宮ノ下の富士屋ホテルに

ひとりで

電車と徒歩で行く人

あまりいないかもね。

 

キャスターをガラガラと引きずって

正面玄関に続くあの急な坂道

スイースイーとのぼっていく車の横を

徒歩で上まで行軍か、の歩兵約一名。

 

ああ、そうか

こういうホテルなんだよね‥‥。

 

と !

 

そんな

さびしいひょろボッチを見つけるや

急いで坂を駆け下りて来てくれたドアマン氏!

「いらっしゃいませ。ようこそおこしくださいました」

とキャスターを持ってくれ、にっこり。

さすがに

ちょっと

恥ずかしくてテヘへな気分だったけど

 

でも

それが人生最良のホテルでの

最良のハッピー・ステイの始まりだった。

 

お1人様人生が始まってから

お1人様で泊まったホテルの中では

一番優雅で、一番楽しかった。

 

箱根は想い出も多くて

先に荷物をあずけてガラス美術館に行ったりしたけど

かつて

夫の運転でうねうねぐるぐる回った道を

バスに乗ったら

もっと遠くから乗ってきた観光客ですし詰め。

乳飲み子抱いて旅行中の外国人家族

赤ちゃん潰れそう。運転手は不機嫌、赤ちゃんは泣く。

地元のお婆さんたちは降りられない。

ガラス美術館の演奏会は間に合わず。

もう

すっかり懲りて

ホテルに帰る時は美術館前からタクシーに乗った。

 

でも

 

ホテルが救いだった。

部屋は素晴らしかった。

 

ご存知のように富士屋ホテル宮ノ下は

本館、西洋館、花御殿、フォレストウイングと

テーマの異なる館に別れているが

私は本館のヒストリックツインという

クラシックかつシンプルな

居住空間的雰囲気をかもす部屋に泊った。

 

本館2階の六号室。

丘の上に建っているので

眺望はもっと高い場所にいるように感じられる。

ベッドルームの向うに矩形の書斎のような

居心地の良いリビングがあって

デスクが仕事にもってこい。

夏目漱石も好きだったというホテル。

目立たぬよう設置されたエアコン以外に

今もスチーム暖房のラジエターがある。

これが、触るといつでもほかほかと温かで

なんとも心がなごむんだよね。

 

部屋に案内された時、すでに空気清浄機はオンで

室温ともに快適。

ベッドは硬めで寝心地は意外なほど良かった。

部屋のバスルームのお湯が温泉。

アメニティは必要最低限にして充分。

余分なサーヴィス品は無いのだが

大事なところにきちんと経費を使っていて

シリンダーキーなのにオートロックとか

ベッド横のレースのカーテンとか

うまく言えないが

よく使い込んだ高品位の優雅さみたいな

そんな空気に包まれる。

一泊しかしないのに住人気分。

 

お部屋のタイプは色々だし

人の好みも色々だけどね。

不便な部分も無いとは言えないしね。

でも

粋に気が利いていたりね。

 

夕飯は

メインダイニングでフレンチコースをいただいた。

凡俗な典型的日本人の私は、

例によって、やはり

一番安いのではなく

一番高いのでもなく

真ん中のコースを予約。

鮑のポワレと国産牛フィレ肉のロティという

組み合わせが良かったかな。

鮑、好き。

後半になるにつれ

「食べ切れないかも不安症」なので

パンをなるべく食べずに調整。

 

とっても美味しかった。

 

いつもデザートを食べられないのに

今回は完食。

美味しくてたまんない。

ウエイターのサーヴィスも

とても配慮があって感じ良く

そういうのが嬉しかったのかな。

 

ノンアルコールのシャルドネとか

ノンアルコールのピノノワールとか

飲んでみた。

 

‥‥‥。

 

ま、ノンアルのワインは

ビールのノンアルに勝てないよね。

 

瓶のノンアルビール、

あれ、かなり美味しいと思う。

 

連休後なので空いていたこともあり

お1人様でもぜんぜん気にならなかった。

さりげなく写真も撮っていただいた。

 

一度だけ

え、これはどれでどうやって食べるのだ!?

という、スプーンなど必要なさそうに見えるけど

実はスプーンも使う、という料理の時

(汁が無い)

ウエイターさんにどれをどう使うか訊いた。

すると

私が、もしかしてフレンチの基本をよく知らないかと思ったらしくて

(ええ、実はわかってないかもですよ)

次にも、どれで食べるかそっと教えてくれた。

息子というより、孫くらいの年頃の

ウエイターさんの心遣い、

嬉しかったので

有り難く礼を言った。

 

心に残る良いディナーだった。

 

ところで

 

夫とランチを食べに来た時の記憶(大昔)と

ちょっと

メインダイニングのイメージが違っていた。

もっと広くて、柱があって

その柱には華やかな鳥の絵が描いてあったような気がするが

あれはここじゃなかったのかな??

夫婦で、

そういう柱のそばで食事をし、

鳥の絵を眺めた記憶があるけど‥‥。

なんだろ。妄想?

 

ということで

次のブログにも、少し続きを書いてしまうかも。

同じホテルに泊まってもスタンプが貰えるんだったらいいのにな。

一か所につき、一個づつ、なんだよね

クラシックホテルパスポート。

 

 

 

 読んでくれてありがとう赤薔薇コーヒー