二人は、綾子が住む町の私鉄の駅で会った。ちょうど、夕暮れ時だった。

 「久しぶりですね」

 「うん」

 それだけだった。駅のすぐそばに、喫茶店があった。

喫茶店に入ったが、オーダーすると健三は、押し黙ったままだった。綾子も黙っていた。2人がコーヒーをすする音だけが聞こえる。

 とうとう、綾子が尋ねた。
 「今日は、どうしたのですか」

 「うん、ちょっと会いたいなと。君がサークルを辞めてから全然会ってないし」

 「そうでうすね」

 健三は、何かしゃべりたそうだったが、それでも、その言葉をかみ殺しているようだった。

 時間がたったように思えた。すでにコーヒーが2杯目になっていた。それも、つきかけようとしている。

 「あのう」

 <話がないのだったら、もう行っていいですか>

 と、綾子は言おうとした。その前に、健三が立ち上がって、

 「ちょっと行こうか」

 と伝票を手にした。

 「あっ、はい」

 気押されて、綾子が頷いた。

 会計が住むと外に出た。外は暗くなっていた。

 「公園があったよね、このあたりに」

 「ええ」

 「そこに行ってみたいなあ」

 綾子は、少し警戒したものの健三が、いきなり変なことをする人間ではないと思って、

 「いいですよ」

 と答えた。

 「こちらの方です」

 先に綾子が案内すると、健三はすーっと横についた。