あなただけをみつめる。23 | 青いたんぽぽ

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腐なので、ご注意ください(笑)

常に雑食←

 

進みますか?←誰に聞いてんだよww

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆.。.†:*・゜☆.。†.:*・゜

 

 

店の奥。自分の椅子に腰かけて、いつものように本を開き、コーヒーを飲む。

そう、いつも通り。

店の外は、北風が吹いていて。

入り口の扉が、ガタガタ言ってて。

 

直してもらおうかな・・

 

なんて思ってて。

店には、BGMなんて流してないから、その音がやけに響いて。

 

「今日も暇だなw」

 

この空間が好きだった。

誰にも邪魔されず、一人で過ごす。

今でもそれが苦痛ではないし、そう過ごすことがいつも通りで。

時間が、ゆっくり過ぎ。

四季を感じることが出来て。

それ以上のことは望まない。

 

新しく恋愛をしてみない?

 

松本もニノにも言われて。

 

「恋愛ねぇ」

 

口にして、何もない天井を見上げる。

 

思い浮かんだのは、雅紀。

 

「ダメだろ」

 

1人笑いながら、そうだと思い立ち上がり、読んでた本を椅子に置いて、思い浮かんだ本の棚に行き、一冊取り出す。

海外の風景の写真集。

ペラペラめくり、1ページに手を止める。

 

緑の丘から覗く、青い海、真っ青な空

 

雅紀は、こういうところが似合う。

たぶん、こんなところで結婚式とか挙げるんだろうな。

雅紀は、真っ白なタキシードが似合う。

隣には、可愛らしい女の子がウェディングドレスを着て。

みんなに祝福され、幸せな結婚式を挙げて。

 

オレは、その時、友達として参加出来るかな?

おめでとうと言えるのか?

 

バカバカしい。

何を考えるんだろう。

 

オレは、パタンと閉じた。

 

 

「しょーちゃん、いるぅー」

 

珍しくそんなことを言って入ってくる雅紀。

だから。

 

「いませーん」

 

って笑って応える。

雅紀は、オレの姿を見つけると隣に立ち。

 

「うそだぁー」

「珍しいねw」

「一回、松本さんのまねしてみたかったんだよね」

「なんで?」

「楽しそうだったから」

「何、それw」

 

2人で顔を見合わせて笑った。

 

「何、読んでたの?」

「ん。これ」

 

さっきまで開いていた写真集を雅紀に見せる。

 

「旅行でも行きたくなったの?」

 

普通はそう思うよな。

でも、雅紀の結婚式のこと考えてたなんて言えるわけなくて。

別に友達なら、言ってもかまわない。

そうなんだけど、なぜか言えなくて。

 

「そう」

 

雅紀から視線を外してそう答える。

雅紀は、ふーんと言ってオレに見せられた写真集を取り、ペラペラとめくる。

そして、オレと同じところで手を止めた。

 

「しょーちゃんは、こういうことで結婚式挙げるんだろうね」

「え?」

「2人きりで。静かに約束を交わすんだ、きっと」

 

雅紀は、少し切なそうに呟くから。

 

「それは、雅紀じゃん。可愛らしい子と大勢の友達と。幸せな結婚式を挙げるんだよ」

 

オレは、胸に引っかかるものを無視して笑いながら言った。

 

「しょーちゃんはさ」

「ん?」

 

「好きな人がいるんだよね?」

 

雅紀は、真っ直ぐにオレを見て言った。

 

「え…うん」

「側にいないのに?」

「なにが言いたいの?」

「松本さんとは、付き合ってないの?」

「だから、何が…」

 

雅紀の言っている意味が分からなくて、ちょっとイライラしながら聞き返してたのに。

オレが話している途中で、雅紀はオレをいきなり抱きしめた。

 

え?何?

 

突然のことでオレは驚き声も出せずに固まる。

 

え?なんで?今、何が起こってる?

 

一生懸命頭を働かせるが、答えなんてみえなくて。

オレの身体を包む雅紀の体温と匂い。

雅紀はオレの肩に頭を置き。

 

「少しの間だけ、こうしてていい?」

 

オレは何も答えない。

 

「側にいない人を想うのと、側にいるのに手が届かない人を想うのは、どっちが辛いんだろうね」

 

なんでそんなことを言うんだ。

 

オレと雅紀は友達だろ?

 

「そ…それは、誰の話をしてるの?」

「友達の話」

「友達」

 

「俺、友達でいいと思ったんだ。けど、一緒に居る時間が増えるたびに、そう思えなくなってる俺がいて。でも、それを相手が望んでいるのなら、そうするしかないんだって」

 

「雅紀!」

 

オレは、雅紀の腕の中から逃れようとするがそれを許してくれない。

 

「友達は、いつまで続ければいい?」

 

さらに抱きしめる力を強くして、雅紀はオレに言う。

 

「どうしたら、俺だけをみてくれる?」

 

ダメ。ダメなんだよ、雅紀。

 

オレは…オレなんか、雅紀に想ってもらえるほどの人なんかじゃないんだ。

 

 

「雅紀、離して」

「しょーちゃん?」

 

オレを抱きしめる力が弱くなり、オレは雅紀から離れると、今にも泣きそうな顔をしている雅紀をまっすぐ見つめた。

 

「オレは、雅紀に想って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔君」

 

店の入り口。

 

そこに立っていたのは。

 

ずっと。

 

ずっと、待ち続けた彼だった。

 

 

 

 

つづく