念願の日本一を勝ち取ったU15高円宮杯。

いろいろと考えさせられることがありました。

ひとつは、この年代の劇的な成長スピードと、それを促進する指導者の果たす役割の重要性。

もうひとつは、トーナメントというものの意義です。

 

ほぼ完璧な形でトーナメントを勝ち上がったこのチームも、春頃は不安でいっぱいでした。

ただ、息子を見ていても、信頼する指導者からの期待、声掛け、ちょっとした意識づけでプレーが

大きく変化していく様子がうかがえました。

また、ゴール・ビジョンが明確になり、一歩一歩進みながら自信をつけていった時の成長スピードの

早さ!

選手が主役であることを肝に銘じ、選手を信じ、適切な期待をかけ、一方で教えすぎず、迷っている

時にだけ意識づけをそっと変えてあげる。

「コーチング」の基本中の基本ではありますが、基本が一番難しい!

いまだに、「自分が主役」の指導者が多いのも現実だと思います。

 

私の仕事でもありますが、もっともっと「コーチング」の本質を、ビジネスにもスポーツにも広げて

いく必要があると実感しました。

 

 

そしてもうひとつ。批判が多いトーナメントについて。

今回のU1高円宮杯も1週間で5試合、大阪から東京への移動も考えると、酷使、という言葉が

ぴったり当てはまってしまうくらいの過密日程でした。

 

ただ、やはり、育成年代の成長を爆発的に加速させるためには、ゴール・ビジョンが明確なトーナメント

という存在が必要不可欠ではないかと思うのです。

 

もちろん、リーグ戦は、多くの選手を出場させることができ、スキル・戦術面を高めていくという重要な

意義があります。

トーナメントは一部の選手、勝ち上がったチームにしか、成長のチャンスが訪れないというデメリットも

あります。

 

それでも、チーム全員が一丸となって、己を賭けて燃え尽きるまでに必死になって目指していく日本一

というゴール。

ここに、理論理屈だけではない成長の起爆剤があるのではないかと思うのです。

 

プロ契約をする選手が、J下部にひけを取らないくらいに高校サッカー出身が多いのは、選手権のあの

熱狂、明確なビジョン・ゴール設定がしやすい、という面もあるのではないかと感じました。

 

育成年代に最適な環境とは何か。

多角的な視点で考えていく必要があるのではないかと思います。

 

 

 

現実社会において、「良い人」が社会的に成功するとは限らない。

怒鳴り散らして、「部下を何人も潰した」と自慢しているような人が出世したり。

裏では他人の悪口・誹謗中傷ばかり言っている人が、狙いを定めた人の前では猫をかぶり、大金持ちと結婚したり。

仕事を人に押し付けておいて、その成果だけはしっかりと自分のものにする人が、上司から褒められたり。

 

声が大きい人、すぐに怒る人、不機嫌になる人、泣く人。。。

「自分が一番大変で、かわいそうなのだから、周りが悪い。だから、怒るのは仕方がない。周りが自分にあわせるべき」

そういう人の周りで、「他人を思いやる良い人」が苦しんでいる。

「断る勇気が持てない人」が苦しんでいる。

 

そして、そういう人たちが、ドラマのような勧善懲悪、最後にはハッピーになれるかというと、そうでもなかったりする。

自己啓発セミナー等で言われるような、「人を利用する人は必ず孤独になって辛い人生を送る。思いやりのある人たちは、その瞬間は辛いかもしれないけれど、きっと信頼できる仲間を手に入れて、本当の幸せを手に入れられるんだ!」

とも限らない。

 

将来の幸せより、現時点での辛さにつぶされてしまう人も少なくない。

 

じゃあ、怒鳴り散らして、ワガママに、人を傷つけても平気な人生をすすめるか。

 

これはやはり「No」だ。

 

怒鳴り散らして人を傷つけて、社会的な成功を収めた人が幸せとは限らないからだ。

無意識に「精神的な孤独」を感じ、より攻撃的・排他的になって、また、孤独に陥っていく。

 

「良い人」「思いやりのある人」がいまの瞬間、潰されない社会。幸せを感じられる組織を創っていきたい。

 

心から、そう、思います。

 

とは言いませんが。

ワールドカップが始まる前、日本のグループステージ突破を予想した人がどれだけいたのでしょうか。

日本国内からこれだけ多くの批判があることに、正直、驚きました。

運命のポーランド戦。
このタイミングでトーナメントをにらみ、6人のメンバーを替えて臨む。
すごい決断だったと思います。

そして、後半の失点後、コロンビアセネガル戦の状況を知っての決断。
一歩間違えば、とんでもない批判にさらされるのをよくわかった上での決断。
とても勇気のいる決断だったと思います。

少なくとも、私にはできません。

結果として、主力を休ませ、グループステージ突破を決めた。
現段階で、これ以上の成果はあるのでしょうか?

今の日本の戦い方は前線からのハイプレスが生命線。
32度の暑さの中、ポーランド戦もフルメンバーで全力で勝ちにいったら、7月2日に控えるトーナメント初戦に大きな影響があったでしょう。


私は、「素人は批判するな」とか「下手なやつは口を出すな」という考え方には、真っ向から反対です。
プレーができなくても理論は正しい、ということはいっぱいあるからです。

ただ、批判をするときには、必ず相手の考えや想いを尊重して欲しいと思うのです。

「西野監督、すごいプレッシャーだったろうな。あの決断、めっちゃ勇気がいっただろうな。トーナメントを見据えて考えに考えたんだろうな。『でも、俺個人としては、果敢に攻めて欲しかったなあ!』」

こういう意見なら、「建設的」な話ができるのです。

個人的な話ですが、普段は日本のことを想い、辛口ながらも建設的な意見を発してくれていたセルジオ越後さんのワールドカップ期間中のコメントは残念でなりません。

ラッキー?
相手が本調子でなかった?

それもワールドカップなはずです。
日本だって決して順調ではなかったはずです。

おそらく、日本の将来を想っての発言なのだと信じておりますが、配信されている記事の内容だけを見ると残念でなりません。


ワールドカップはすでに始まっているのです。

強敵ベルギーに対して、日本代表がどのような戦いを挑むのか。
怪物ルカクをどうやって止めるのか。

私たち日本人の代表です。

まっすぐ応援しましょう!