あ…今日も、また、いた。
通学に使っている、学校の最寄駅。
そこで、最近よく見かける彼。
ホームの真ん中あたりのベンチに座っていて、いつも、スマホをいじっている。
耳には、無線のイヤホン。
そこまでは普通だけど、ベンチに座る姿は、そこら辺の高校生の男子とは比べ物にならないくらい、雰囲気がある。
隣の高校の制服を着た姿は、座っていてもすらっとしていて、足が長くスタイルいいことが分かるし、後頭部は小さく、顔はもっと小柄だ。
程よく日焼けした肌に、スマホを握る、大きな、手。
初めて見た瞬間に、恋に落ちた。
かっこいい、と。
あんなにかっこいい人、きっと一度見たら忘れないはずだ。
でも、今まで一度も見かけたことがなかった。
高校の、帰り道。
最近は、ホームルームを終えてまっすぐ帰ってきた頃、大体四時半の電車に乗るときに、見かける。
一年生には見えないし、あの雰囲気からして、多分、先輩。
三年生かな。
もしかしたら、これまでは部活とかしていて、こんな夕方の電車には乗ったことがなかったのかも。
三年になってようやく引退、ということだろうか。
今日も、同じ方向の電車に乗りながら、彼をちらちらと盗み見る。
いつも私が降りる駅よりも先の方へ行くので、彼がどこで電車を降りて、どの辺に住んでいるのかは分からない。
すると、彼がスマホから目線を上げて、ちら、とこちらを見た。
ぱち、と目が合って、心臓が爆発しそうに跳ねる。
必死に口角を上げて微笑んでみようと試みたが、緊張でうまくいかないった。
無表情のまま彼は、またスマホに目線を落とした。
いつも一人だし、笑ったところなど見たことない。
スマホをいじっていても、あまり表情は変わらないけど、そんな姿もかっこいい。
手紙、とか渡したら、迷惑かなぁ。
せめて、メッセージアプリだけでも、交換。
名前も分からないし、SNSで検索も出来ないなぁ。
どうにかして、近づきたいなぁ。
そんなモヤモヤを抱えたまま、いつまで経っても声が掛けられず、しばらくが経ったころ。
今日も、またいつものようにベンチに彼は座っていた。
私は、ポケットにメッセージアプリのIDを書き留めたメモを潜ませていた。
今度こそ、渡したい。
「あの…」
と声をかけようとした時、
「夏喜くん!」
後ろから、女の人の声がした。
すると彼が顔を上げて、私の方を見た。
…じゃなくて、その目線は、私を通り越してその後ろへ。
すぐさま一人の女性が私を追い越して、彼が座るベンチに腰かけた。
"なつきくん"
とは、彼のことだったのだ。
映画を見るようなワンシーンだった。
短いスカートから白くて長い足が伸びた、スタイルのいい女性。
そんな彼女を見て、彼が目を細めて笑っている。
笑ってるとこ、初めて見た。
無表情で静かな彼も雰囲気があってかっこいいけど、笑った顔は子供のようにかわいくて切ない。
おでこをくっつけ合って、彼のスマホを二人で覗き込む姿。
彼がつけていたイヤホンをかたっぽ彼女に渡して、同じ音楽を共有する彼ら。
なんだ、彼女いたんだ。
私の初恋は、そこで砕かれ弾け飛んだ。
せつない。
家に帰って、SNSで、"なつき" と打ってみた。
案外、すぐにヒットした。
隣の中学、隣のこうこう、結構共通の友達がいるみたいだ。
せつないな。
でも、まだチャンスはあるかな。
諦めなくったって、友達くらいにはなれるかも。
でも、あんなきれいな人が彼女なら、勝ち目、ないかな。
……
わーん、切ないねぇ💦
私、なっちゃんに対してって、どうしても憧れの存在、ってイメージが強いのよねぇ😢
職場だったら、イケメンの、目の保養にしたい上司、学校にいる、憧れの先輩、とか
見た目がどタイプ好きすぎるせいかしら🥰