ギョンスさんのＳは参加されていれば絶対見たいＳです。昨年も見ましたし、今シーズンも3月と5月に観ました。ソナタマッコンは来週ですがギョンスさんをどうしても見たくて今週飛びました。結果満足しています。この回で私の3演ソナタは終わりです。
今回のギョンスＳを見てまず感じたのは、この人の心は死んでしまったのだなあ、ということ。既に何度も何度も日記を読み返し、心のある部分が冷たくなってしまっている感じ。なので目の前で進行する過去の出来事に対する反応も微妙に違う。いろいろそぎ落とされたようなＳでした。
観劇後にＸに、
ギョンスさんが手を差し出したとき劇場にいた全員が「その手をとれ!」って念じてた。
と書きました。その回です。
ＳとＪの半年ぶりの再会のシーン。ヤンＪは努めて明るくおどけたような話し方だけれど、最初から声が泣いている。Ｓは前に観た時はギョンスさんくんくんと匂いを嗅いだり散らばった楽譜を拾ったりしていましたが今回はそういうことはしない。シンプル。
「가자」低い抑えた声でゆっくり話す。「글쎄」も別に余裕があるようには見えなかったけれど。Ｊがつっかかる。
「何を弾けばいい？」の台詞、ギョンスさんが噛んで。あれ？と思ったら台詞の部分の言い方が震えてる。で、「ね、 そに♪」が泣き声になる。ひときわ大きく明るく歌っているんだけど、泣き声。そう言えば昨日のスンヒョンさんもこの辺りで泣き始めたよなあ、と。ピッパレのくだりはちょっと素に戻って感じてしまう部分があるのかな。
そのあとは持ち直し、後ろに立って肩に手をかけるいつもの態勢だったＪを隣に座らせ、Ｊもちっ、って言いながら座ってちょっと押し合いへし合いになる。客先からも笑い。ヤンＪのピッパレはいつも笑いが起こっていいね。
Ｓがピッパレを弾き始めた時、ヤンＪは後ろで「殺せない」と思ったのでしょう。一瞬自分の喉にナイフを向けます。話しかけられてナイフを引っ込め、ふらふらと椅子に座って演奏を聞く。今回はしてたか確認しなかったけどいつもは歌い出すより先に身体でリズムをとってしまうよね。
このあとのグロリアルアルティス勲章の下りではＳは盛大に笑っていました。あんなにおさえてゆっくりしゃべっていたのに台無し。。。からのヤンＪ良かったです。畳み掛けるように「言えよ、どんな才能？どんな？」早口でまくし立てる。
勢いに圧倒されて言葉を返せない、ただ棒立ち、手先だけがもどかしく動くギョンスＳ。前にそっちゅんと似たようなシーンのときはぎゅっと抱きしめたのにそれもできず。この人は音楽に関しては天才かもしれないけれど不器用な人なんだ、と思いました。目の前で壊れて行くＪに何もできないＳ。
「君がいなくても僕はやれるってことを」ここでもまたしくじる。わかってるって、勲章も受賞したし、親友だ、って。どうしてここで勲章だ、親友だ、しか言えないんだろう。勲章はすでに禁句なのになぜわからん？と無責任な観客は残念に思うのでした。
結局ギョンスＳをしてもＳはＪを理解できない。この期に及んでまだなんにもわかっていない。そして最後のシーン。歌いながらＪがばらまいた楽譜を拾い集めて、拒否されても拒否されてももう一回トライ。「가자」 、 一緒に帰ろう、その為に来た、俺が言えるのはそれだけ、帰ろう、と手を差し出すＳ。迷って迷って、迷った末にその手を取るＪ。その手を楽譜と一緒に包むＳ。
手を、取ったんですよ！
うわあ、と思いましたね。マッコンは違うな、連れて帰れるんだな←そんなわけない。
Ｊは泣きながら両手で握り返し、「こまうぉ」と二回。
うん、Ｓの真実は伝わったんだな、その気持ちをありがとう、と思えたんだね。でも、一緒には帰れないよね。
そして帰れ、と。
インスピレーションが今なんで重要なんだ！Ｓの台詞は責められないよね。いや～、そりゃわからんわ。Ｊはインスピレーションを得るために今、Ｓを〇そうとしていたわけで。私はこの時のＪの発語ってそんなに深くはないと思っていて。「インスピレーションを得るためにＳを〇そう」→「Ｓを〇すなんてできっこない」→「もう君はインスピレーションにならない」反射的なことばだったんじゃないか、って（今回は）思うから。Ｓにしてみればそんなことわかりっこない。売り言葉に買い言葉で言っちゃうよね。でも言われた言葉はＪに刺さってしまった。
そこからのＪは迫力ありました。Ｓに対する相反する気持ち、凄みがありました。
ヤン・ジウォンさん、Ｊに関しては天才！って思いました。ソナタを見る多くの人が「Ｓのことが大好きでホントはＳの元に帰りたいＪ」を見たいと思っていると思いますが、ヤンＪはそういうＪです。昨年はおいおいちょっとあざとくないか？って思ったけど、今年観たヤン・ジウォンさんの舞台はとっても思いが伝わって来た。瞬発力のある俳優さんだな、と思う。ただね、先生に話しかけられたら座ったまま首ひねって答えるよりやっぱり立ち上がろうよ。