絵本 〜テーマ「米づくり(稲作)」〜 | 水脈のブログ

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読みきかせ記録(絵本等の紹介)と、自分の心に生じた想いや、刻まれた記憶を思いつくままに綴っています。
当ブログ開設当初から好きだった東方神起やジェジュン、ユンジェに関して。そして、2021年以降は、防弾少年団(バンタン:BTS)のことに、思いを馳せることも。

22日は秋分の日。

朝からの雨で、

予定されていた当地区の運動会が

中止となりました。

(私も「玉入れ」に出場予定でした。)

適度な雨のおかげで、

ようやく涼しくなったのはうれしい。

けれど、

能登半島では、豪雨による

河川の氾濫や土砂崩れ、道路の寸断、

あまりの惨状に言葉もありません。

今年1月の地震による被害からの復興も

まだまだ途上だったというのに、

再びの大きな災害…

被災地の皆様のご無事を祈るばかりです。



ところで、

前回、

5年生のクラスでの「お話タイム」時の

選書に悩んだことに触れました。

9月の読みきかせだったので、

「月」をテーマにした本も検討しましたし、

もう一つ考えたテーマが

「お米づくり」

私自身の子ども時代から、

現在に至るまで、

「小学校5年生」は…

と言えば、

「お米づくり」を学んだ学年なのです。


周辺の水田の稲穂も実り始め、

早い所では、稲刈りが行われ、

店頭には、新米が並ぶ時期でもあり、

しかも、今年は、米不足のため、

なにかと注目されているお米。

というわけで、

「お米づくり」の絵本を読んでみたい🌾

と、思ったのですが…🧐

「10分間」という定められた時間内に

読み終えられて、

絵(写真)が遠目でも見えやすい

という条件に当てはまる絵本が

なかなかなくて、今回見送った次第です。


「読みきかせ」にはどうかな?🤔

と悩みますが、

「お米づくり」というテーマで

読んでほしいなぁと思う絵本はあります。


私が最初に思いついた絵本は、

これ👇


『稲と日本人』

甲斐信枝さく 佐藤洋一郎 監修

(福音館書店)


