男「…次は?」

妹「はい、この雑貨屋さん」

男「傘を買ったところか」

妹「あ、覚えてたんだ」

男「傘無くしたとか言ってもう一本買いに来たもんな」

妹「…あはは」

妹「ここはね、にいさんと一回入った服屋さん」

妹「それでこのお店はね、バレンタインのチョコレートの材料を買ったところだよ」

男「受験生だったのにな」

妹「そ、それは妹友があげたほうが良いって言ったから…」

男「チョコレート、美味しかったよ」

妹「あ、ありがと…あ、あの電柱」

男「電柱?」

妹「…よそ見してて一回ぶつかったぁ」

男「はは、そんなことまでよく覚えてるな」

妹「覚えてるよ、どんなことだって。全部私の思い出だから」

男「そっか」

妹「にいさんとどこでどんな話をしたかだって、全部覚えてる」

妹「…私がここにいたんだってこと、私が覚えてないと、しょうがないから」

男「……。」

妹「…だいぶ時間もなくなってきたね。じゃあ、次行こっか」

男「中学校か」

妹「はじめ、来るのが凄く怖かったな」

男「はは、不安そうにしてたもんな」

妹「あの時、にいさんが一緒に来てくれて安心したんだぞ?」

男「そんなこと一言も言ってなかったけどな」

妹「だって言ってないもーん」

男「…まったく」

妹「妹友と友達になれたのも、ここだね」

男「そうだな」

妹「…じゃあ次」

男「もう良いのか?」

妹「うん、だいぶ暗くなって来ちゃったし…にいさん、手」

男「ほらよ」

妹「えへへ、じゃあしゅっぱーつ」

男「ここが最後か?」

妹「うん、本当は高校とか、他にも行きたかったんだけど」

男「今から行けば間に合うぞ?」

妹「良いよ、晩御飯に遅れちゃう。お母さんが待ってるから」

男「そっか」

妹「それに嬉しいんだ。一日じゃ回りきれないくらいに、私にも思い出があるんだって」

男「……。」

妹「この分かれ道、妹友と色んなことを話した場所なんだよ」

男「そのせいで毎日帰りが遅かったもんな、妹」

妹「…昨日はここで、嫌な別れ方をしちゃったけど」

男「…妹友ちゃんに会いに行くか?」

妹「大丈夫」

男「いいのか?」

妹「うん、今から会いに行ってさよならなんて言ったら怒られるもん」

男「…はは、そうだな」

妹「…にいさん、帰ろうか?」
男「そうだな、母さんが待ってる」

妹「すっかりクリスマスのムードだねー」

男「そりゃあ、クリスマスだからな」

妹「カップルばっかだねー」

男「…そりゃあ、クリスマスだからな」

妹「えへへ、大丈夫だよにいさん、私達もカップルに見えてるって」

男「それもどうかと思うけどな…」

妹「兄妹だもんねー」

男「そうだな」

妹「でも、寂しくはないでしょ?」

男「まあなー…妹、ほんとにブラブラしてるだけで良いのか?」

妹「もちろん、良いよー。すごく楽しいもん」

男「もっと遊園地とか、水族館とかさ、どこでも連れてくぞ?」

妹「良いのー、にいさんといられれば」

男「…そっか」

妹「えへへ、ずっと外だと寒いけどね」

男「そうだな…ずっとブラブラしててもしょうがないしな」

妹「どうしよっかなー」

男「どこでも良いぞ」

妹「そう言われてもー…あ、じゃあね、私のお気に入りスポットを案内するよ」

男「え、俺に?」

妹「そう、私のお気に入りツアー」

男「ツアーって…そんなたくさんあるのか」

妹「たくさんあるよー、一日じゃあ回りきれないかも」

男「そんなにか」

妹「なんせ私の思い出を辿るツアーですから」

男「なるほど」

妹「付き合ってくれる?」

男「お安いご用で」

妹「まずはここ」

男「本屋さん?なんで?」

妹「にいさんが一番はじめに私を連れて来てくれた場所」

男「そうだっけ」

妹「うん、去年のクリスマスにね」

男「まあ…俺がよく来る場所だからな」

妹「今もお世話になってるもんねー」

男「…まあ受験生ですから」

妹「ふふ、それで次はお向かいのゲームセンター」

男「ああ、次はここに連れていったっけ」

妹「夏に来たときはにいさんがネコのヌイグルミを取ってくれたの」

男「懐かしいな」

妹「…こんな感じでにいさんが教えてくれた場所を巡っていくね」

男「どこに連れてったかなんて覚えてないぞ?」

妹「大丈夫、私が全部覚えてるもん」

妹「このお店はね、妹友とよく来るんだぁ」

男「ふーん」

妹「あ、あそこのコンビニ、前に男友先輩を見かけたよ」

男「ここ、あいつの家近いからな」

妹「えっちぃ本を立ち読みしてた」

男「コンビニで何してんだあいつ…」

妹「あ、ここ…妹友とパフェ食べ来ようねって言ってたカフェだよ」

男「妹友ちゃんもそう言ってたな」

妹「…約束破っちゃったなぁ」
男「よし、じゃあ行くか」

妹「…うん」

男「ん?どうかしたか、妹」

妹「…お父さん、このお墓の中にいるの?」

男「どうかな、お墓の中にはいません、なんていう歌もあるし」

妹「じゃあどこにいるのかな?」

男「さあな…きっと、天国かどっかで俺らのこと見てたりするんじゃないか?」

妹「……。」

男「どうした?」

妹「…私は?」

男「……。」

妹「私は、消えたらどこに行くのかな」

男「…変なこと考えてんじゃねえよ」

妹「……。」

男「ほら、今日はデートなんだろ?」

妹「…うん」

男「なら、笑ってろ」

妹「…えへへ」

男「そうそう」

妹「ごめんね」

男「良いよ、じゃあ行くか」

妹「次はどこに行くの?」

男「ん、妹の行きたいところ」

妹「行きたいところ?」

男「今日一日、お前のわがままは何でも聞いてやるよ」

妹「…なんでも、かー」

男「ほら、好きなこと言ってみろ」

妹「えっとね、じゃあ最初のわがまま」

男「なんだ?」

妹「腕…組んでいい?」

男「行きたい場所じゃないのかよ」

妹「それは次ー」

男「…ほら」

妹「えへへー」ギュー

男「で、行きたいところは?」

妹「あ、あれ、腕組んだ感想とかは?」

男「…胸が無――」ゲシッ

男「…足が痛い」

妹「でしょうね」

妹「むー、胸が小さいのは私のせいじゃないもん」

男「それについては何も言うまい」

妹「…にいさんが」

男「はい妹、行きたいところは?」

妹「…じゃあ、町をブラブラ」

男「ブラブラ?そんなので良いのか?」

妹「うん、それが良いの」

男「妹がそう言うなら…じゃあ行くぞ」

妹「はいな!」

男「あ、妹」

妹「うん?」

男「……。」

男「…お前、いつ消えるんだ?」

妹「…私もよく分からないけど、たぶん明日の午前零時かな」

男「クリスマスになった瞬間…か」

妹「だからあと、12時間くらい」

男「……。」

妹「えへへ、ちびっとしかないね」

男「…そうだな」

妹「もう、笑えって言ったのはにいさんでしょ。なんでそんな顔してるのさ」

男「ん、ごめん」

妹「せっかくのデートなんだから、ほら行こ?」

男「…おう」

妹「じゃあね、お父さん」

男「また来るからな」

妹「…じゃあ、駅まで競争!」
ダッ

男「おいこら…先に走られたら勝てねえよ」