ドクターから、
「その症状は、いつから、始まりましたか?」
「それは、いつのことでしたか?」
と問われて、
私は、「いつ」と、
答えることができませんでした。
もう20年以上、
両親とは、遠く離れて暮らし、
会うのは、盆と正月くらい。
実家に泊まったことは、
その間、2回程度でした。
母の世話は、
ずっと父に任せきりで、
生死に関わるほどの病状で無いからと、
母の容態、日常に、
深く関心を寄せることを怠っていました。
私の「財布」に、
「愛」は、入っていませんでした。
その報いなのでしょうね。
3人の子どもの内、
その場に居合わせない
弟と妹の名前は、
言えたのに、ちゃんと覚えていたのに、
ドクターに、私の名前を問われた母は、
私の顔をまじまじと見ながら、
はっきりと答えました。
「わからん」