2時間ほど、映画に釘付けになってしまった。短い時間に、これだけの展開と深い叙情を湛えた映画を知らな
い。
朝鮮戦争の英雄で、フォード自動車に勤めていたウォルト・コワルスキーは妻に死なれ一人で暮らしている。子供や孫との行き来はほとんどない。
彼の住む所は、アジア人が大勢引っ越してきて、白人が逃げ出した地域である。隣にモン族一家が移ってきたが、人種的偏見を持っているウォルツは、彼らとの付き合いを拒否する。
ある日、彼の大事なヴィンテージ車を盗もうと、隣家のタオが忍び込んだのを見つけ、銃で脅して退散させる。警察には届けなかったが、ウォルツの心は、ますます偏見を持つのだった。
しかし、ふとしたことから、彼の姉と仲良くなり、タオが従兄と彼の仲間の不良少年に脅されて、車を盗もうとしたことを知る。しだいに、タオの心情を理解するウォルツ。一家と親しくなり、その習俗にも理解を示すようになっていく。
不良少年らの一家の嫌がらせはエスカレートしていく。一家を助けようと、ウォルツは必死になるが、ついに一家とウォルツの家が銃撃され、タオはかすり傷を負う。そして出かけていた姉は、集団レイプされる。「復讐したい」というタオ。しかし、ウォルツは冷静になれとさとし、一人で不良少年のたまり場に向かう。
最後のシーンは、予想もつかなかった。彼の偏見が、隣人を愛する心へと変わっていく過程が手に取るように分かる。クリント・イーストウッドの監督としての見識・心情、役者根性を見せてもらった。今年最高の映画だと思う。
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