光の向こうへ ② | 明鏡 ーもうひとつの信義ー

明鏡 ーもうひとつの信義ー

韓国ドラマ『信義ーシンイー』二次小説



カン・トルベ

「順番が御座います」
「お前も先に行くのか」
「貴方様より俺の方が年下はありえぬでしょう」
「トルベ」
「それに大して待たせません、ほんの少しだけです」

光は今度はトルベを飲み込んだ
取り残されたとは思っちゃいない
「隊長」
「お前からそのように呼ばれるのは久しぶりだ」
「長らく将軍とお呼びしていました」
「トクマン」
「大丈夫です、私が最後で・・・否、もう一人おります」
「誰が残っていると言うのだ」

俺は周りを見渡したが俺とトクマン以外にはいない
冥府の闇は俺達の遥か後方にあった

「隊長この場にいるのは、前世の記憶を持って行く者のみです」
「トクマン」
「私はもう一度、いえ何度でも隊長のお側に」

この世の一年はあの世の瞬きのような時間です
もう暫し・・・私と隊長で過ごさせてください

お前の笑顔が消えたあの日を思い出した
泣き叫びながらファランを抱いていた
俺もあの方もどうする事も出来ずに





俺は、カン・トルベ
見た目は、決して知的な紳士には見えない
中身は?と問われたら
こう見えて代々警官一家の血すじ
警察大学校を出た時、俺に父はこういった

お前の胸にある紋章は天秤を首に掛けた大鷲が
赤青の陰陽を中央に木槿の花の上に止まった紋様になっている
この意味を一生をかけて解き明かしなさい

公平に高みを極め、落ちても落ちても生き抜き悪を捉えよ

そう思ってよいかと二度目の生で答えたかった
しかし俺の使命は他にあるのです

「父さん、分かるように勤めます」

今俺がしなければならぬのは、この国を知ると言うこと
そしてあの方を探す事だ
記憶は産まれ落ちた瞬間からあった訳ではない
ただ夢の中で靄のかかった月のように薄ぼんやりと見えてきた
初めの頃は、剣を持つ自分が怖く夜中に泣くと
「あら怖い夢を見たのね」
母が俺を抱き上げ膝に座らせた
「怖くはないわ、夢だもの。すぐに忘れるわ」
次の日に見た夢は、昨夜よりも鮮明になる
その繰り返しをしつつ全ての記憶が戻っていく

「母さん、俺はあの方を探さないと」
「また夢をみたの?随分縁のある人なのね」
「信じてもらえますか」

母は微笑んで頷いた
俺は随分と家族に恵まれた時代に生きてる
そして俺は又アイツと出会った
「パク・ジウン。今日から先輩の部下になります」
真新しい制服に身を包み緊張した顔で俺に敬礼をする
じいさんと娘の恋じゃない

「先輩」

お前が俺を呼ぶたびに俺は大袈裟に振り返った
道化のふりが抜けないのはどうしてか

「どうして私を置いていくのです、先輩」
「先輩、昼ご一緒しても」
「先輩、今度奢りですよ」

お前が呼ぶたびに俺は両手を広げ抱きしめたくなる
ただでさえも短い二人の時を補うように過ごしたあの日々
今度はお前が責っ付いてくる

「先輩、経験豊富なのでお聞きします」
「ああソウルのカサノバに何でも聞け」
「先輩の好みの女性に、私なれますか?」

お前が好みの女じゃなかったら,誰が俺の女になるっていうんだ
ジウン