星組『マノン』(2021)① | ラピュタをさがして

ラピュタをさがして

宝塚のこと。
気ままに。
自由に。

配信も終わり、
今日はバウホールの『マノン』千秋楽ですね
おめでとうございますクラッカー
KAAT神奈川芸術劇場も楽しみですね
無事に大千秋楽まで駆け抜けられますように


少し前ですが
観劇してまいりましたニコニコ


バウホールはほんとうに舞台が近く
近いだけではなくて
演者の顔の表情もわかるし、
舞台全体も観ることができるし、
良いなと思います音譜


今回も
愛月さんのスペイン風衣装のカッコ良さ
有沙さんの可憐な雰囲気と
凝った美しい髪型や髪飾りに釘付けドキドキ

最後のふたりの白い衣装も美しかったですラブラブ

ふたり以外の方々も
上手前方に来られると
等身大で観られる迫力がすごくて
よく見えるっていいなーと思い
皆さんのお芝居や歌やダンス
動きを堪能しましたウインク
(上手のお席だったので)



さて、
作品の感想を少し。
ネタバレはもう大丈夫かと思いますが
結構辛口です
古い文学作品は難しいですね



主題は普遍だけど
時代が古いから設定も古くわかりにくい
わかりにくいと共感が得難い
共感が得られないと
表面的な矛盾ばかり目につく

でも、わかりやすい現代の設定で
普遍的なことを描くのも難しいし
自然に愛が成就する
普通の、ハッピーな、まともな設定では
『愛』の本質は描きにくい
環境やふたりの設定が
ふたりの愛や結びつきを否定するから
愛の美しさが抽出される
とは思います…が…

ラストになんとか
これが描きたいんだよねっていう
余計なものをすべてを取り去った
愛というものを感じたけれど…


愛月さんと有沙さんのデュエットが
何回かあったのですが
ふたりの声のハーモニーが良くて
素敵な歌声を聴くといつも思うけれど
歌声によって作品に誘われるなぁ
と感じました

もともと素敵な歌声なのだけど
特に有沙さんの
安定感があって
表現力ある歌声が素敵でした音譜

愛月さんの低く響く歌声とも
しっくり合って
ロドリゴとマノンが
惹かれあっているということを
デュエットを聴いていくにつれて
確信することができました照れ


そして、マノンの人物表現おねがい
有沙さんの演技はいつも
とても良いなと思うのですが、
マノンの難しさを
難なくやってのけていて
より素敵だなと思い
観劇後にじわじわと感心

ロドリゴを愛している一方で、
作品世界の貴族の女性はもちろん、
観劇している現代の一般的な女性からも
理解しがたい
奔放で道徳や貞操観念が欠如しているマノン

でもそれがマノンの普通だから
何が悪いかもわからない
その上
そんな驚く非常識の中で生きていくのに
ぴったりな美しい容姿を持つマノン

観客にただ非常識で嫌な女と
受け取られてしまいがちなマノンを
それが彼女の生まれながらの質で
その異常さを上回る
天真爛漫さと美貌を持っているのだと
一幕中盤あたりから納得させられました


この作品は
初演は視聴したことはあるのですが
だいぶ前なので
筋はわかるけど細かいところは覚えてなくて
(またしばらくしたら見たいな…)

そんな状態なので
初演の時から同じなのか分からないけれど…

一幕の始まりから
ロドリゴがマノンと共にマドリードまで
行ってしまうところまでが
特に良くなかったです
それが物語の導入部分なのが残念です

良くないというか…
二人が運命的に出会って
真面目な青年だったロドリゴが
奈落に流されていく
物語の根幹がね…
劇的な必然性が感じられなくて
(ちょっとぎこちないのかな)
そのせいで感情移入できないんです
だから
冷静なまま観劇することになって
ロドリゴの行動や感情に
矛盾を感じてしまう

そうなると、
すごくロドリゴが頭が悪い人物に見えて、
マノンのロドリゴへの気持ちが
他の男性たちへの気持ちと
全然違うということが感じられなくて
疑問を感じつつの観劇になるんです
ふたり以外の
親やミゲルの視点で
観劇してるとも言えますが…
作品的にはそれではダメなんじゃないかな

まぁ…
『ロドリゴ、お金がないの』
『どうやって、暮らしていくの…!!』
『カジノで稼ぐ』
というセリフに納得するのは
なかなか難しいですがニヤリ
ロドリゴは貴族なので
現代人のように
お金がない=働く
ということはできないのです…
(貴族は現代人のいうところの
働くことはしたことがないし、
しないし、思いつく余地はない)
マノンも貴族ではなさそうですが
女性が働く階級ではないんでしょうね。

私はマノンとロドリゴの
最初のデュエット曲のあたりから
だんだんふたりの情熱に共感しました
デュエットのたびに納得が増し
台詞の端々にも
マノンやロドリゴのひたむきさを感じ
最期のシーンに
『マノン』のテーマであるだろう
“純粋な愛”
その存在の美しさ
と同時に
むつかしさや愚かさに
空しさや悲しさを感じて
涙が出ました


ただ、出来という点では
まだ足りない…なぁ。
一般とは異質なものを描きながら
純粋な概念、テーマを表現するには
ふたりの感覚に観客を
引っ張り込まなくてはいけないと思う
マドリードまでお芝居中心だったと
記憶していますが
単純に芝居がまだまだダメとも言えるし
演出がイマイチとも。
(大先生に失礼ですが)


出会いのシーンや
愛が生まれたシーンは
ダンスあるいは歌声(デュエット)で
表現した方が良かったのでは…
少なくとも今回の観劇では
芝居、セリフだけでは足りなかった

途中から歌声で
引き込まれていったので
よりそう思ってしまいます


いろいろ書きましたが
難しい世界観
本質的なものが浮かび上がるように
まだまだ深化するに違いないし
深化するといいな
観劇からしばらく経っているので
深化していそうですね



ミュージカル・ロマン『マノン』 
原作/アベ・プレヴォー 
脚本・演出/中村 暁