■タイトル:「BUG~芽生えた恋~」

∟4人声劇(男性2名/女性2名)

■作・がみのろま

■曲:GLAY 「ずっと2人で…」

∟この曲をインスパイアして執筆した声劇です!!

 

 

■プロット(あらすじ)
数世紀後の近未来。

人類の9割以上が滅亡し、地球はアンドロイドたちの惑星と化していた。

そんな中、数少ない人類であり研究者であるマナカは、休日の散歩中に自動車事故の現場に遭遇。

アンドロイドのナグモを助けるが、自身が足に重傷を負い歩けなくなってしまう。

ナグモが元々、家事や介護、看護を目的として作られたアンドロイドであったことから(ナグモからの強い申し出もあり}マナカはナグモをヘルパーとして家に置くことにする。

2人で暮らすうちに互いに惹かれあうようになるが、ナグモは自身の様々な数値の変化をバグであると捉えていた。

そこにマナカの友人でもあり、現在はアンドロイド専用の医師をしているルカが訪問。

ナグモの変化はバグではないことを伝える。

ルカの帰宅後、マナカはナグモがバグだと思っている様々な現象は全て「恋心」であることを教え、自分も同じ気持ちであることを告白。

ナグモは「アンドロイドの私が恋をする可能性はない!」と訴えるが、マナカは「世の中には不可能はないんだよ」と言って、車イスから立ち上がってみせる。

やがて2人は結ばれ、永遠を誓う。そこには2人の幸せを願うアンドロイド犬・ロイズの姿もあった。

■舞台
数世紀後の地球。草や木、動物などもほぼ人工的に作られたものである。
今作においてとくに国の指定はないが、どこの国も全て同じような無個性の世界になっている。

会話は翻訳機があるため、国の違い等は関係なく行える。
政治経済等、国の根幹に関わる役職やアンドロイドの研究者や製作者などは残された人類が行っているが、その他のことは大半がアンドロイドの仕事となっている。

人類とアンドロイドの仲は有効であり、戦争等も発生しないため、ある意味においては平和な時代である。


■登場人物
●:男性 / ○:女性

●マナカ
・職業:研究者(植物などを人工的に生産・育成する方法を研究している)
・年齢:20代後半~30代
・一人称:僕

自然を愛し、なんとかかつての地球のように植物が自生するような環境を作りたいと思っている優しい好青年。植物や動物は好きだが、人間やアンドロイドと接するのは得意ではない。しかし同じ大学を卒業したルカだけは親友であり、壊れかけていたところを拾い、自身の手で修復したアンドロイド犬のロイズのことは(それなりに)可愛がっている。

交通事故以降は車椅子での生活を余儀なくされる。(機械の義足を付ければ歩けるようになるが、自分の足で歩きたいという思いが強く、装着を拒否している。プラス、自力で歩けるようになればナグモと暮らす理由もなくなるので、心のどこかでそれを回避している)

○ナグモ
・職業:家事・介護特化型アンドロイド
・年齢:人間としての見た目は20代。実際はベースモデルが開発されて以降アプデを重ね50年以上は生きている
・一人称:私
・話し方:基本的には人類の世話するために作られたので、敬語を使う。ほぼ違和感なく話すが、若干のぎこちなさはある(アンドロ委であるという演出のため)


見た目や動き、会話はほぼ完璧な人間である。感情機能も設定されているが、介護に余計な感情が入り込まないよう、必要最低限しか設定されていない。しかしマナカと出会い、悲しみや喜び、恋などの感情を知っていく。
見た目はスタイル抜群の女性だが、自動車をワンパンチで崩壊させられる程度には怪力。(介護では重いものを持つこともあるため) 趣味は散歩。

○ルカ
・職業:アンドロイド専用医師(技術者)
・年齢:マナカと同い年(20代後半~30代)

数少ないマナカの友人であり、ナグモの主治医であり相談相手でもある。アンドロイドを人間と同等に扱う。視野が広く、本人たちが認識する以前にマナカとナグモの気持ちを知っており、内心では優しく見守っている。
基本的にはお洒落なファッションを好むが、仕事中は上から白衣を着ている。
大人のお姉さん的な色香の漂う美人だが、マナカは全く気にしていない。
(ルカもマナカに対して恋愛感情はなく、あくまで親友である)

●ロイズ
・マナカのペット(壊れて捨てられていたのを拾われた)
・年齢:不明
・一人称;俺

マナカとナグモには彼の言葉が理解できるように設定されているが、他の人には「ワン」と鳴いているようにしか聞こえない。(プライバシー保護のためのセキュリティ機能)
見た目的には可愛い柴犬。基本寝ている(充電)していることが多い。
本来の犬と同等程度、もしくはそれ以上の知能や感情を有している。ふてぶてしいが憎めない奴。

