大手に続き、中小の賃上げも高額回答が続いている。今年の春闘は、満額回答や要求を上回る回答を出している企業があり、喜ばしい限りであると思う。
やっと日本企業の労使とも横並び意識が改革されたかに見えるが、それにしても、自分が労働担当記者の時代から40年も経つが長く続いた壁がやっと壊されたように思う。
当時は戦後30年以上経つというのに労使関係の弊害そのままで、先鋭な労使関係か、会社の言うがままのどちらかだった。組合も、利益の出ている組合は、他の組合、特に業績の悪い大手企業の組合が高い要求を出せないことに気を使い、また時にはそうした組合から露骨に干渉され、あまり高額な要求は出せない。歩調を合わせると言えば格好いいが、要は、高額要求できない組合幹部のメンツを立てるために、高額回答が期待できる組合や産別組合の要求を潰していたのだ。こうしたことを記事にし、組合は大騒ぎになったが、改革されることはなかった。
また、経営側も、内部留保を溜め込む一方で、社員の給与増や配当増、研究開発、設備投資の大幅増を図る経営者はまれだった。まるで内部留保を上げることが良い経営と考えているかのようで、内部留保増やしに邁進していた。それが、内部留保の取り崩しが言われ始めた10年ほど前から、さらに続いていた。
今年はUSスティールとの合併を控えた日本製鉄が初めて、横並び回答をやめた。アメリカ国内で合併反対の声が高まっているのを解消したいとの思いもあるのだろうが、一回くらいで米国世論が変わるだろうか。もっと早くからやっていれば、USスティールの従業員の対応も違っていたのではないか。
日本式経営、日本の労使関係を自画自賛していたのは1980年代くらいに多かったように思うが、それは幻想に過ぎなかったのではないか。