感激!『團菊祭五月大歌舞伎』 | 観劇のためのプチ備忘録

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ロシアバレエから舞台芸術の世界へ。
團十郎襲名公演中は歌舞伎を集中して観ます。
舞台鑑賞で学んだことや感じたことを書きつづります。
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『團菊祭五月大歌舞伎』の「昼の部」へ行きました!


「昼の部」の演目は、


鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)

毛抜(けぬき)

極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)


の3本立てです。


『鴛鴦襖恋睦』、源平の武将がらみだからか、紅白の梅が舞台上、左右に分かれてありました。

源平合戦では、紅白の旗をそれぞれ使用していました。


紅白歌合戦や紅白リレーなど、紅白対抗は、源平合戦の旗色が出典です。

白旗神社などは源氏ゆかりの神社であることが多いです。

紅は平家側を、白は源氏側を現しています。


最初、源氏方の松也さんは紅梅側(下手)の立ち位置で、「おやっ?」と思いましたが、相撲に勝った時は、白梅側(上手)に立っていたので、

梅の演出がニクイですね✨


鴛鴦(おしどり)の場面では、相生松(あいおいまつ)の絵が舞台中央にありました。

鴛鴦連理の枝は、夫婦仲がいつまでも仲良く続くことの象徴です。

おしどり夫婦とかいいますよね。


舞台美術に感動したのと、右近さんがキレイでした。

私の隣のマダムも右近さんを絶賛していましたね。

立ち役より女方の方が目立つし、美しいし、

感激されるのだと思いました。


男女蔵さん粂寺弾正(くめでらだんじょう)『毛抜』は、お初の観劇であります。

今回、私は1階席だったので、役者の表情による演技を観ることはできましたが、

3階席からは表情が見えないでしょうね💦


男女蔵さんは、成田屋さんより表情が豊かに思えました。

しかし、驚くにしろ、怒るにしろ、よほど演技が大きくないと舞台が遠い観客席から見えません。

表情がよく見えないのが大劇場のデメリットです。


古代ギリシアの劇場は、10,000人以上が入ったのだとか。

パフォーマーは、かなり大げさな動きをしていたのではないかと研究されています。


逆に、60人以上の小劇場で動きや表情が大げさ過ぎてもパフォーマンスが浮いてしまいます。

難しいものです。


さて、『極付幡随長兵衛』は…、

いい!スゴくいいです笑い泣き

歌舞伎座を芝居小屋に見立てて、團十郎さん演じる長兵衛が客席から登場です。


團十郎さんの表情が吉右衛門さんに似ているな、と思いましたが、

お二人は親戚筋なのですよね。

似ているわけです。


菊之助さん演じる水野十郎左衛門は品のあるきれいな十郎左衛門でしたが、

いや、卑怯すぎる!!と思いました。


難癖をつけて丸腰の人間を風呂場で、しかも多勢に無勢で襲うという。

武士とは名ばかりのゴロツキです。


調べたところ、旗本奴(はたもとやっこ)はダメダメで、ゆすり、たかり、無銭飲食など、武士の権威をかざして、相当、町民を困らせていたようです。

武士としてのプライドだけは高いというショボーン


演目はじめの芝居見物も十郎左衛門は桟敷席に座っていましたが、座元を脅して桟敷席をせしめたのだと思います。


身分制度が厳しい江戸時代にあって、

町民の長兵衛が武士である十郎左衛門を倒すには、卑怯すぎるシチュエーションで殺される事実が必要なのでした。


十郎左衛門は後に長年の不良行為により切腹を命じられます。

長兵衛殺害も罪として数えられたのではないでしょうか。

町奴(まちやっこ)としての意気地を見せ、旗本奴のプライドもたててやり、

そして、世間に旗本奴の非道を知らしめた。

長兵衛、あっぱれでした。


女房役の児太郎さんも良かったです。

サバサバした諦観の中に、ふと見せる夫を止められない悲しさや悔しさ。

女はいつだって心で泣いています。


十郎左衛門の切腹で長兵衛はうかばれたでしょうか。