本来の飼い主であるマナカよりナグモに懐いている。


■本編


●時間1:昼ごろ
●場所1:(主にアンドロイドで)賑わう街中
●場面1:マナカ散歩中
○SE1:鳥の鳴き声など外であることが分かる音
○SE2:マナカの足音

マナカ:「あー眠い。もう帰って寝るかぁ……。っておい、あの女……危ないっ!!」

●場面2:交通事故発生
●場面3:マナカがナグモを庇う
○SE3:自動車の衝突音など、事故が起きたことが分かる音

マナカ:「おい、大丈夫か?」

ナグモ:「何がですか?」

マナカ:「何が、じゃないだろ。今、車に轢かれかけて……あれ、あの車どこに行った?」

ナグモ:「あぁ、それでしたら、あちらにあります」

マナカ:「うわ、グチャグチャだな」

ナグモ:「通行の妨げだったので、思わず、やってしまいました」

マナカ:「あれ、君が……?」

ナグモ:「はい。私、腕力ゲージが高いので、あのくらいだったら簡単です」

マナカ:「てことは、君はアンドロイドか?」

ナグモ:「はい。家事介護特化型アンドロイドです」

マナカ:「まぁ無事で良かった。……うぅ、いてっ!」

ナグモ:「足から大量出血していますし、複雑骨折もしているので痛いのは当然です。既に救急専用アンドロイドをオーダーしてますが、念のため応急処置だけしますね」


●時間2:半年後/昼
●場所2:マナカの家/リビング
●場面3:マナカは車椅子生活。ナグモはその面倒を見ている
               今はリビングでコーヒータイム

ナグモ:「足の調子はいかがですか?」

マナカ:「とてもいいよ」

ナグモ:「あのとき私を助けたせいで……車椅子生活にしてしまって……本当に申し訳ありません」

マナカ:「それは、言わない約束だよね?」

ナグモ:「(※1)でも……」

マナカ:「ナグモは僕の足になって、よく働いてくれてる。それで十分だよ」

ナグモ:「(※1より強い口調で) でも……! 今、地球の人口は9割が私のようなアンドロイドです。自動車も遠隔操作型かアンドロイドが使っているだけです。どちらも壊れたら直せますし、直らなければ廃棄すればいいだけじゃないですか。絶滅危惧種である人類が、命がけで助ける価値なんてないんです」

マナカ:「そんなことを冷静に考えられる状況じゃなかったんだよ。それに、ナグモは世界にひとりだけだ。壊れたら直せばいいなんて、そんなこと言っちゃダメだよ。あっ、そういえば、今日はルカがくる日だね」

ナグモ:「あっ、そうでした! 最近気になるバグがあるんで、相談したいんです」

○SE4:着信音(デジタル音)
●場面5:ルカ、マナカの家に到着

ルカ:「マナカ、家の前にいるわ」

マナカ:「ロックは解除してあるから、入ってきてくれ」

●場面6:ルカがリビングに合流

ルカ:「(コンピュータのようなもので検査しながら) ナグモ、最近、調子はどう?」

マナカ:「バグが発生してるみたいなんだ。 ルカ、いつもより丁寧に検査してくれ」

ルカ:「私の検査は、いつだって丁寧よ。それでナグモ、バグっていうのは具体的にどんな症状なのかしら?」

ナグモ:「それが……最近、コアのあたりがズキズキするような感覚がありまして」

ルカ:「なるほど。他は?」

ナグモ:「自己診断システムによると、マナカさんと距離が近づくごとに心拍数が上がり、体温が上昇する傾向にあります。それに……」

ルカ:「それに……?」

ナグモ:「マナカさんが笑うと私の喜びのゲージが上がり、マナカさんが夜中にリビングで泣いているのを見たときは、悲しみのゲージが上がりました。私は基本的な感情はインストールされていますが、このような繊細な機能は搭載されていません」

