「私は、春日涼子を調べる。相葉くんは菊池兄弟を調べてくれ。くれぐれも気を付けて」
菊池君の依頼を正式に受け、俺と櫻井は調査に入る
こういう依頼の仕事を受けたことがないわけではない
過去に一度、事件を櫻井が解決したことがあった
その時は、俺はまだここに入りたてで、ほぼ櫻井の隣に居ただけだったけど
逆切れした犯人に櫻井が襲われそうになったのを庇い、軽い傷を受けた
そんな俺のことを今でも心配している(表情に全く出さないけど)
「しょーちゃんこそ、ムリしないでよ」
「自分の身ぐらい、守れる」
俺にそう言われて、むっとしてるが、色白の細い身体で力だって弱い櫻井
頭がいいのか、性格なのか知らないけど、思ったこと言うから相手が切れる事が多く
何度、殴られそうになったか…
その度に俺が間に入って相手の気を逸らせてきた
まぁ、優しいとこもあるんだけど
「そんなこと言って…相手を怒らせちゃだめだよ。でももし、怒らせて殴られそうになったら、俺を呼んでね。すぐに助けに行くから」
俺が心配してそう言えば、櫻井は心底呆れたような顔して
「相葉くんは何かのヒーローか?」
「しょーちゃんのヒーローだよ」
櫻井はため息をつき
「不毛な会話だ」
そう言って、事務所を出て行った
出て行った櫻井を見送った俺は
「結構、本気なんだけどなぁ」
そう呟きながら、菊池兄弟を調べるためにスマホを取り出して菊池君へと繋げた
櫻井はゆっくりと目を閉じ、右手の人差し指だけを上下に動かした
それは櫻井が何かを考える時の癖の一つ
そしてまたゆっくりと目を開け
「菊池君」
「はい」
「あなたに、この依頼の覚悟と報酬を払えるだけのお金はありますか?」
「所長!」
「これは、殺人事件の可能性のある案件。あなたのお兄さんの恋人だった人を犯罪者にする可能性の覚悟。そのためにこちらに危険が及ばないと限らない。だからそれに見合ったそれなりの報酬がいる。お支払できますか?」
櫻井の言っていることは正しい
けれど櫻井の提示する金額が、菊池君に払えるとは…
「大丈夫です。覚悟は出来てますし、金額もお支払いします。だから、お願いします。あの女を。兄の死の真相を調べてください!」