『暫(しばらく)』の主人公、鎌倉権五郎(かまくらごんごろう)の衣裳(いしょう)は独特で、インパクトがあります。
衣裳の総重量は、約60キロ!
平安貴族の十二単(じゅうにひとえ)が約16キロ。
花魁(おいらん)の衣裳が約30キロ。
まいまいは十二単を着ましたが、想像以上に衣裳からの圧迫でした
体幹と筋力がないと、十二単を着るだけで具合が悪くなります。
歩くのにも気合いと気迫が必要です。
権五郎の衣裳60キロを着用すると、どうなるのでしょうか。
しかも、「午前の部」の『景清』で、散々、立ち回りをした後の『暫』。
團十郎さんが規格外すぎます
長袴(ながばかま)で足元が見えませんが、権五郎は、高さ30センチの「継ぎ足」を履(は)いています。
バランスをどうとるのでしょうか。
しかも、凧(たこ)のような袖の「大素襖(おおすおう)」は動きづらそうです。
さらに、白と紫の布で編んだ「仁王襷(におうだすき)」も重いということです。
その上、2メートル超えの長刀をかついでます。
もはや異次元レベル…。
鎌倉市にある御霊神社(ご祭神は鎌倉権五郎)に力石が2つあります。
*力石とは、力試しに使う石のことです。
権五郎が着物の袂(たもと)に入れていたとか(筋トレ?)。
片方の力石の重量が16貫で、約60キロあります。
『暫』の衣裳を考えた方は、この重量に衣裳の重さを合わせたのかもしれませんね。
軽量化をしないわけです。
最後に、十二代目團十郎さんの衣裳説明です。
「暫の扮装は、足に履いている継ぎ足の重みで、全体の均衡を保っています。~ 中略 ~
衣裳は、専属の衣裳方と弟子が五人がかりで汗だくになって着せてくれます。
紐を締めるときは、私の体に足をかけて左右に一人ずつぶらさがるようにしてしっかりと締めます。
素襖の袖に入れる二本の張は交差させる加減が大変微妙で、角度や位置がわずかにずれると、花道で両袖を押さえていられないくらい辛くなります。」
十二代目 市川團十郎・著『新版 歌舞伎十八番』より
写真は博多座近くの櫛田(くしだ)神社展示中の飾り山笠です。
『暫』です✨