監修をされた農学博士の佐藤洋一郎氏が

あとがきに

本書の絵には、ちからがあります。

それはみるものの目を釘付けにし、

こころをつかんで離さないちからです。

と記されているとおり、

甲斐信枝さんの絵が、

とても素敵なのです。

ただし、

文章量が多く、読みきかせには向きません。

一人じっくり読んでほしい絵本です。


稲とわたしたち日本人は、

動物と植物というかけはなれた間柄ではなく

生死をともにして生きぬいてきた、

かけがえのない

仲間同士という間柄なのです。


稲に対する著者の思いがこの言葉に

集約されていると思います。


田舎に住んでいるので、

水田風景は日常で、

主食として、

あたりまえのように

「ご飯🍚」を食べていますが、

南北に細長い地形で

国土全体の三分の二が山であり、

台風や地震という災害が多い日本列島で、

本来寒さが大敵の「稲🌾」を

安定的に収穫できる作物とするまでには

長い長い歴史があり、

苦難の連続だったということを

私はこの絵本で改めて考えさせられました。


大自然のひきおこす災害で

このたび、能登半島は

甚大な被害を被りました。

古来より自然災害の多い日本では、

異常な気象によって農作物のすべてがとれず

食べものがなくなって

人々が飢えに苦しんだり飢え死にしたりする

「飢饉」の記録もたくさん残されています。


中でも、

江戸時代の「天明の大飢饉」は、

寒冷な異常気象がきっかけで、

1782年〜1787年まで6年間もの長い間

日本を襲った大飢饉で、

本書では詳しく書かれています。

そして、

寒冷な気候に苛まれた東日本の飢饉に対し、

西日本では、

真夏の日照り続きによる水枯れや、

長雨と蒸し暑さによる害虫の発生に

度々悩まされていたとのこと。

「享保の大飢饉」(1732年)は、

稲の害虫「ウンカ」の大発生が原因

と言われています。


寒さに強い稲を作ろうと

品種改良に取り組んだ人々もいましたが、

100年あまり前、

個人ではなく、ようやく国の力で、

稲の品種改良を始めることとなりました。

日本政府の調査では、

当時稲の品種は、国内に、

4,000種類もあったのだそうです。

日本中のお百姓さんが、

先祖代々、自分の土地柄に合う稲を作り出そうと

努力を重ねた続けた結果生まれた

「在来種」と言われる稲たちです。


戦後、

稲作りには、

農薬や化学肥料、機械が導入され、

人間にとって不都合な、

収穫量が少ない稲や、おいしくない稲、

育てるのに手間がかかる稲は、

どんどん捨てられていき、

現在、およそ※十種類くらいしかないとのこと。


野生の力を持っていた在来種に比べ、

収穫量やおいしさのみが優先され、

科学頼みで作られている稲が、

はたしてこれからも

生き抜くことができるのか、

著者は疑問を投げかけています。


高齢化や過疎化により、

農業の衰退が叫ばれて久しく、

野生動物の被害もよく耳にします。

地球温暖化問題も待ったなしの今日このごろ。

従来の寒さに強い稲だけでなく、

暑さに強い稲も求められているでしょうし、

食糧の自給率が低い日本にあっては、

「飢饉」は

決して「過去」のことではないと思います。


※この絵本の初版発行は2015年ですが、

2023年度に品種登録された稲は、

1,002品種で、内、うるち米は440品種、

ご飯用として作られたものは

290品種あるとのこと

 👇




次に私の中で候補にあがったのは、

こちら👇


『おこめが できた!』

「しぜんにタッチ」シリーズ

(ひさかたチャイルド)


『おこめができた!』は、

ひさかたチャイルドの

「科学絵本シリーズ」の中の

1冊です。

水田でお米ができるまでを

静岡県南伊豆町の農家に取材した

状況をもとに

できあがった写真絵本となっています。


「育苗」、「代掻き(しろかき)」、

「田植え」等々、

お米づくりのたくさんの行程が

写真でわかりやすく紹介されています。


見開き折り込みページも使って、

一面に稲穂が実る広々とした水田が

目に飛び込んでくるページなどは

インパクトがありますが、

「米」は、

「八十八」の行程があると言われるように、

掲載されている写真も多く、

見開きに7、8枚の写真があると、

写真の解説も含め、

大勢の集団で見るより、

手元、または少人数でじっくり見てほしいな

という気持ちになります。


そして、もう1冊、私が個人的に好きな絵本。

 👇

『ごたっ子の 田んぼ』

西村 豊 (アリス館)


『干し柿』の著書でも知られる
西村 豊さん
写真が本当に、美しいのです。

『ごだっ子の田んぼ』は、
長野県諏訪地方、
八ヶ岳のふもとの小学校の5年生が
学校そばの田んぼで「もち米」を作る
その1年間を見守った写真絵本となっています。
タイトルになっている「ごだっ子」とは、
長野県諏訪地方の方言で、
「いたずらっ子」とか
「やんちゃな子」という意味だそうです。

『おこめができた!』では、
田植えも稲刈りも脱穀も、
全て機械によって作業が進められていますが、
この「ごだっ子」の5年生達は、
「田おこし」から「代掻き」「田植え」
「草取り」「稲刈り」「脱穀」に至るまで、
全ての行程を機械に頼らず、
人の力でやり遂げています。
そして、収穫したお米で餅をつき
(これも、昔ながらの臼と杵をを使った餅つき)
自分達が食べるだけではなく、
他学年の児童や
お世話になった家族も招待し
皆で収穫の喜びを分かち合います。
さらに、稲刈り後の冬の期間、
田んぼに水を張り、凍らせ、
自然のスケートリンクを作って楽しむ
というおまけ付き。

私自身の実家も夫の家も
農家ではなく、お米作りの経験がありません。
自身の小学生時代の体験は、
小学校の敷地内に作られた
ごく狭いスペースでのお米作りだったように
記憶しています。
(昔のことですでに記憶がおぼろ🫥)
また娘の時は、
周辺に田んぼがない都市部の小学校で、
バケツを使っての水稲栽培でした。
実際には、
お米作りは苦労の連続で、
体力的にも大変だとは思いますが、
この絵本に登場する
子どもたちの表情の
なんていきいきと輝いていることか❗️
その姿は本当に楽しそうで、
うらやましいとさえ思います。

主人公はまさに5年生の児童たちですし、
「お話タイム」で紹介したいのはやまやま
ですが、残念ながら、
掲載されている写真も多いですし、
この絵本も文章が長く、
10分では読みきれません。
「ごだっ子」たちが体験するような
豊かで本格的な米づくりができる小学校は
限られていると思いますが、
本の中でだけでも、体験してほしいです。

ちなみに、
私が「お話タイム」に伺っている
小学校は、
近所の田んぼの提供を受け、
※「亀治米」という
地域の伝統「在来種」であるお米作りを
実践していて、今年も間もなく
収穫の時を迎えます。



※亀治米
最初に紹介した『稲と日本人』の中では、
明治時代に米の品種改良に取り組んだ
山形県生まれの
阿部亀治氏が生み出した
寒さに強い品種
「亀ノ尾」のことが取り上げられていますが、
「亀治米」は、
島根県安来市出身の
広田亀治氏(奇しくも同じ名前😳)が
発見し育てた稲🌾で、
収穫量が多く、病害虫に強いと言われています。