桐野さんの小説は 心と身体にミシミシくる
桐野夏生の小説が好きだ
緻密でリアルな描写に、夢中になって読んでると
どこまでが自分か 輪郭を失って混ざり合う心地がする
登場人物の 痛みや飢えや寒さが 全部 読んでる自分にも伝わって
一緒に体験しているような心地がする
バーチャルリアリティみたいな
催眠みたいな
心を伝って 身体に突き刺さる
読む度 そんな印象があります
『優しいおとな』を読み終えてました
舞台は、福祉システムが破綻した日本
主人公イオンは、児童施設を脱走し路上で生きるホームレスの少年
1日1日食べ物の確保、寒さ暑さを凌いで寝る場所の確保をして生きる生活
桐野さんの緻密な描写で
イオンの飢えや寒さや疲れが 読み手のこちらの身体にも伝わってくるのがたまらなく辛い
思えば『OUT』の頃から、桐野さんの小説は生々しい生活感や生活苦が綴られていて
その中で強く生きてる人間を書いてて(特に、群からはぐれて1人で生きる孤高の強さのようなものがあって)
桐野さんの小説のそんなとこが好きです
雨宮処凛の解説にも度肝を抜かれた
「09年、リーマンショック直後の派遣切りによって多くの失業者が生み出され、極寒の日比谷公園にホームレス状態の人々約500人が集まる「派遣村」が出現した」
という旨の文章に
この小説が全くのファンタジーなんかじゃないことを知って
ぶわわっと鳥肌が立った
「この国の若年ホームレスには「児童養護施設出身者が多い」という特徴がある。施設で育った子どもたちは、そこを出た途端、剥き出しで社会に放り出される。
多くの若者が失業したり住む場所を失えば、「実家に帰る」「親にお金を借りる」という手段を使うわけだが、それが使えない者たちから真っ先にホームレス化しているという事実」
この解説を読んで
当たり前だと思っていた今の生活や家族や親のありがたみが一気に身にしみて
泣けて泣けてしょうがなかった。
飢えや寒さの辛さ
食糧確保の苦労
更には、地下生活での人の生死を
桐野さんの緻密な文によって
イオンと共に体験して
自分の骨身に刻みつけられて
そこまでしないと
家族のありがたみに気づけなかった自分の愚かさに 泣けた
同じ年で既に親になってる人も多いというのに情けないなあ自分
そして
物語の核となるイオンの出生の秘密だが
巻末の参考文献のタイトルを見て
ファンタジーなんかじゃない現実に行われた実験なんだと気づいて
これにもまた衝撃を受けた
ネタバレになっちゃうので詳しく書けないんだけど
愛情を足して割って均一に全員に与えるための実験、といった感じ
……これのおぞましさが具体的に書けないのがじれったい
是非とも小説を読んでいただきたい
よしながふみの漫画『愛すべき娘たち』のある場面を思い出した
「恋をするって 人を分け隔てるという事じゃない」
友人のその台詞をきいた主人公が、帰って彼氏を抱き締めたように
今 私も 大事なひとを思い切り抱き締めたい気分だ
今年は 好きなひと達だけを目一杯贔屓して
いっぱい好きって言おう
そう思った