🍎目線。
『すみません、遅れました!』
(おつかれ!岡田の希望とかはもう話してて、ほとんど許可して貰ってるから、あとは岡田が思い浮かべてることを詳しく説明して。明日のスケジュール調整で少し席を外すから。村山さん、お願いします。)
「はい、わかりました。」
『すみません、遅れてしまって、、えっと、どこまで進んでますか?』
「ほとんど聞いてます。岡田さんの要望に全力で添いたいと思っていますので、具体的な演出など詳しく聞いてもいいですか?」
『はい』
こういったコンサートは本人の意思をマネージャーさんを通して聞くのがほとんど。
だから、アーティスト専属で打ち合わせなどをすると言っても
基本は岡田さんとではなく、岡田さんのマネージャーさんと、になる。
でも、岡田さんはこのステージへの思いが強いのか
普段からそうなのか分からないけど
他のスケジュールもありながら、合間の時間で今日みたいに打ち合わせに来てくれる。
岡田さんのマネージャーさんが席を外してるあいだ、
具体的な演出をいろいろと聞くが、その真っ直ぐ姿勢や
このステージ、演出へのこだわりの熱さに驚くばかり。
今までたくさんのアーティストさんのステージやイベントのサポートをしたことがあったけど
こんなにも熱い思いで語られたことは未だかつて無い気がする。
そして、その姿勢がとにかくかっこよく輝いているのだ。
『と、こんな感じなんですが、、どうでしょうか?』
「あ、はい、いいと思います。照明や舞台セットなど担当と確認してまた岡田さんに伝えさせていただきますね。」
『ありがとうございます!』
「はい」
『、、、、、』
「、、、、、」
だいたいのイベントのイメージはついた。
が、あとは実際に舞台セットや照明の係の人に相談は無い限り
これ以上先には進めない。
こういった打ち合わせもかなりの数、経験したから、
こういう場面での対応はかなり上手くなったはずだけど、、
岡田さんを前にするとどうも上手くいかないし、いつもみたいに適当な世間話をして良いのかも分からない。
「あ、えっと、、今日はここまで打ち合わせが出来てればいいんですけど、岡田さんはマネージャーさん待たれますよね?」
『そう、ですね?今日はこれで終わりですし、』
「あ、じゃあ、ゆっくりしてください。私は別の仕事に行かないと、、」
絶対に先方を残して部屋から出るなんてありえないことだし
そんなことは分かっているけど、やっぱり2人という空間が難しい。
『向井地さんじゃなかったんですね?笑』
「えっ?」
部屋を出ていこうとしたとき、突然、岡田さんから話しかけられた。
『向井地さん、けっこう長く私のこと応援してくれてて、だから向井地さんが担当してくださるのかと』
「あ、、向井地は今回の企画の総担当ですので。岡田さんを専属で持たせていただくのは私になります、、すみません、向井地じゃなくて」
まるで、おんちゃんのほうが良かったと言うように言われるから
そんなのこっちだといい気はしなくて、可愛くもない言い方で返してしまう。
そもそも、こんなこと、失礼にあたるわけで、絶対にしてはいけないこと。
もしかしたら、私はこの人にクビにされるかもしれないな。
『全然?むしろ村山さんでよかったよ、可愛いし。それに、向井地さんだったらやりづらいからな〜あんな王子様がいるんじゃ?ニヤニヤ』
「えっ?」
『先日の打ち合わせのときに、なんとなく感じただけなんですけど、もう1人の担当の茂木さんって向井地さんのこと好きですよね?両思いってかんじ?』
「そ、そうです、けど、、なんで。」
『ふふっ、見てたら分かります。村山さんも』
「えっ///わ、わたしは、べつに、、///」
『そうやって赤くなるところ可愛いですね?
村山さんって面白いです笑 これからよろしくお願いしますねニコッ』
たった数十分、話しただけなのに、相手のことをしっかり捉えてて
そのうえ、こんな風に真っ直ぐな優しい笑みで言われたら
そりゃ、ファンもたくさんいるんだろうな。
てか、この人、スラッと「かわいい」とかそういう言葉言ってるあたり
女の子扱いが慣れてんだろうな。まぁ岡田さんも女性だけど。
『あー、マネージャー遅いな。んー、、、よし!帰っちゃおっか?村山さん、付き合ってよ』
「えっ?」
『さっきの"別の仕事"って嘘でしょ?
マネージャーには連絡しとくから一緒に帰りましょう。親睦も含めてご飯でもどうですか?』
「いや、私は、、、」
『じゃあ強制で、村山さんのこと誘拐しますね?ニコッ』
言ってることはめちゃくちゃなのに、何故か優しく感じて
私の頭も心も岡田さんでいっぱいで
差し出された手を私から解くことなんて出来るわけがなくて
岡田さんとプライベートの時間を過ごすこととなった。