会議でもその状態は変わらず

「お前たちは今の危機的状況を分かっていて

こんな会議をやっているのか?お前たちとは

今日は話したくないから会議はこれで終了」と会議を打ち切り全員返す事にしました。

 

彼らが悪いのではなく当然、統括している

前任者の姿勢が良くないのは分かっています。

 

しかし前任者はもうこの地にはいなくなり

改革していくのは彼等ですので厳しい判断を

したわけです。

 

私は前任者から会議後に彼らがいつも行く

居酒屋を聞いていたので、しばらくたった後にその居酒屋にひとりで乱入しました。


すると私の悪口がピークに達しているところでした。

 

私が顔を出した瞬間、皆静まり返り絶句していたので、自分から真ん中に座り込んで

何故あんな事をいったのかを真剣に伝えました。

 

ここで少し響いてくれた店長もいましたし

ベテランの店長達ははまだまだ疑心暗鬼だったと思います。

 

ある日、東北事業部の中心的店長のお店を訪店した時の事です。


調理場の清掃状況を確認した所、冷凍冷凍庫の汚れが非常に目立ち改善指示を出しました。


この中心的店長は私にもっとも懐疑的であり

表面だけ取り繕うような感じでした。


調理場の担当者は副店長でしたので、「とにかく今日中に綺麗に出来る箇所は清掃しなさい」「後は明日深夜私が来て一緒に清掃するので、ユニフォームを用意しておきなさい」と言い渡して帰りました。

 

まずは店長がその日どういう行動を起こして

改善するのかを考えさせなければと判断したからです。

 

そして次の日の営業終わりに再度訪店しました。

 

すると副店長が「一箇所だけ課長の為に残しておきました」と冗談交じりに言いユニフォームを私に渡したのです。


ダンプは怒りが込み上げて来ましたが

そこはぐっと堪えて、清掃不足が招く危険や

人間以外の動植物の命を保管しておく冷蔵庫の大切さを清掃を一緒にしながら本気で聞かせました。


副店長の顔が変わり清掃にも力が入って来たようです。

 

店長は全く調理場には入って来ず

ホール側の清掃をしながら「この人は本当に深夜に来て清掃するのだろうか」と私が本気で

やるかどうかを試していたのだと思います。

 

この清掃をキッカケにこの店の店長は色々な事に積極的に協力するようになり、真の意味で

中心的な存在になってくれました。

 

本気で接すれば人は必ず動くという原理原則の大事さを再確認させてくれた出来事です。

 

彼はその後会社の組合の4代目の委員長に就任し、社員の代表として社員の為に活躍することになります。