英国を舞台にした真実のドラマに、最初から終わりまで、引きずり込まれた。
第5代デボンシャー公爵に嫁いだジョージアナ・スペンサーの結婚は、幸せを夢見る17歳の少女をこなごなに打ち砕いた。公爵には、すでに妾との間に1女があり、しかも次々と女性に手をつける。それでも我慢を重ね、女の子2人を設けるが、公爵は、男の子を産まなければ義務を果たしたことにならないと迫るのだった。
公爵は、ついには、彼女が親しくなったエリザベス・フォスターにも、手を出す。エリザベスは、夫が愛人にいれあげて、家を追い出され、子供たちにも会えない境遇だ。同情したジョージアナは、公爵家のロンドンの家に住まわせる許可を求め、公爵はこれを許すのだが、彼はジョージアナの親友になったエリザベスと恋仲になってしまう。エリザベスは、彼女の子供たちに会いたい一心で、公爵の力にすがったのだが、ジョージアナの気持ちはおさまるわけがない。
ジョージアナは、公爵が支援するホイッグ党(旧自由党、今の自由民主党)の若き政治家で独身のチャールズ・グレイと恋に落ちる。その時、公爵との間にできた男の子を産むが、その後、グレイとの間にも女の子をもうける。体面上、離婚を許さぬ公爵は、子供をグレイの実家に渡してグレイと別れろ、と迫るのだった。
ジョージアナの実家スペンサー家といえばダイアナ元皇太子の旧姓と同じである。そう、ダイアナとジョージアナの先祖は同じなのだ。と、こうなれば、誰しも後に続く悲劇を予期する。しかし、事実は小説よりも奇なり。ジョージアナは、グレイと別れ、公爵も平穏な生活を望む。とはいえ公爵家での奇妙な三角関係は続くのだが、エリザベスが、ジョージアナに尽くしてくれるのが、彼女の心を和らげたようだ。後に、グレイは首相となるが、ジョージアナは、彼との間にできたイライザにしばしば会っていたとか。
ジョージアナは死ぬ時に、エリザベスと公爵に結婚を遺言として残し、公爵もそのようにする。
と、まあこういうストーリーである。週刊誌や新聞による映画評が、普通の評価だったのは、公爵のあまりの好色ぶり、ハッピーエンド的な終幕が、あまりお気に召さなかったようだと推測される。しかし、事実を曲げるわけにはいかない。これはこれで、赤裸々な真実の物語である。当時、英国を揺るがした大スキャンダルを、美しい英国の風景を下地に、テンポよく、あますところなく表現したソウル・デイブ監督の手腕を評価したい。
主演のキーラ・ナイトレイ、公爵を演じたレイフ・ファインズ、エリザベス役のヘイレイ・アトウェルら演劇学校出や芸達者な脇役陣が、情熱的な、あるいはクールなな演技で要所、要所を締めた秀作である。
ただ、デボンシャー公爵家のあの美しいダービーシャーの領地、チャッツワースの館と庭園が、ほんのわずかしか出てこなかった、と思われる。はっきり認識できなかったが、チャッツワースに似た場所が、ほんの少しだけしか映し出されなかった。それが返す返すも残念だ。
映画のオフィシャルサイトは、 http://www.koushakufujin-movie.jp/
チャッツワースの関連サイト
http://www.ngs-jp.org/world/chatsworth.html
http://goo183.exblog.jp/4052455/
http://britannia.cool.ne.jp/travel/peak/eng_2-02.html
http://www.chatsworth.org/ (チャッツワースの公式サイト)
http://tabi.nikkeibp.co.jp/tabi/gallery/079_british_gardens2/british_gardens2_14.html
http://www.jsjardin.co.jp/comu/e_garden/e_garden_18.html