ルカ:「はい。検査終了。今回も異常なしよ」

ナグモ:「ルカ先生、私の話聴いてましたか?」

ルカ:「えぇ。それはバグじゃなくて、セルフアップデートね。詳しくはそこで顔を真っ赤にしてるマナカに聴くといいわ。じゃ、私はこれで。また来月ね」

●場面7:ルカ、家を出る

マナカ:「ナグモ」

ナグモ:「はい。なんでしょうか?」

マナカ:「僕を見るとコアがズキズキして、心拍数と体温があがるのか?」

ナグモ:「はい。申し訳ありません」

マナカ:「謝る必要はないんだよ。僕も全く同じ気持ち……いや、君の言葉に合わせるならバグが発生しているからね」

ナグモ:「えっ?! それならルカ先生に診断を……」

マナカ:「その必要はないよ。僕は、自分でこのバグの理由を分かっているからね」

ナグモ:「なんなんですか?!」

マナカ:「自分で言うのは、かなり恥ずかしいけれど。これは“恋”だよ」

ナグモ:「コ、イ……?!」

マナカ:「うん。恋愛感情と呼ばれるものだ」

ナグモ:「そんなことはあり得ません! 私はただのアンドロイドで、恋愛感情はインストールされていません」

マナカ:「ナグモ、世の中に不可能ってことはないんだよ。例えば……これを見てほしい」

●場面8:マナカ、ゆっくりと車椅子から立ち上がり、歩く
○SE5:マナカが立とうとしているのが分かるような、ガタガタ音など

ナグモ:「マナカさんが……歩いてる……先生は何があってももう自力での歩行は無理っておっしゃっていたのに」

マナカ:「(若干、息切れしながら) きっとナグモが見た夜中に泣いていた僕は、リハビリに心が折れかけていたときだね。でも、こうやって歩けるようになってきたんだ。あっ……」

○SE6:転倒音
●場面9:マナカ、倒れかける
●場面10:ナグモ、それを支える=2人は座りながら抱きしめあうような形になる

ナグモ:「大丈夫ですか?!」

マナカ:「まだまだリハビリが必要みだいだね。でも大丈夫だよ。どうしても、ナグモの隣を歩きたいからさ」

ナグモ:「えっ?!」

マナカ:「2人で外出するときは、いつもナグモが車椅子を押してくれるだろ? そうすると僕は後ろを向かない限り、ナグモの顔が見えないんだ」

ナグモ:「私の顔なんて、毎日嫌ってほど見てるじゃないですか!」

マナカ:「そういうことじゃないんだよ。なぁ、ナグモ。これからもリハビリ頑張るからさ、ずっと僕の隣に居てくれないかな? 」

ナグモ:「そんなの当たり前じゃないですか。リハビリもサポートします。それに、まだよく分かりませんが、私はマナカさんを愛していますから」

マナカ:「肝心なセリフをナグモに言われちゃったな」

●場面11:実は隠れて一部始終を見ていたロイズ登場

ロイズ:「本当それな。同じ男として情けねーよ」

マナカ:「ロイズ! お前どこから入ってきたんだ」

ロイズ:「お前バカになったのか? 俺は犬型アンドロイドだぞ。犬用の入口から自由に出入りできるんだよ」

マナカ:「お前見てると、あまりのふてぶてしさに犬ってことを忘れるんだよ」

ナグモ:「あっ! ロイズさん! ごめんなさい。エサの時間でしたね。今すぐ用意しますから、待っててください」

マナカ:「ロイズのエサって給油だろ。セルフでできるはずだけどな」

ロイズ:「マナカって本当、バカだよな。ナグモが給油してくれるオイルは最高に美味しいんだよ。ま、人間のお前には分からないか」

マナカ:「ただナグモに甘えたいだけだろ?」

ロイズ:「ちげーよ。でも、ひとつだけ、お前らに言いたい」

ナグモ:「なんでしょうか?」

ロイズ:「悪いけど、お前ら2人きりとかにさせねーから。俺、どこまでもお前らについていくから。それだけ忘れんなよ」

ナグモ:「ロイズさん! そんなの当たり前じゃないですか」

マナカ:「なんだよ、ロイズ。寂しくなっちゃったのか? 可愛いとこあるじゃないか。お前も一緒に決まってるだろ?」

ロイズ:「別に寂しくはないけどな! お前らのことは、応援してるから。ラブラブな夫婦になれよ。じゃ、ナグモ、エサ頼むわ」

マナカ:「夫婦か。まだそこまで話してないのにな。あのバカ犬、焦りやがって」

ナグモ:「でも近年は人類とアンドロイドの結婚は法的に認められてますし、もし嫌じゃなかったら……私と結婚してくれませんか? マナカさん」

マナカ:「あ、はい。もちろん! 僕で良ければ喜んで」

ロイズ:「まーた肝心なセリフ、ナグモに言われてやんの。これだから人間の男は女の尻に敷かれるんだよ」

マナカ:「ロイズ、もうお前外出てろ!!!」

END