侍医というサディスティックな彼氏 ⑥ | 明鏡 ーもうひとつの信義ー

明鏡 ーもうひとつの信義ー

韓国ドラマ『信義ーシンイー』二次小説



私とあの人が出会って四年が経っていた
あの人は相変わらずチェさんの家の住んでいる
家主は、兵役に行ってしまい不在だって言うのに

「お元気ですか?」

週末になったらその家主から私の携帯に連絡がくる
「ええ」
「貴女ではなく、あの方です」
「だから、ええと言っているわ」
一度辞めた病院を院長と言う名目ではなく
只の医師として戻れだなんてそんな事ができると思う?

「あと1ヶ月で出れます」
「ご苦労さま」
「労いありがとうございます」

ヤ!労ってなんかないわよ
私は嫌味を言っているのよ

「侍医はどうしてますか」
「貴方の家でちゃんと貴方の代わりをしているわよ」
「随分と棘のある言い方ですね」
「あら分かったかしら、どうして私も進展できないのよ」
「其れは・・・あっともう次の方に電話を譲らねばなりません」
「ちょっと、自分の聞きたいことだけ言って」
「あ・・・電話を奪われました・・・では」

絶対嘘だわ
この間はあと10分くらいウンスの事を聞いていたもの
よくこんな人が将軍をしていたものよ

「オンニ、ユンジョン先輩」
「あら、どうしたの」
「おもー又カレシです?大切にされてるぅ」

はぁ・・・どうしても貴女を一人にできないとナムジャがいて
「二年一緒に住んでください」
なんて言ってこのマンションを買ったとは告白できないわ

「本当にありがとうございます」
「どうしたの」
「だって、家賃も要らない、光熱費も出す、食費だって」
「いいのよ、だって一人は寂しいじゃない」
「でも、彼氏さんに申し訳なくて」

そうよ、この件が無かったらチャンと一緒に住んでいたかもしれない
いいえ、きっと住んでいたわ

「そうでしょうか、テソンさんの料理はこの国一ですよ」
「や!チャン・ビン」
「駄目ですよ、私の名前はイ・フィリップ、アメリカ人の医者です」

胸から身分証を出して私の目の前にだした
よくこんな偽造身分証を作れたわ

「よく・・・」
「これは、正規のルートで私の手元にあります」
「どうやって」
「そうですね、色々駆使したと言っていましたよ」

あの男できない事はないのかしら
一度職務質問された事があったけど、ID番号も問題なかった
医師免許もちゃんとアメリカで取得していることになっている
末恐ろしい、きっと近い未来あの男にこの国は牛耳られる日がくる

「いいのよ、あの人はこの先ずっと一緒に暮らすんだから」
「おもードキドキするような告白」
「其れに実家暮らしだから(嘘は言ってない実家みたいだもの)」
「一度会わせてくださいよ」

あの人を会わせる
出来ないわ、今じゃないのよウンスやー

「いつかね、凄く恥ずかしがり屋だから」
「絶対ですよ」

ウンスはそう言うとコーヒーを淹れにキッチンへと向かった
Xデーがいつのなのかは、全く分からない
でもチェさん言うとおりならまだあと八年もある

「太陽フレアがどうのと言っていた気がします」
「俺の記憶だと・・・医療機関の学会とイベントがコエックスでありました」

コエックスで医療関係のイベントなんて毎年あるわ
恒例行事みたいなものよ

「他には?」
「特に・・・そうです、青い鞄をその時に買ったと」

青い鞄ね・・・あの子そんなの持ってない
私は私の為にウンスを毎日観察しているのよ
チェさんの為じゃないわ

「オンニ」
「何」
「次の学会で私プレゼンテーションをするんです」
「え」
「なので着て行く洋服を一緒に選んでください」

どうしたのかしら、不思議な胸騒ぎがする
太陽フレアっていつだったかしら
手にしていたスマホでウンスに気づかれないように検索をした

ー今世紀最大の太陽フレアが発生、各地で異常気象現象が多発ー

ちょっと今年じゃないの、今世紀最大だもの
でも早いわ
まさかあの男、無理やり引き寄せているんじゃないわよね
やるわ
だってもう一度人生をやり直そうと蘇ったのだもの

「かっ、鞄も新調した方がいいわ」

こうなったら一刻も早く行ってもらおうじゃない
白いビキニどころじゃないわ
今日連絡があったと言う事は、後七日チェさんから電話がない

「次の学会っていつだったかしら」
「2ヶ月後です、昨日話があったじゃないですか」
「あらーすっかり忘れていたわ」

面会、面会に行こう
明日、今日、今日よ




「オンニ、コーヒーは?」
「夜飲むわ」

私はパジャマを慌てて脱ぎ捨てブラウスを掴んだ
呑気にしている場合じゃないわ
ベッドの上に置かれたジーンズを両手で掴み両足を突っ込んだ
体がグラっと揺れて後ろに倒れてしまった

ウンスを送りだすのは出来ても、どうやって帰ってくるの
帰ってくるのよね
ベッドに仰向けのまま見上げた窓の外は青く晴れわたっている
あの日のホテルのプールと同じ色をしていた