私の唯一の娯楽はクラシックホテル巡り。

幸運にもいつも天気に恵まれてきた。

が、今回

初めて雨のなか

向かった川奈ホテル。

 

車窓の外の霞んだ桜がきれいだった。

 

横浜ホテルニューグランド

東京ステーションホテル

宮ノ下の富士屋ホテル

と巡ってきたが

この川奈ホテルが最も古い印象だった。

小高い丘の上に佇む優雅な白い外観がいい。

マリリン・モンローが

ジョー・ディマジオと

お忍びで遊びに来た時の写真があった。

幸せそうだった。

 

幸せそうな笑顔っていいな。

 

このホテルは

メインロビーの現役暖炉が有名だけど

夜は

窓ごとに配されたステンドグラスのスタンドが

幻想的で美しい第二ロビーが私のお気に入り。

空いていて、だいたい誰もいない。

静かで贅沢な空間を独り占め。

背後を通り過ぎる時おりのざわめき。

昔、

オールドスプレンダーという外国煙草があったと思うが

時の流れも、そう、輝くのだなと思う。

 

あちこち古びて痛んではいるのだけど

本物だけの威厳と落ち着きがとても魅力的だ。

 

部屋は536号室。

新しいのでまあ普通。

オーシャンビューのスタンダートA。

大きな窓の外は海。

驚いたのは

冷蔵庫のなかの飲み物が

ミネラルウォーターのみならず

ポカリやお茶や2本のビールまで

すべて無料サーヴィスだったこと。

(ビール、飲まなかったけど)

太っ腹だー。

もちろんコーヒーマシンや紅茶も。

抽斗に並んだミニボトルウイスキーは有料。

 

夕飯はグリルで和食の川奈桜会席を。

(お寿司屋さんより美味しい握りが出てきました)

朝はメインダイニングで洋食にした。

 

メインダイニングは素敵だったけど

グリルはちょっと

うちの田舎の公民館のレストルームと張り合ってた。

グリルだけちょっと庶民していて

昭和的で、やけに馴染めた。

料理がとってもおいしかったしね。

 

かつて、

このグリルでアメリカの軍人たちが

ズラッと席について食事をしている光景が

モノクロ写真に記録されていた。

 

で、今回、

私はすごくストレスを抱えての旅だったので

部屋ではずっと

自分の内側を見つめて溜息、な時間だった。

せっかくのオーシャンビューなのに

水平線には分厚い雲のグラデーション。

これでもかってくらい。

 

私にとっての正しいツイノイキカタクラシカタ

というのを考えた。

なんとなくクラシックホテル巡りなど

していていいのか?

(するけど)

どうせなら最後に

ああ、有意義だったなぁ、と

ほんの少しは

人様の役に立つような事をしなくていいのか?

老いゆくだけの

あぶくのような命だからといって

いちいちのトラブルや生まれ出ずる悩みに

ただただ対処しながらの

朝が来て

夜が来て

食っちゃ寝食っちゃ寝の余生でいいのか?

 

自由なようで不安に追われ

ただ頼りなく

 

決して心は快適ではない、今の私。

 

人の役に立ちたいとか

そういうことではない。

 

私は私に満足したいのだ。

 

ホテルの窓辺に置いた

夫の写真、微笑むだけ。

 

‥‥‥

 

ホテルは存在するだけで有意義だから

いいなぁ。

 

ホテルマンの方が

とても行き届いた配慮で

ありがたかったです。

 

 

 

 読んでくれてありがとう赤薔薇コーヒー