あなただけをみつめる。26 | 青いたんぽぽ

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手にした1枚のチケット。
それを見つめる。
 
今のオレの気持ち。
 
智くんは何かを感じとったのかもしれない。
 
 
 
智くんの個展までオレは、数日ずっと考えてて。
知恵熱が出るんじゃないかってくらい、悩んだ。
 
ずっと、智くんを想っていた。
ずっと、智くんを待っていた。
 
それは、間違いではなくて。
 
どんな人がオレに惹かれてくれても、気持ちは揺るぐことはなかった。
 
ずっと、智くんだけを想って生きていこう
 
そう決めてた。
 
 
 
 
智くんの個展の日。
 
雲一つない晴天で。
智くんは、オレを太陽だと言った。
 
それは違うよ、智くん
 
オレは空を見上げて、ぽつりと呟いた。
 
 
個展会場は、思っていた以上に広くて。
たくさんの人がいた。
 
凄い人になったんだ。
 
智くんの努力が才能が、この人達を呼んだんだ。
 
オレは、会場の中に入り、壁一面に飾ってある智くんの作品を一つ一つゆっくりと見る。
どの作品も智くんの才能を感じとれるものばかり。
改めて、智くんの凄さを知った。
 
会場内の一番奥の壁一面に大きな絵。
 
 
夜空に浮かぶ蒼い月
月の光を受け、色鮮やかに咲き誇る桜
 
 
この個展のメインだということがはっきり分かる。
そして、これが智くんがオレに一番見せたかったものだとすぐに分かる。
 
凄いよ、凄いよ!智くん
 
智くんが向こうに決めたとき、オレは智くんに同じ言葉を言った。
 
憶えてるよ、あの時のこと
本当に嬉しかったんだ。智くんのことを認められるチャンスだってね
 
思わず笑みが溢れる。
 
「素敵な作品でしょ」
 
いつの間に隣にとても綺麗な女の人が立って、オレに声をかけてきた。
 
「ええ」
「彼の代表作になるわ」
 
彼女はオレに微笑んだ。
 
「櫻井さんですよね」
 
突然、名前を言われて驚く。
 
「え?」
「すぐに分かったわ、『翔君』でしょ」
「失礼ですが」
「あら、私の方が失礼でしょ」
 
彼女はくすくすと笑いながら、手を差し出した。
 
「私、彼、大野智の担当をしてます、小池と言います」
「小池さん」
「はい。私、一度、櫻井さんとお会いしてるんですが、覚えてますか?」
 
オレは小池さんと軽く握手をしながら、記憶を辿る。
 
「お会いしたこと?」
「ええ。お会いしたというか、本当はお見掛けしたというのが正しいですが」
 
そう言われて、はっとして小池さんを見つめた。
 
あの時、智くんの隣に立つ女性。
 
「思い出されました?あの時はすみませんでした。櫻井さんがあの場に居られて、私意地悪をしました」
 
小池さんは申し訳なさそうに頭を下げた。
 
「え?いや、頭を上げてください」
「すみませんでした」
「ホントに」
 
オレは小池さんの肩に触れ、頭を上げるように頼む。小池さんは、オレに言われて頭を上げると真っ直ぐにオレを見る。
 
「昔、私も彼と同じように画家に目指してまして、同じところで彼と描いてました。でも、全然才能がなくて諦めましたけど。彼は、そのころから飛びぬけて才能あふれる人でしたから、いつかその才能が認められ、世界に名を馳せる人だと思ってて。その姿を隣で見たいと、彼の側に置いてもらうようにしました。間違いなく、彼に惹かれていたのは事実です。才能にも、彼そのものにも。櫻井さんのことは聞いていました。あの時、櫻井さんが会場にいるのを見かけたとき、わざと彼の側にいました。彼に櫻井さんに会わないようにしたのも私です。本当に申し訳ありませんでした」
 
オレは、黙って聞いているしかなかった。
 
「今も、彼に対する気持ちは変わりません。だから、彼は私になんか振り向きもしません。ずっと、櫻井さんのことだけを想ってます。この作品でわかりますよね」
 
オレも小池さんも、智くんの絵を見る。
 
「蒼い月は、自分。そして、色鮮やかな櫻は、櫻井さん。今までは、自分を照らしてくれてる櫻井さんを今度は自分が照らしたい。彼はそうこの作品に想いを込めて描きました。櫻井さんに会うため。迎えに来るために、必死に描いてました」
 
彼の心は届きましたか?
 
オレは、こんなにも想われているのに。
智くんのことをあの時、勝手に誤解をして、勝手に終わりだと思った。
 
「彼は、向こうに居ます。会いに来てくださっていただけたんですよね」
 
小池さんは微笑んで、智くんのいる方へオレを案内した。
 
 
つづく