二月中旬より始まった私の右の膝痛!特徴は それほど過重な運動をしたわけでもないのに、ダンスの微妙な舞踏所作の捻りが災いして その日はよくても 翌朝目が覚めると膝に異和を感じーーそれが今までとはどうも違う感じなのでーー次第に違和が膝痛に発展して 日常生活には支障はない範囲のものではあるものの 当該部位を中心とした右脚部の所作や動きのシャープさが失われ 代わって当該疾患部位を中心とした右脚部に弾性ゴムが介在したかのような鈍重な感じ ルーティン化した筈のtrekkingや長いWalking を億劫に感じるようになっている自分に気づかされたことです。
 実際に 筋肉痛や関節痛は歩いて治すと言う自身の経験則から今まで通りハードな運動を課してみたのですが、逆効果!後に悪影響が顕著に 幹部部位だけに留まらず広範囲に伝播いたしました。
 過重な運動や長時間の歩行挙動を継続させる状態を課すと 左右不均等に筋肉の強張りと筋肉痛が下半身右側にのみ生じました。膝関節を中心に 足首から太腿上部 臀部と腰部まで帯状に生じたのです。処方としての日課となったマッサージが大変でした。
 この時期においては 筋肉痛には揉みほぐすと言う通常の方法より思いつきませんでした。過重な運動による筋肉の強張りが膝関節に負担を強いて膝痛と言う名の関節痛になるのではないかとこの頃は想像しておりました。
 しかしある時期から 筋肉痛と膝関節痛の関係は、原因と結果と言う因果関係のレベルに於いては逆ではないのか?ーーと考えるようになったのです。関節を中心とし それを取り囲んだ筋肉の強張りが関節部を圧迫して関節痛と言う現象に至るのではなく 関節部の回転の不全性や不完全性が筋肉の強張りや筋肉痛を生むのではないのか?と思うようになったのです。試みに両膝の屈伸運動の状態をみるに 右膝関節は正座が出来ない状態だったのです。通常 椅子の生活が殆どでしたからそのことに気づかないで来たのです。
 そこで考えたのが構造力学の考え方を応用してみることでした。構造力学とは言っても難しいものではなく 初歩的な構造体における部材と部材を繋ぐ節点の考え方ーーつまりピン接合と剛節(ラーメン構造)との違いについての初歩的知見を自らの身体に応用してみることなのでした。

 下記に インターネットから借用した ピン構造と剛構造(ラーメン)の概念上の違いを 上下に表示してみました。

ピン構造と剛構造の応力図と解析式

ピン構造 条件:集中荷重(中央載荷)

単純梁集中荷重

剛構造 条件:集中荷重(中央載荷)

両端固定梁集中荷重

 一本の丸太橋に人が一人 中央に乗った感じの一点集中荷重が条件ですね。但し、丸太橋を支持する両端の固定条件がピン接合と剛構造ラーメン接合と言う風に違っています。
 ピン構造に於いては 固定端は回転の自由度があります。つまり曲げモーメント図に就てだけ言えば(図中 M図の応力分布図を見てください)  荷重時に応力的挙動は橋の部材内で完結します。つまり、丸太橋の掛かっている両端には曲げモーメントは反力としては生じません。
 剛構造ラーメンに於いては 応力挙動に伴う軸回転が拘束されている分 捻り方向の曲げモーメントが生じて部材に抵抗します。

 何を言いたいか?と言えば、人間の関節はピン構造に近い と言うことなのです。

 人体の当該関節の回転や屈伸度が何らかの理由で阻害されると、実際の橋梁などのピン接合部が錆び付いた状態が計算外の偏荷重やモーメントを生じるように 膝関節を包みあらゆる方向に繋がる筋肉系に 計算外?の負荷が掛かり 残留応力として関節に連なる筋肉系に 強張りを産み ひいては筋肉の強い強張りと緊張が関節部を圧迫し、痛みとなって現れたーーと言うことになります。
 もし膝関節の屈伸度や自由度が高ければ、運動による筋肉の緊張や強張りは 関節部の自由度や「あそび」ーー車のハンドル操作で言う「あそび」も同様ですがーーの許容範囲に吸収されてしまう とも考えられるのです。健全な身体やとりわけ若いうちは係る自由度の高さ つまり「あそび」の存在によって、不具合は生じ難い と考えられるのです。
 関節痛は、当該部位の周辺の筋肉の強張りや緊張を揉みほぐす事による効果がしばしば限定的であるのは 原因と結果を取り違えているためで、関節部の不全性 機能障害が周辺部の筋肉に強張りや緊張を与えているのです。
 繰り返しになりますが、人間の人体構造に於ける諸関節はピン構造に近い状態のものと考えられます。人体諸関節部が何らかの障害で屈伸運動がし難くなると つまり機能保全度に於いて錆びついた状態になると 構造力学的には半剛構造半ラーメンに近い状態になる と言うことですね。人体諸関節の自由度障害がある限度を超えれば、関節痛とそれに付随した筋肉の強張りが生じ、その強張りがまた倍加され反復された形で関節部にストレスを与え 結果的に痛みは暫時的に痛くなる、と言う風に考えられるわけです。
 処方が決まりましたので 少しずつ膝関節の屈伸運動を日々のstretch運動の一環として付け加える事にしました。他方 関節部の脆弱さを補完するために 筋肉の層を厚くすると言う意味で 筋肉trainingを連続し並行して励行しました。
 誠に亀の歩の如くではありますが、膝関節の屈曲度が自由度を暫時 徐々に回復するに従って つまり膝が曲がるような実感を少しずつではありましたが自覚的レベルで確かめえる事が出来るようになるに従い、関節の痛みと筋肉の強張り、さらには筋肉左右不均等の緊張度の差からくる違和感は 静かな海の引潮のように引いていったのでした。
 とは言え ほぼ完治したと言う実感は持てても完全ではありません。ほぼ曲がるのは曲がるのですが、件の「あそび」の確保がまだ完全完璧とは言えない感じです。今後も気長に根気強くお付き合いを続けるほかはないようですね。長年の蓄積による身体の部位別機能不全と機能調整の不備から来た脚部の部分的不具合とその是正は 一朝一夕と言うわけにはいかないようですね。