🍎目線。
あれから、なぁちゃんは少し離れたところの大きな病院に移動した。
距離があるため会いに行っても長い時間は一緒に居られないのが寂しい。
それなりに貯金もしてたから、仕事辞めてなぁちゃんが移動になった病院の近くに引っ越そうかとも思ったけど
保育士として子どもを預かっている以上、途中で子どもたちを放棄することはできなかった。
それに今暮らしているお家にはなぁちゃんとの思い出が詰まりすぎてて引っ越すことができなかった。
せめてもの救いは、おんちゃんも同じ病院に移動になったこと。
茂木はもともとの病院に残ってるから2人もなかなか会えなくなっちゃったみたいで申し訳ない。
コンコン
「なぁちゃん、来たよ!体調はどーう?」
『全然大丈夫です!元気です!ゆうちゃん来てくれてありがとう!!』
「元気ならよかった!今日は時間あったからねー笑」
時間あったから、は嘘。
何かと理由を作って少しの時間でも毎日来ている。
病院を移動することになったとき、なぁちゃんから出来るときだけでいいから会いに来て欲しいと言われた。
たぶん、私と茂木でご飯を買いに行ったときにおんちゃんと話したのはこの事だろう。
今まで病気のことに関しては甘えてくれなかったなぁちゃんからのお願いがすごく嬉しかった。
正直、仕事帰りに毎日来るのは大変な部分もあるけどなぁちゃんの顔を見れれば疲れも飛んでく。
それに、なぁちゃんは元気です!って言うけど毎日来てるから嫌でも気づいちゃうんだ。
ほんの少しずつ、でも確実に、細くなっていて無理に笑ってることに。
『ゆうちゃん、凄く嬉しいけど毎日は大変でしょ?いいよ、時間あるときだけで。私が最初にお願いしちゃったから、、、』
「大変じゃないよ?私がなぁちゃんに会いたくてそうしてるの。だめ?」
『ダメじゃないけど、お仕事あるのにゆうちゃんが疲れちゃう。』
「ゆうは、なぁちゃんに会えるだけで元気になれるしお仕事頑張ろって思えるの。だから会いたい」
『、、うん、、私も、ゆうちゃんに毎日会いたい』
「ふふっならいいじゃん」
『ありがとう』
私のことばかり心配してくれる優しいなぁちゃんだけど
なぁちゃんの存在が私にとってどれだけ大きいかは分かってない。
「ねぇ、なぁちゃん、、」
『ん、なーに?』
「元気になったらさ、いろいろしたいことあるんだ」
『したいこと?』
「うん、、あの、ね、結婚しようよ」
『え?』
「私、もうなぁちゃん以外の人なんて要らないから。パートナーシップ結ぼ?」
『ゆうちゃん、、グスッ、、、でも、私、、』
「言わないで、大丈夫だから。絶対元気になる。だから、ね?」
『うん、、私もゆうちゃんがいい。ゆうちゃんしか要らない。だから早く元気になってゆうちゃんと結婚する!』
「うん、頑張ろうね?」
『うん』
病は気からって言うからなぁちゃんの心が沈まないように
元気になったらの楽しいことたくさん話そうと思ったのに
気づいたら私の口から「結婚」というワードが出ていて自分でも驚く。
驚くけど全部の思いをこの言葉に乗せよう。
なぁちゃん、お願いだから元気になってね。
また2人で一緒に暮らしたい。
『ゆうちゃん、今日はたくさんありがとう』
「ううん、私も会えて嬉しかったから。また明日ね?」
『うん、また明日』
「なぁちゃん、、、」
『ん、』
チュッ
『//////』
「また来るね?」
『ありがとう』
たくさんお話して、そのあいだずーっと手を握り合って
でも帰り際に、こうやって過ごせるのももしかしてら限られた時間しかないんじゃないかって
急に不安になって気づいたら私からチューしてた。
なぁちゃんのことになると自分でもびっくりする行動ばかりだ。
なぁちゃんが元気がないのはちょっと前から気づいてたけど、
今日もなぁちゃんの口からは何も言ってくれなかった。
おんちゃん、いるかな、、
「あの、すみません。向井地先生おられますか?」
受付(少々お待ちください)
〈あれ、ゆうちゃん?〉
「あ、おんちゃん!」
受付(あ、おられましたね)
「ありがとうございます!」
〈ゆうちゃん今日も来てたんだね。大丈夫?無理してない?〉
「大丈夫。私が会いたくて来てるから。」
〈そっか、ならいいんだけど。〉
「あの、さ、、今のなぁちゃんって、どのくらいやばいの?」
〈え?〉
「なぁちゃんからは何も言ってくれないけど、毎日見てたら分かるよ。」
〈うん、そうだね、、話すよ〉
「うん、ありがとう」
〈私、これで今日終わりだから1階のロビーで待っててくれる?〉
「うん」