あなただけをみつめる。27 | 青いたんぽぽ

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☆.。.†:*・゜☆.。†.:*・゜

 

 

「翔君!」

 

智くんは、オレを見つめるなり嬉しそうにこちらに向かってきた。

 

「来てくれたんだね!」

 

智くんは、笑顔でオレを抱きしめた。

 

「ありがとう。どうだった?」

 

オレを少し離すと、もうあの作品を見たことが分かってるかのように聞いてきた。

 

「綺麗だったよ」

「そう、あれは翔君のために描いたんだ。意味は、小池から聞いたんだろ?」

 

この人は本当になんでも分かってしまうんだ。

 

「聞いたよ。それに、智くんの想いも伝わった」

「そうか」

 

智くんは、真面目な顔になり。

 

「外に行こうか」

 

そう言って、オレから離れ、歩き出した。

 

 

 

会場から出ると小さな公園みたいなところがあり、中にはベンチがあって、そこに2人で座った。

 

「やっと、こういうとこで個展が開けるようになったんだ」

 

智くんは静かに話出した。

 

「最初はさ、ホント自分の実力なんて、ちっぽけなもんだって思い知らされたよ。上には上がいるんだって。挫折するやつもたくさん見てきた。けど、俺は絶対諦めなかったんだ。翔君が俺の背中を押してくれた。寂しい想いもいっぱいさせるってわかったけど、翔君が待ってる。そう思って、頑張ったんだ。送り出してくれた翔君に合わせる顔がないと思ったから。俺は、ずっと翔君だけを想ってたよ。あの頃と気持ちは変わらない。もう、寂しい想いも苦しませることもしない。翔君に側にいる」

 

 

だから、俺と一緒にいてくれないか

 

 

何年も。何年も、その言葉を待っていた。

智くんが、オレを迎えに来てくれることを待っていた。

 

ずっと待っていた。

 

「オレ…」

 

どう言葉にしていいかわからない。

唇を噛み締め、俯く。

そんなオレの髪を優しく、智くんが撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

「ホント、綺麗になったな」

 

オレは頭を振る。

 

「綺麗なったよ、翔君。久しぶりに会った時、びっくりしたよ。あの頃も綺麗だったけど、さらに綺麗になって」

 

だからさ、時間の長さを感じた

 

翔君、ありがとう

 

「え?」

 

智くんの雰囲気が変わり、驚いて顔をあげれば、オレの好きな笑顔で。

 

「来てくれてありがとう。想いを聞いてくれてありがとう。翔君には、感謝しかないな」

「智くん?」

 

もう、俺のことは忘れてくれ

 

 

…どうして?

 

 

「こんなにほっといていたんだからな」

 

翔君、あの人だろ?

 

「え?」

 

翔君の心の中にいる人は

 

 

智くんは、そう言ってオレ抱きしめると。

 

 

「幸せになれよ」

 

 

 
 
 
 
会場から離れ、自分の家までゆっくりと歩いていた。
 
 
幸せになれよ
 
 
智くんの最後の言葉。
 
謝れなかった。
いや、謝ってはいけない。
智くんは、それを望んではいない。
 
オレは、智くんに最後の言葉に笑って頷くことは出来なかった。
 
幸せには、ならないよ
 
オレの幸せは、あの時で全て使い果したから。
だから、オレはもういいんだ。
 
空を見上げ。
 
「ありがとう、智くん」
 
言えなかった言葉を呟いた。
 
 
 
 

 つづく