不定期の能楽鑑賞
今回は『鉄輪(かなわ)』
アイ(狂言)が最初に登場する珍しいパターン
貴船神社の神職(アイ)は
午刻参に来る女性に託宣を告げにやってきます
はたして京の女(前シテ)が現れます
女は夫に捨てられた恨みがあり
呪いをかけようとしていました
神職は女にこう告げます
「赤い衣を着、顔も赤く塗り立て、頭には鉄輪を載せてその各足に火を灯しなさい。そうして瞋りの心を抱き続けるならば、所願は忽ち叶うでしょう」と
最初は衣をすっぽり被って静々とあらわれた女は
ぱぁっと衣をはらって脇に抱え
キッと形相を変えます
神職は恐ろしやと逃げて行きます
さて、元夫(ワキツレ)は夢見が悪いと
陰陽師の安倍晴明(ワキ)に夢占を頼み
元妻(女)の呪いを知ることとなり
安倍晴明は祭壇に
人形(ひとがた)や御幣をおいて祈祷します
やがて女(後シテ)は頭に鉄輪を乗せ
内杖(うちづえ)を持つ異形(生霊)となって現れ、祭壇を見つけますが
安倍晴明の術で
祭壇の人形は元夫とその妻に見えるので
女は恨み言を吐きながら打ち据えますが
護法の神々が祭壇の御幣に降りきて
女を責めたてるので
神通力をなくした女は退散していきます
写真は観世流蝋燭能『鉄輪』より
アイは野村萬斎さん
シテは観世喜正さん