「あ、きた!」
考えていると、恵が声を張り上げた。
真向かいに顔を上げると、同年代くらいの、若い男の三人組。
恵に向かって片手を上げているところを見ると、どうやら真ん中の彼がその相手、らしい。
なるほど。
中の上、と言ったところだろうか。
恵のそのお相手は、勉くん、と言った。
なんと恵の妹からの紹介で知り合ったのだという。
見ていると、どうやら向こうの方が恵により惚れているらしかった。
恵の一喜一憂にいちいち反応しているし、甲斐甲斐しく世話を焼きたがった。
一緒に来ていたのは、勉くんの先輩で、春樹、という男と、甲斐くん、という男だった。
二人とも、私たちよりは三つ年上だという。
その先輩たちが面白いことを言って私たちを笑わせても、勉くんはやきもちを妬くかのように、恵にあからさまにフォローを入れた。
〈俺のめぐちゃん、取らないでくださいよ〉と。
そして途中からは恵の隣に座って、二人で仲睦まじく世界を作って話し出した。
時間の問題だろう。
多分恵も、情にほだされやすい。
好きだと言われると、強くは拒めないはずだ。
それが、あからさまにタイプではない男でない限り。
そんなところも私たちは似ている。
おそらく勉くんは、恵のまぁまぁど真ん中のタイプだ。
中の上くらいのイケメンで、背は高くないけど、おしゃれに気を使っていて、おしゃべり上手で、恵を引っ張って上に立ってくれそうな。
恋愛でも似たような砂漠を彷徨っていた私たちだけれど、恵の方が一歩先に抜け出せそうだ。
それを、羨望とも、安堵の気持ちともどちらとも呼べるような気持ちで、眺めていた。