昔昔。。ノースアイランド王国にパドルという
1人の少年が住んで居ました。
パドルは国王に仕える重鎮ドラバスター伯爵の1人息子。
彼は王国きっての秀才で、文武両道。。まさに貴族の鏡でした。
しかしそんな恵まれたパドルにも。。多くの悩みがあったのです。
多くの良家の子女が通う、セントパトリック学園にパドルは通学して
いました。退屈で退廃的な学園生活に愛想を尽かす日々。。。
家柄や経済力や学力など。。学園に漂う差別意識や選民思想。。そして妬
貴族社会のあらゆる問題がこの学園に溢れていたのです。
最近パドルはよくそんな学園を抜け出して。。ドラバスター家が昔使っていた
古城で日が暮れるまで。。一人物思いにふけることが多くなりました。
昔姉とよくここで日暮れまで遊んだ事が昨日の事のように
想い出され、他国に嫁いだ姉の想い出に浸っていました。
ふと気が付くと。。パドルは窓辺でウトウトと眠ってしまいました。
辺りはすっかり日も落ちて、窓から見える湖の水面には
月の光がキラキラと輝きをまし、闇の中の古城を照らしています。
今夜の空気は間もなく、来るであろう厳しい冬を予感させる。。
冷たさを感じた。パドルは家路を急いだ。
古城を出て湖のそばを足速に歩きながら。。温かい場所を本能的に求め
彷徨い歩く。。パドルの住む屋敷は、伯爵家にふさわしい。。堂々とした佇まい
である。大きな邸宅を囲むように白樺の林が広がる。
やがてパドルは屋敷の裏門に辿り着いた。大きな薔薇のアーチを潜ると
中庭が広がる。中庭のテラスから部屋へと入った。
物音に気付いた、執事が慌てリビングに飛び混んできた。
「お帰りなさいませ」「あ。。」「このような遅い時間まで何処に?」
気の無い返事を交わし、パドルは自室へと向かう。
大きな屋敷には、人の声は無く閑散としている。父親のドラバスター伯爵は
宮廷の重鎮であり。。片時も宮廷を離れず、屋敷に戻る事は稀なのだ。
母親も夜毎行われるサロンや夜会に出かけ忙しい日々を送っている。
パドルは大きな屋敷に執事と数名の使用人と夜を過ごす事が日常だ。
最近なんと無く眠れない夜を過ごす事が多く、ボンヤリと先ほど湖畔で見た、月を仰ぎ見た。
今夜の月は絵に描いたような、満月。月の光だけで庭園が満たされ部屋の灯りを全て消しても。。辺りを見渡すことができる。
ドラバスター家の歴史は古く古代より続く名門貴族。。その昔この地に住む先住民族との戦いに一番の功績を納め、ノースアイランド王国建国の功労者として
ドラバスター伯爵家は栄えてきた。初代女王 ユリアナ1世より建国の立て役者として、その功績を讃えドラバスター家に贈られたのが「ユリアナの泉」だ
庭園の中央に有るこの泉に月光が射し込む。泉の中心には、鏡を抱えた
ノースアイランドの守護神「アクタス」像が設置されている。アクタスは神話で世界中のあまた多くの神々を従え、この地球を創造したとされる。
パドルはこの泉が好きでよく、泉のそばでアクタス像を眺めた。数百年の風雪に晒されたこの像は。。見るたびに表情を変えるとされる。また見る者の心を写すとされる鏡で、アクタスは人の心を読むと言い伝えられている。
パドルはフラフラと寒空の下、中庭の泉に側に近づいた。
何気なくアクタス像を眺めた瞬間、夜空に輝く月が一瞬揺れた様に感じた。
何だろう?一瞬の出来事であった。
月の光でアクタスの持つ鏡が輝きを放ったのだ。像は石質で光が反射するはずがないのに。。不思議な光を放ち泉に溢れる水面を照らした。
続く