ピアノが誕生する前、チェンバロが主流だった時代は演奏者自身が調律をしていたと思われます。

しかし、ピアノが発明されて改良が進行するに伴い、中身が複雑になったり、ピアノ弦の張力が強くなってきました。

すると簡単に中をいじることができず、演奏者が調律を行うことが困難になってきました。

つまり、「ピアノ」という楽器の誕生によって、調律を専門に行う人が出てきたのです。

音程の高低が分かるからと、見よう見まねで手を加えてみても、いい状態を維持することが難しく、すぐに狂ってしまいます。

やはり専門的な技術や知識を身につけ、経験を積んでいないと満足な調律はできません。

日本で調律が行われるようになったのは、メーソンが来日、滞在していた時期でしょう。

彼は1880年から約二年間滞在しました。

その来日時に持参したクナーベ製のアップライトピアノを修復したとき、鍵盤名を書いたチューニングピン化粧板には、漢数字が書かれていました。

もしアメリカで書かれたのであれば、アラビア数字が記入されているはず。

つまり、日本人に調律を教えたので漢数字が残っていたのでしょう。

日本にピアノが入ってきたのは、もっと前に遡りますが、調律という作業が行われるようになったのはこの時期と考えられます。

ピアノを購入するときには「こまめに調律しなくちゃ」とわかってはいるものの、忙しさにかまけてしまうこともあります。

そんな人にはぜひチェックしてもらいたい[こんな症状は危険!]という例を紹介します。

まず最初に、ピアノに水滴がついたり雲ってきたとき。

これは、必ずそうなるというわけではないですが、温度差によって起こる現象です。

暑い部屋に冷たい飲み物を置いておくと、周りに水滴がつきますよね。

また、寒い部屋を急激に暖めると窓が曇ったりします。

ピアノも同様で、極度の温度差によってこのような現象が起こります。

次に、鍵盤がガタガタしてきたとき。

頻繁に弾いていてガタガタになるのは仕方ないのですが、あまり弾いていないのにそうなっている場合は、姫丸鰹節虫、イガ虫などの純毛を喰う虫がピアノの中に入り、フェルトなどを喰っている可能性大です。

初期症状の時点であれば、すぐに防虫剤を入れたりすることで、ヒドイ状態になる前に対処することができます。

が、放っておくと鍵盤の上を虫が這い上がることもあります。

そしてもっと怖いのが、ネズミ。

アップライトピアノの場合、真ん中のペダルの隙間から侵入し、巣を作ってしまうことも……

中にいるネズミが歩いた重みで打弦し、誰も弾いていないのに音が鳴ることがあります。

逆に、中でネズミが巣を作るためにいろいろな部品を集めるので、だんだん音が出なくなることもあります。

この被害に関しては、残念ながら毎日ピアノを弾いているからといって防げるものではありません。

フローリングの家に比べて、土間があるような古い家に置いてある場合、ネズミが入りやすくなります。

また、一時的にでも物置など、外を通じているところに放置してしまうのも危険。

音の狂いは直すことができますし、虫やネズミの被害は早期発見なら修理も簡単に済みますが、被害が進行してしまうと、処置が大変難しくなります。

年に一回くらいのペースで調律していれば、大きな被害を防止することができますので、定期的に調律を依頼するようにしましょう。

音の高さを合わせたり、壊れた部分を直したり、調律は「ピアノの治療」というイメージがあります。

もちろん、間違いではありません。

内容も様々で、呼び方にも種類があります。

「調律」とはチューニング、つまり音程を合わせることを指します。

打弦を繰り返すことで、弦が緩み、音程が下がってきてしまうので、規定のピッチに合わせていきます。

この規定のピッチというのは、国際標準で440ヘルツ。

でも最近は442ヘルツに合わせてコンサートを行う人も増えているようです。

これは余談ですが、あるピアニストは、ホール会場のスタッフに「440と442、どちらのピッチにしますか?」と聞かれて「どちらでもいいけど、間をとって441にしてください」と返答したところ、請求書に《ピッチ変更に伴う追加料金》と書かれていたことがあるそうです。

話を元に戻しましょう。

アクションの反応や、鍵盤の深さ、弾きやすさを調整する作業を「整調」といいます。

そして、ハンマーに針を刺したり、削ったり、硬化剤を入れたりすることで音色を整えることを「整音」といいます。

そしてもう1つ知っておきたいのが、「修理」と「修復」。

修理とは故障した箇所を直すことをいいます。

そして修復とは、傷んだ箇所を直して元通りにすることをいいます。

つまり、最初の状態に忠実に復元することです。

この二つの作業も含め、とても広い意味で調律と呼ぶこともあります。