妹「…ふわぁ」

男「やっぱお前、眠たいんじゃないか」

妹「あはは、ちょっと疲れちゃったみたい」

男「無理しないで寝ろよ…手、ずっと繋いどいてやるから」

妹「…うん」

男「俺さ、まだお前とやりたいことが沢山あるから」

妹「……。」

男「夏だって、秋だって、冬だって…俺、お前の側にいてやるから」

妹「……。」

男「だから、安心して寝てくれよ」

妹「…分かった」

男「…じゃあ、おやすみ、妹」

妹「おやすみ、にいさん」

男「……。」

妹「……。」

男「……。」

妹「…Zzz」

男「…妹」

妹友「なんで、次の春も一緒にいてやるって言わなかったんですか?」

男「…妹友さん、起きてたのか」

妹友「なんで、またサンタに妹を願ってやるって言わなかったんですか?」

男「…妹のこと、知ってるのか」

妹友「今はその話は良いです」

妹友「私の質問に、答えてくださいよ」

男「…そうだな」

男「言っても、妹は喜ばないと思ったから、かな」

妹友「……。」

妹友「どういう意味ですか?」
男「…俺が次の春も、その次の春も妹と一緒にいたいって思ってることなんて、言わなくたってこいつに伝わってるさ」

男「サンタに願ってやりたいって思ってることだってとっくに分かってるよ」

男「俺だって、妹のずっと一緒にいたいって言葉も、サンタに願ってほしいっていう言葉も全部聞こえてる」

男「だって俺たちは、兄妹だからな」

妹友「……。」

男「でも、妹はそれを分かった上で、あと少しで自分が消えちゃうって思ってるんだ」

男「だから、ずっとあんな顔をしてる」

男「なにかを言わないまま、諦めたように残りの時間を過ごそうとしてる」

男「そんなあいつになにを言っても、今の妹には何も届かないと思ってさ」

妹友「…妹が、何かを隠してるのは知ってます」

男「隠してるというか…」

妹友「はい?」

男「いや、なんでもない」

妹友「なんですか?気になります」

男「隠してるというか…言ってもしょうがないって思ってるんだろうな」

男「あとは、言わないことによってその現実から目を背けようとしてるのかも」

妹友「…お兄ちゃんは妹が何を言わないようにしてるのか分かってるんですか?」

男「……。」

私を、忘れないで

男「…たぶんね」

妹友「…そうですか」
男「…あー、妹?」

妹「…なに?にいさん」

男「この旅行楽しかったか?」

妹「うん、とっても」

男「そっか、良かった」

妹「海も花火も温泉も、夜の内緒話も全部全部楽しかったよ」

男「夜の内緒話が気になるな」

妹「な、内緒話だから内緒に決まってるでしょ!」

男「はは、それもそっか」

妹「……//」カアッ

男「…ん?」

妹「…私ね、この旅行のこと、絶対に忘れないよ」

男「俺もだよ」

妹「……。」

男「妹と買ったキーホルダーのこともな」

妹「……。」

男「忘れないよ、全部」

妹「……。」

男「全部、覚えてるから…当たり前だろ?」

妹「……。」

男「…妹?」

妹「…にいさん」

男「なんだ?」

妹「あと…五ヶ月、切っちゃったね」

男「……。」

妹「クリスマスの魔法が…解けるまで」

男「…そう、だな」

妹「このまま夏が終わって、秋になって…そして、秋が終わって冬になれば」

妹「また、クリスマスがやってくる」

男「…うん」

妹「そしたら、私は…私は…」

男「……。」

妹「……。」

妹「…あーあ、一年なんてあっという間だね」

妹「にいさんと初めて会ったのが、ほんのちょっと前みたいなのに」

妹「気付いたらもう半分以上過ぎてるなんて、ほんとに嘘みたい」

男「……。」

妹「だからきっと…残りの半分もあっという間なんだろうね」

男「……。」

妹「ねえ、にいさん」

男「なんだ?」

妹「手、繋いで良い?」

男「…ほら」

妹「…ありがと」

ギュ

男「……。」

妹「やっぱり冷たいね」

男「ごめんな」

妹「ううん、いつものにいさんの手で安心したの」

男「そっか」

妹「えへへ、にいさんの手だぁって」ギュ

男「…そっか」

妹「知ってる?手が冷たい人は、心が暖かいんだって」

男「ふーん」

妹「その話、本当だったよ」

妹「にいさんの心、とっても暖かいから」

男「はは、どうやって分かるんだよ」

妹「分かるよ、だって私、にいさんの妹だもん」

男「…そうだったな」

妹「私、にいさんの妹で良かった」

男「…俺も、お前のにいさんになれて良かったよ」

妹「にいさん、あと少しの間だけど、にいさんの妹でいさせてください」

男「……。」

妹「……。」

男「…もちろん、お前はずっと俺の妹だよ」

妹「えへへ、良かった」
男友「急げー、電車が出るぞ!」

女「なんで、こんなに、ギリギリなのさー!」

男「お前のせいだよお前の」

妹友「先輩お土産買うのにどれだけ悩んでるんですかー!」

女「しょうがないじゃない、みんなにお土産買うって言っちゃったんだもんー!」

妹「で、電車出ちゃいますよ」

男友「待った、その電車乗ります!乗りますって!」

男「…情けない」

妹「…恥ずかしい」

妹友「先輩ー!」

女「申し訳なーい!」

ガタン…ゴトン…

男友「…間に合ったー」

男「一度閉まりきったドアを開けてもらったけどな…」

女「もう…体力ない…」

妹友「左に同じくですー…」

妹「……。」

女「妹さんが疲れすぎて言葉が出てない…」

男友「…ま、まあ無事に間に合ったということで」

男「俺らにしては、ハプニングなく上手くいった旅行だったな」

女「男友の企画にしてはねー」

男友「……。」

女「あ、いや冗談だよ?みんな男友に感謝してるからね?」

男「ほんとにありがとな、男友」

男友「ははは、それほどでもあるかなー!」

男「…こいつに謙虚ささえあれば」

ガタン…ゴトン…

男友「でも、まだ油断は出来ないからな」

女「へ?」

男友「家に帰るまでが遠足ですってな」

妹友「駅を寝過ごしちゃうとか、気をつけなきゃですよー」

女「…私、電車の中で寝ちゃう予定なんだけど」

男友「俺も、海で体力使い切ったからな」

妹友「ねむねむですー」

男「…だから言っただろうが」

男友「なるほど…男が言ってたのはこういうことか…」

男「まあ、俺が起きてるからみんなは寝てていいよ」

妹友「え、申し訳ないですよー」

女「…Zzz」

男友「…女」

男「…ま、そういうわけだから」

ガタン…ゴトン…

女「…Zzz」

妹友「…Zzz」

男友「…Zzz」

男「はは、みんな満足そうな顔で寝やがって」

男「…さて、どうやって時間潰すかなー」

妹「…にいさん」

男「あれ、妹?お前も寝てて良いんだぞ?」

妹「いい、眠くない」

男「嘘つけ、すっごく眠そうな顔してるぞ」

妹「眠くないもん」

男「いやいや、無理すんなって」

妹「…にいさん、隣に座っても良い?」

男「…しょうがねえな、ほら」

妹「えへへ、ありがと」

妹「……。」

男「……。」

妹「……。」