夢枕獏:著
「シナン」
上・下巻を読みました


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上・下巻の上に、分厚い(文庫版で上・下合わせて773ページ)、、、一体これを読み終えるのにどのくらい時間がかかるのか、、、と、思っていましたが。通勤時間5日分程で読めました

とにかく読みやすかったー


夢枕獏さんの本は、このシナンで、初めて読みました
(この人の他の著書は、陰陽師関連が多く、正直私の苦手とする分野だったので手を出さなかったのです


表紙の通り、この本は、イスラム教の礼拝堂であるモスクについてと、16世紀にモスク建築で活躍した建築家ミマール=シナンについて、書かれた本です。

ミマール=シナンは、1488年頃(?)~1588年の約100年生きたトルコ(当時のオスマン帝国)の建築家です。
キリスト教徒として生まれたのですが、のちにイスラム教に改宗してオスマン帝国のイェニチェリ(常備歩兵軍)に入ります。
そこから始まる長い長いお話です



歴史小説でもあるので全てが事実というわけではないのでしょうが、当時のオスマントルコ帝国の歴史や、背景についても書かれ、シナンという1人の人物が生きた「時代」が描かれています。

シナンについてもっと深く掘り下げた物(どの様な生活をし、どの様に考え、どの様に建築家として暮らしたのかなど)を求めている方には物足りないかもしれません。



何度も出てくるのは、聖ソフィア(元はキリスト教の大聖堂として建築され、1453年からはオスマン帝国初のモスクとなった)に関するシナンの気持ちと、神の捉え方。

聖ソフィアの偉大さ。
聖ソフィアを越えられない何か。
聖ソフィアと神の関係。
聖ソフィアとサン・ピエトロ大聖堂との違い。

ここが重要な物語の核なのだと思います。


また、本書には詩人が出てきて、所々詩が詠まれるのですが、これまた描写がわかりやすく、その時々の心情が見えるようでした


あとがきの夢枕獏さん本人曰く、あしかけ8年かかった大作なのです。。。


シナンについて、イスラム教について、オスマン帝国について、本当によく調べてあって、何も知らなかった私が、その当時のことを思い浮かべられるほどに丁寧に書かれた読みやすい本でした著者自身も、何もわからないところから始めたからこそ、そのように表現できたのではないかと思うのです

私は、歴史の授業が嫌いだったので、このような形でオスマン帝国について知ることができて、良い時間を過ごせました
大事がない限りこの先海外へ行くこともないので、こういう本を読むとその地へ行った気になれます
ネットなどでモスクの画像を見つつ読むと更に読みやすいですね