妹「ほんとは、もうちょっとだけ…ぎゅってしていたかったけど」

シュー

妹「…にいさん、ごめんね?」

男「…おい、なんだそれ」

男「妹…ほら、ぎゅってしてやるから」

ギュー

妹「あ…えへへ、私もー」

男「…妹、大丈夫だからな、また俺、お前のことサンタに頼んでやるから」

妹「……。」

男「…だから、な?」

妹「…ありがとね、にいさん。私のこと、忘れないって言ってくれて」

シュー

男「…それ、どういう…意味だよ」

妹「にいさんがそう言ってくれただけで、私、とても幸せ」

男「…おい」

妹「でもね、ごめんね、にいさん。さっきのわがまま、取り消すね」

男「おい…おい!」

妹「私の最後のわがまま…聞いて?」

妹「どうか…にいさんも、幸せに生きてください」

男「バカなこと言ってんじゃねえ!…なんだよそれ」

妹「私、にいさんの妹になれてよかった」

男「……。」

妹「えへへ…あ」

シュー…

妹「…消えちゃうね」

男「あ…」

妹「じゃあね、にいさん」

妹「楽しかったよ…とっても」

妹「キスまで…しちゃったし」

妹「もう、私は十分」

妹「ふふ、サンタのプレゼント、私なんかでよかったのかな…それだけがちょっと、心配だけど」

男「……。」

妹「…じゃあ、ばいばい」

男「妹…妹!」

シュー…

男「……。」

男「…妹」

男「…馬鹿野郎、最後で強がるなんて…どれだけ馬鹿なんだよ」

男「…絶対、許さないからな」

男「絶対忘れてなんてやらねえ…」

男「……。」

男「……。」

男「……。」

男「……。」

男「……。」

男「……。」

男「…あれ?」

男「なんで俺、泣いてるんだ?」



男「何度だって、思い出してやるさ」

妹「……。」

男「だから…忘れて欲しくないなら…ちゃんとそう言え」

妹「……。」

男「俺はお前の兄なんだから、なんだって聞いてやる」

妹「…そんなの」

妹「そんなの…ひどいよぉ」

男「……。」

妹「せっかく全部諦めて…このまま最後までって思ってたのに」

妹「にいさんにそんなこと言われたら…私、期待しちゃうじゃんか」

男「……。」

妹「余計、消えたくないって思っちゃうじゃんかぁ…」

男「…思えば良いじゃねえか」

妹「……。」

男「ほら、何か言うことがあるんじゃないのか?」

妹「……。」

男「……。」

妹「…にいさん」

男「…ん」

妹「…私のわがまま、聞いてくれる?」

妹「私のこと…ずっと、覚えていて」

男「…分かった」

妹「……。」

男「忘れないよ」

妹「……。」

男「……。」

妹「もう、時間がないね」

男「…そうだな」

妹「あと、どれくらい?」

男「30分くらいかな」

妹「……。」

ギュッ

男「……。」

妹「最後まで、このままでいたいな」

男「…うん」

妹「……。」

男「……。」

妹「…ふふ、にいさん、鼓動速いよ?」

男「…なに聞いてんだよ」

妹「昨日も、速かったよね」

男「どうだったかな」

妹「なんで、速くなってるのかな?」

男「…さあな」

妹「…にいさん」

男「なんだ?」

妹「私もね、今、ドキドキしてるよ?」

男「……。」

妹「えへへ、なんででしょう」

男「……。」

妹「……。」

男「……。」

妹「ねえ、にいさん。私、にいさんの妹だよね」

男「…ああ」

妹「妹なのに、ドキドキするのっておかしいよね」

男「……。」

妹「…ね、にいさん」

妹「こっち向いて」

男「…なんだ?」

妹「……。」

チュ

男「……。」

妹「えへへ…しちゃった」

シュー

妹「あ、あれ…なんだぁ、時間が来ちゃったみたい」

男「妹!」

妹「思ったより…消えちゃうの早いみたいだね」

シュー

男「おい、待てよ…おい」

妹「あーあ、まだ言ってないこと、あるのになぁ」

男「……。」

妹「あ、それともキス…しちゃったからかな」

妹「ふふ、それならまあ…しょうがないよね」

男「…なに言ってんだよ」

妹「そもそも…プレゼントに妹を貰うことが既に特別なことなんだから」

妹「だからね…だから…」

男「……。」

妹「私がいなくなっちゃうのは…しょうがないことなんだよ?」

男「……。」

妹「えへへ、大丈夫だよ。にいさんいい子だから、きっとまた新しいプレゼントが貰えるし」

妹「そしたら、私のことなんか…だからね…」

男「…ほんとにそう思ってるなら、なんでそんな顔するんだよ」

妹「……。」

男「ほんとに仕方がないって思ってるなら…そんな顔するなよ」

男「そんな泣きそうな顔されて…ああ、そうなんだなんて、言えるわけないだろ」

妹「……。」

男「どうなんだよ、妹。しょうがないことなのか?」

男「俺…お前のこと忘れちゃうんだぞ?母さんも、妹友ちゃんも、男友も、女も、みんなみんな」

男「お前のこと…もう、思い出さなくなるんだぞ?」

男「楽しかったことも、嬉しかったことも、全部無かったことになるんだからな」

男「一緒に町をブラブラしたことだって、夜遅くまで勉強したことだって」

男「海で遊んでた妹だって、ネコに舐められて喜んでた妹だって」

男「…今ここで、お前を抱きしめて頭を撫でてることだって…俺、忘れちゃうんだからな」

男「お前は、本当にそれで良いのかよ…」

妹「…そんなの」

妹「良いわけ、ないじゃんか」

男「……。」

妹「良いわけ…ないでしょ」

妹「私、何度も…消えたくないって言ったじゃん」

妹「嫌だよ、みんなの中に私がいなくなるなんて…」

妹「そんなの…嫌に決まってるじゃんかぁ」

男「…じゃあちゃんと、そう言えよ」

妹「でも、しょうがないものはしょうがないでしょ!」

妹「どうしたって、私はみんなから消えちゃうんだから…私がどう思ったって、それは決まってるんだから…」

妹「だから、何を言ったって…しょうがないんだもん」

男「そんなことねえよ」

妹「……。」

男「忘れて欲しくないなら、そう言え。忘れるなって、俺に言えよ」

男「俺、妹のわがままだったらなんでも聞くって言ったろ?お前が忘れるなって言うなら」

男「俺は、お前のことを、忘れない」

妹「……。」

妹「無理だよ…」

男「無理じゃない」

妹「だって、忘れちゃうもん」

男「覚えてるよ」

妹「みんな、消えちゃうんだよ?」

男「じゃあ、思い出す」

妹「……。」