男は度胸があった。それに夢もあった。最初は俳優をめざしたが、途中から経営にめざめて、芸能プロダクションを設立して、いまでは確固とした会社にまで育てあげている。
前向きな男の例外にもれず、彼も精力絶倫だったが、さすがに結婚して5年にもなると、倦怠期に見舞われていた。
「社長、たまには奥さんと楽しんでくださいよ」そういって、友人がポルノビデオを貸してくれたのだ。
「たまにはビデオでも観るか。あいつが貸してくれたんだから、悪いものじゃないだろう」
男は友人が貸してくれたポルノビデオを観て気分転換を図ろうとした。妻も同じ気持であったと見えて二つ返事で誘いにのってきた。
ビデオの放映がはじまった。男は妻の肩へ手をあてがった。妻も期待に胸を膨らませているようである。
しばらくすると、男の目が変った。「あの野郎!」男はとつぜん叫んだ。
女の顔色も変わった。
「この男はあなたじゃありませんか」
女は男に詰め寄った。ビデオの男役はたしかに男だった。
「わたしはあんたと結婚するじゃなかったわよ」女は吐き捨てるようにいった。
男は度胸を決めていた。
「たしかにオレだよ。それにしてもあいつは許せない奴だ」
「誰ですか、その許せない奴というのは‥‥」
「澤田の奴だよ」
女の顔色がまた変わった。
その澤田という男は女の昔の彼氏だったばかりか、同じ業界で男とライバル関係にあったのだ。
「オレは生きるためならどんなことでやったんだよ」
「そうよ、あなたのほうがずっと男らしいわよ」女はそういって、自分の方から男の唇をふさいだ。男もそれに応じた。
