映画「二十四の瞳」。
戦時下の日本,教師と12人の子供たちの感動のお話。
私は見たことがないのですが,私も「二十四の瞳」の視線を感じながら,土曜日は12人の塾生に対して講義をしております。
もちろん,この秋感動のドラマ「全員合格!」があることを信じて。
「先生,合格しました。」
「よくやった。」
一人一人にはぐはぐはぐ!・・・でも,キスは禁物です。
色んな意味で・・・
もう気持ち悪いのはイヤ?
その通りでございます・・・
「二十四」といいますと,講義のネタでもあるのですが,私には「二十四の幻の区分建物」というエピソードがございます。
平成10年頃,私は講師をしながら実務もやっておりました。
その頃,とあるデベロッパーに勤める受講生X様がおりまして,講義が終わりますと,「先生,お話がございます。当社で建設しましたマンションにつきまして先生に登記手続をお願いしたいと思うのですが,いかがでしょう。」と仕事を依頼されました。
つとめて冷静を装う私ですが,もちろん心の中では「来たー!マンション!」と志村けんのバカ殿のような顔になっているのは御想像のとおりでございます。
「部屋数は各階8個の3階建で,全部で24個ございます。先生には表示登記(現行の「表題登記」)のほか,司法書士もお持ちですので,所有権保存登記及び抵当権設定登記もお願いしたいのです。」とのこと。
キタ,キタ,キタ~,表示,保存,設定のフルコース( ^)o(^ )/
しかも個数は24個。1個あたり安く見積もって10万円,それが24だから,なんと240万円である。もうダメ,これ以上はやめて。志村けんもびっくりのバカ殿の顔になってしまいそうな私。
「ただ,場所が千葉の市原でございまして,先生の事務所からですと,片道3時間近くはかかると思いますが,よろしいでしょうか。」とXさん。
正直,しんどい距離ですが,240万円をぶらさげられたら近い近い,「そんなのへっちゃら~」でございます。
「いえ,片道3時間程度でしたら平気ですよ。ハハハ,近所みたいなもんです。是非,お受けいたします。」と二つ返事の私。
後日,取らぬ狸の皮算用よろしく,電車にゆられ現場調査へ。
「市原,そんなでもないじゃない。近い,近い。」ウキウキ気分の私には距離など関係なし。駅で出迎えてくれたXさんと現場に直行。設計図面片手に各部屋をチェック,3時間程度で調査を終えて帰ろうとしたとき。Xさんの強烈な一言が私を直撃しました。
「先生,言い忘れておりましたが,このマンションは賃貸マンションですので,非区分建物で登記して下さい。」
・・・・・
え,今なんとおっしゃいました?まさか区分建物の前に「非」をお付けになりましたでしょうか。「非」を。ねえ,「非」を付けた,「非」を。と何度も問いただしたいと思う気持ちから,私の耳はダンボの耳ように大きくなっていたと思います。
二十四の区分建物は幻となり,三階建て1個の非区分建物の登記手続となったわけです。報酬はかなり低くなりましたが,それなりにいただけましたので,ありがたい話ではあったのですが・・・。
行きはあんなに近かったのに・・・・
市原,帰りはかなり遠かったです。
STUDY
不動産登記事務取扱手続準則第78条第2項
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居,店舗,事務所又は倉庫その他の建物としての用途に供することができるものがある場合には,その各部分は,各別にこれを1個の建物として取り扱うものとする。ただし,所有者が同一であるときは,その所有者の意思に反しない限り,一棟の建物の全部又は隣接する数個の部分を1個の建物として取り扱うものとする。
専有部分が属する建物全体のことを一棟の建物というが,一棟の建物内の数個の専有部分を有する者は,当該専有部分を各別の建物(区分建物)として登記することができるのはもちろん,当該数個の専有部分が接続していれば,その数個の部分を一個の建物(区分建物)として登記することができる。また,一棟の建物に属する全部の部分を所有している者は,全体を一つの建物(非区分建物)として登記することもできる。分譲目的のマンションであれば,各専有部分を売りに出す関係上,各専有部分を独立した区分建物として登記するであろうが,賃貸目的のマンションであれば,その必要はないので,一棟の建物の全部を一個の建物として登記すれば足りる。
過去問H5-13・2
1棟の建物が数個の専有部分に区分され,その所有者が同一であるときは,その所有者の意思に反しない限り,1棟の建物の全部又は隣接する数個の部分は1個の建物として取り扱われる。→正