男「思い出さないと、いけない気がする」

男「…なにか、なにか…大切なことを忘れてる気がするんだけど」

カリカリ

男「…ん?」

男「…なんだ?」

ミャー

男「…ネコ?」

男「…あ、ミャー…だ」

男「…今俺、ミャーのことも忘れてた?」

ミャー

男「…なあ、ミャー。俺、なんかおかしいんだ」

男「頭の中がぽっかり抜けたみたいで」

男「…なんでか、分からないか?」

…ミャー

男「…はは、分かるわけないか」

ミャー

男「…どこ行くんだ?」

カリカリ

男「…そこは空き部屋だぞ?」

ガチャ

男「…空き部屋、だよな?」

男「…あれ、なんで俺の物がこんなにいっぱいあるんだ?」

男「マンガ…参考書…鉛筆?」

男「…ミャーがこの部屋に持ってきたのかな」

男「…あれ、ミャーどこ行った?」

男「……。」

男「…俺、この部屋によく来てた気がする」

男「なんでだ…この部屋にはなにもないのに」

男「…駄目だ、やっぱりなにか忘れてる」

男「なにかを…なにか…」

男「……。」

男「……。」

男「…誰か?」

男「……。」

男「…誰か?」

男「なんだそれ…妹友ちゃんのことか?」

男「…違う、でも…それに近い、誰か」

男「記憶がおかしくなってるのは…それが思い出せないから…」

男「…大切な、誰か」

男「……。」

男「…誰なんだよ」

ミャー

男「ん?ミャー、どこ行ってたんだ」

男「…ミャー、それは?」

男「首についてる、それ」

チャラ

男「…キーホルダー?」

男「……。」

男「…半分だけの、キーホルダー?」

男「…ああ、海で買ったやつか」

男「……。」

男「……。」

男「…誰と?」

男「……。」

男「……。」

男『俺はこっちを持ってれば良いんだな?』

男「…もうひとつは、誰が持ってるんだよ」

男「…思い出せよ」

男「……。」

男『忘れないよ…全部』

男「……。」

男「…忘れてんじゃねえか…馬鹿」

男『この旅行楽しかったか?』

男「…おい」

男『全部、覚えてるから…当たり前だろ?』

男「…おい」

男『…ほら』

男「誰だよ、俺と話してたのは…」

男『ごめんな』

男「誰なんだよ…」

男「……。」

プルルルルル…

男「……。」

プルルルルル…

男「……。」ピッ

男「はい」

妹友『あのー…私、妹友と申しますが…』

男友『…あれ、なんだこれ』

男「なんかおかしいよな」

男友『気持ち悪いな…』

男「寝るなってこういうことか?」

男友『…分かんねえ』

男「…頭痛い」

男友『おい、大丈夫か?』

男「大丈夫、ありがとな男友」

男友『いや、俺もちょっと考えとく』

男「頼んだ」

プツッ

男「……。」

男「…次は」

プルルルルル…

男「……。」

ピッ

女『はいはーい、メリークリスマスー!』

男「あ、女、夜遅くに悪いな」

女『いいよー、どうしたの?』

女『美術展?行った行った!』

男「あれって誰の提案だったか覚えてる?」

女『そんなの当たり前じゃん!』

女『……。』

男「……。」

女『…あれ?』

男「だよな」

女『おかしいね、誰かの提案だったはずだよね?』

男「ああ…昨日って何人で遊んだっけ?」

女『確か四人だよー』

男「俺と男友と女と…」

女『…あれ?あと一人は誰?』

男「……。」

男「知り合いだよね?」

女『そのはずだよ…あ、ボウリングのスコアシートに載ってるはず』

男「あ、なるほど…どこにしまったかな」

女『見付けた!』

男「あ、俺も…妹友?」

女『…そうだ、妹友だよ!思い出した』

男「…妹友ちゃん」

女『…なんで思い出せなかったのかな?』

男「……。」

女『男君?』

男「ありがと、女。また何かあったら電話するよ」

女『あ、うん分かったよー』

男「またな」

女『ばいばーい』

プツッ

男「……。」

男「おかしいぞ、なんだこれ…」

男「妹友ちゃん…確かに覚えてるけど…いつ出会ったんだ?」

男「…あー、くそ、とりあえずスコアシートを片付けないと」

男「…ん?なんだこれ…俺の字だけど、こんなの書いた覚えがないな」

 『今日、何してた?』

男「…今日?」

男「今日って…」

男「…墓参りだよな」

男「そのあと、一人でブラブラして…夜になったら帰ってきたけど」

男「…あれ、俺なんで一人で色んなところ行ったんだっけ?」

男「……。」

男「…あれ、俺なにか…忘れてないか?」

男「なにか…なにか…忘れてる?」

男「…この紙、裏にもなにか書いてある」

 『思い出せ』

男「…なんだこれ」

男「俺、こんなもの…書いた覚えがない」

男「……。」

男「なんだ…何を忘れてるんだ?」

男「思い出さないと…」

男「…ん?なんでだ?」

男「……。」

男「……。」

男「…Zzz」

プルルルルル…

男「…んあ?」

プルルルルル…

男「…なんだ…電話?」

男「寝てたのに…たく」

ピッ

男「…あれ、俺いつもマナーモードにしてるんだけどな」

男友『なんの話だ?』

男「いや、こっちの話…ってお前かよ」

男友『俺で悪かったな…』

男「俺、今から寝ようとしてたんだけど」

男友『それはちょうど良かった』

男「ん?」

男友『伝言があるんだ』

男「…なに、伝言?」

男友『そう、伝言』

男「誰から?」

男友『…昔の俺から?』

男「…は?」

男友『いや、俺もよく分からないんだけど』

男「…まあ良いや、それで伝言の内容は?」

男友『……。』

男「…ん?」

男友『寝るな』

男「寝るな?」

男友『そう』

男「それだけ?」

男友『いや、もうひとつ』

男「……。」

男友『サンタに願い事をしたら寝ろ』

男「サンタ?」

男友『そう』

男「……。」

男友『……。』

男「寝ぼけてる?」

男友『寝ぼけてねえよ!』

男「…よく分からない」

男友『俺もだよ』

男「なんだそれ」

男友『でも、メモ帳に絶対伝えろって書いてあったからな』

男「…他には何も無いのか?」

男友『あとは何も…いや、俺の走り書きが』

男「ん?」

男友『みんなで遊んで楽しかったなー』

男「昨日のことか?」

男友『だろうな』

男「……。」

男友『じゃ、伝えたからな』

男「…ああ」

男友『メリークリスマス』

プツッ

男「……。」

男「…寝るなってなんだ?」

男「寝ちゃダメなのか?」

男「……。」

男「サンタ?」

男「…なんのことだよ」

男「…はあ」

男「とりあえず、起きてるか」

男「…昨日のことって、男友たちと遊びに行ったことだよな」

男「女の提案でみんなの行きたいところに行くって言って」

男「はじめはボウリング行って…次は美術展だっけ」

男「……。」

男「…美術展?」

ピッ

男友『なんだ?』

男「昨日俺達って美術展に行ったよな?」

男友『ああ、女がやたらはまってたなー』

男「それって、誰の提案だった?」

男友『……。』

男「……。」

男友『誰だっけ?』

男「……。」