最近は、CDブックを企画・発売し、それをTVで大々的に宣伝するのが、ひとつのスタイルになろうとしているのでしょうか。
ディアゴスティーニのオペラ・コレクションに引き続き、今度は、小学館が、「ウィーン・フィル 魅惑の名曲」全50巻の発売を開始しました。
「深刻な出版不況」×「世界的なCD不況」×「クラシック音楽の長期衰退傾向」という三重苦を打破する妙案として考えられたのでしょうか?
とにかくあらゆる客層を幅広く狙っているようで、「ウィーン・フィル」で「名曲」を提供し、「ビギナー」から「愛好家」まで満足できるようにしているそうです。
「多目的はしばしば無目的に通じる」と言います。
あまりにも総花的な企画案に、心配になって、すでに告知されている全50巻のラインナップを眺めてみました。
う~ん、これは・・・・・・( ̄_ ̄ i)
ユニバーサル・ミュージック(デッカ、DG、フィリップス)の旧音源の中からチョイスしています。
それらは、すでに、過去に、国内盤でも輸入盤でも、何度も何度も、繰り返し廉価販売されてきたものがほとんどで、愛好家の目から見れば、新鮮味はありません。
どれも保有しているか、もしくはかつて保有していて処分した音源です。
「愛好家まで」と銘打つのなら、初出音源をいくつか用意した方が良かったのではないでしょうか?
せっかく50巻も出すのなら、せめて1割くらい、そういう興味深い音源があれば、愛好家層の関心を喚起できたでしょうに・・・・・残念なことです。
では、ビギナー向きかという観点から見ると、良いものとそうでないものとが混在しています。
ビギナー向きということであれば、発売以来、「定盤」としての確固たる立場を築いている、ファーストチョイス的なスタンダードな名演奏を並べるのが常道です。
このシリーズには、多くの人々から絶賛されてきた、そうした「定盤」も多々含まれている一方、なんで、こんな低評価の演奏が混じっているのだろうかと訝しく思えるものも、あります。
一例を挙げるならば、ブルックナーの交響曲第4番。
この曲には、発売年にレコードアカデミー大賞を受賞したカール・ベーム指揮の演奏がデッカ音源の現役として存在しているのに、こうした定盤ではなくて、わざわざハイティンク指揮のフィリップス音源が使われています。
熱心なハイティンク・ファンという、ごくごく一部の階層向きの企画ならともなく、総花的な企画にこれはいかがなものか・・・・と思ってしまいます。
いちいち挙げませんが、こうしたケースが、いくつか見られるのは、せっかくの壮大な企画だけに、いかにも残念です。
全体に言えることですが、登場する指揮者の顔ぶれがかなり偏っているのが気になります。
たとえば、カルロス・クライバー、ニコラウス・アーノンクール、ピエール・ブーレーズ、ジョン・エリオット・ガーディナー、クリスチャン・ティーレマンをはじめとする直近20~30年間のウィーン・フィルの音楽形成に重大な影響を与えてきた有力指揮者たちが、ごっそりと抜け落ちているのも不思議です。
クライバーの「運命」「未完成」「ブレームス第4」などは、まさに「定盤」だし、アーノンクールの「モーツァルト・ヴァイオリン協奏曲集(with クレーメル)」もそう・・・・・
メンデルゾーンの「イタリア」なら当然新しいガーディナー盤こそファーストチョイス向きであることは、評論家・ユーザーなどによるアンケートなどでも明らかだと思いますが、なぜか、古いドホナーニ盤が選ばれていますし・・・
出版側には出版側なりの、やむにやまれぬ事情がしばしば存在するので、致し方がないのかもしれません。
しかし、ユーザーがそれで本当に喜び、満足するかが、何よりも重要であることは言うまでもありません。
在庫一掃的な意図もあるのかもしれませんし、何とも言えませんが、「せっかくの企画なのに、もっとやりようはなかったのだろうか!」というのが正直な感想です。
以前、ウィーン・フィル150周年の年に、世界の有力レーベルは、それを記念して、ウィーン・フィルの演奏をCDシリーズで発売しましたが、その際、既出音源を並べただけのレーベルと、初出音源を混ぜて出したレーベルでは、はっきりと明暗が分かれたのを思い出します。
今からでも、何か、そうしたプラスアルファを期待したいものです。