げいじゅワールド

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ソラリスです

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タカハシとキリヤマの話
サッカーグラウンドで寝転んでるキリヤマとヤマイヌの元にシラサキは新メンバーハットリ、タカハシ、アカシを連れてくる。
─────────
サッカーグラウンドにはキリヤマという深緑色でマッシュルームヘアーにアホ毛が立っている髪をした少年とヤマイヌという茶髪で大きな犬の耳のような髪型をしている少年が休憩と称してグラウンドに寝転んでいた。
すると見覚えのない3人が監督とグラウンドに入ってくる。気になったキリヤマは監督に尋ねる。
「…監督。彼らは?」
若草色の髪の毛をオールバックにし、それを後ろで束ねている髪型の監督と呼ばれた男、シラサキはそれに対し
「今日からこの3人も加わる。よろしくしてやってくれ。」
と説明を省きメンバーの追加を告げる。
「…?」
キリヤマとヤマイヌが状況を飲み込めずにいると3人の中の1人の紫色で規則正しく伸ばしたような髪をした少年が元気のいい声で
「あ、あの!今日から一緒にサッカーさせていただきますっ!ハットリと言います!」
と自己紹介した。
「ハットリ。」
ハットリという少年の後ろでは黒色の短い髪をした少年と緑青色のポニーテールに結った髪をした少年が何やら驚愕とした顔をしていた。
「は、はい!」
「どこやるの?」
「は…はい!俺はMFをやらせて頂いておりますっ!中盤から前線へ繋いでチームに貢献できるように頑張ります…?」
そこでハットリはようやく気づく、メンバーが少なすぎることに。
サッカーの試合をやるには最低8人、普通なら11人は必要なのに自分たちが追加されても5人しかいないのだ。
「ふーん。」
なにやら無関心な反応をされてしまったがハットリの思考はそこには向かなかった。
「…あの」
自身の中にある疑問を尋ねようとしたがそれを遮り、
「ほぇーすごいケン!ポジション分かるんだね!ワイまだMFの意味がよーくわからんケン!」
と、キリヤマと一緒にいた少年、ヤマイヌが感激する。
「おいおい、なんだよこのサッカークラブは。」
ここで黒い髪をした少年、タカハシが蔑視したような口調で話す。
「ちょ、ちょっとタカハシ…!」
タカハシを宥める少年は緑青色の髪をしたアカシだった。
「まったく、あのオッサン俺たちにサッカークラブに入らないかって誘ってきたくせにメンバーもこれっぽっち、オマケにポジションも分かんねぇのかよ。」
タカハシは宥められてなお蔑視する言葉をやめない。そんな彼にキリヤマが尋ねる
「…君はどこ?」
「はぁ?」
キリヤマの問いに対してタカハシは一瞬何を聞かれているのか分からなかったがすぐに理解して
「ふん、FWだよ。シュートを打つヤツ!」
と簡単な説明も添えて答えた。
「俺はGKだから…。シュート止めなきゃいけない。君のも止められるようになる。」
キリヤマのその答えはタカハシには予想外に挑発的なもので驚愕する。
「っは!させねぇよそんなこと!」
タカハシは失笑しながら言う。するとキリヤマは
「だめ。絶対止める。」
と、なおも挑発的に宣戦布告する。
タカハシは未だに彼らを軽視していたが、このとぼけた顔をした男がGKとして挑発的になれるほどの力を持つのか興味を持った。
「…面白ぇじゃん?アンタ、名前は?」
「…キリヤマ。」
「キリヤマさん…ねぇ。俺はタカハシ、ストライカーとして、あんなでかい口叩かれたんなら黙っちゃいられねぇよ。アンタに俺達のゴールを守らせられるか、試してやる。」
「…分かった。」
タカハシは自分のストライカーとしての実力を見せつけることと同時にこの男のキーパーとしての能力を試してやろうとPKを申し込む。キリヤマはそれに応え、手にしていたサッカーボールを無言でタカハシに投げ渡した。
「え…えぇ。おいタカハシ…出会ってそうそうまたケンカみたいな事を…。」
あまりにもスピーディーな展開にハットリは困惑する。今回に限らず彼は喧嘩っ早い性格のようだ。
「こうなったら何も聞いてくれないからね…。まあ今回は止める理由はないし。良いんじゃない?」
同じく戸惑いながらも呆れた様子でアカシが言う。そうしている間にも、2人は1体1の形になって睨み合っていた。
「ヤマイヌ、審判任せていいかな。」
「ま、任せるケン!」
キリヤマがヤマイヌに審判を頼む。
「はぁ、大丈夫かよ初心者みたいなやつが。」
タカハシは小声で愚痴る。その言葉は2人にも薄く聞こえてきたが2人は気にしないようにする。
「さーて、まずは1本いくぜ。キリヤマさんよぉ。」
「どうぞ。」
キリヤマは構える。それを合図にタカハシは思案する、頭の中であの男がどう動くのかを。そして
「っりゃあ!」
と力強いシュートをキリヤマの守るゴールめがけて蹴り込む。
ボールはゴールの右上を目指していた。
キリヤマはボールの軌道を察しすかさず右…彼からすれば左の方向に走り込む。しかしボールはキリヤマの指をチッという音と共に掠め、ゴールに吸い込まれてしまう。
「…はっ!なーんだそんなもんかよ!やっぱりダメじゃねぇか!」
キリヤマの実力を知ったタカハシはまたも蔑視するような言葉を彼に向ける。
「まだ…」
「はぁ?」
「まだ…1本しか取られてない。」
タカハシの言葉にキリヤマは挑発的であった。確かにPKは5回勝負が基本、1本取ったくらいで舞い上がってはいられない。
そもそもキリヤマの目は彼のシュートを捕らえていたのだから。
「…何回やっても同じだって。分からせてやろうか?」
キリヤマの言葉に心なしかタカハシが苛立つ。なぜこの男はこんなにも挑発的なんだろうか…と。そんな彼に追い打ちをかけるように
「シュート、外さないでね。止められないから。」
とキリヤマは言葉を飛ばす。
「アンタ、挑発する相手は選んだ方がいいぜ…?」
タカハシは頭に血が昇っていそうな程キリヤマを睨みつける。ああそうか、この男は相手の冷静さを削ぎ、シュートを外させてこれまでゴールを守ってきたのか、とも思い始めていた。この男のペースに乗せられてたまるか。タカハシは頭に昇った感情を整えるように息を吐く。キリヤマはタカハシが言ったことの理解に苦しんだ。そして理解することを諦めた。
「さて、まだ1本だもんなぁ。次打たせてもらおうか。」
タカハシは心の中のもやもやを潰すかのように地面にサッカーボールを叩きつける。
彼の顔は冷静さを取り戻したように見えたが彼の目の奥の野心、禍々しいほどの負けるものかという気持ちはまったく引くことを知らない。
「っ…!」
キリヤマが構えると2本目のシュートを打つ体制に入る。しかし、そのシュートに対するキリヤマの反応は想像と全く違うものだった。
「…っ!どういうつもりだ!」
タカハシの放ったシュートはなんの抵抗もなくゴールに吸い込まれる。この行動にはタカハシだけではなくハットリやヤマイヌも唖然としていた。
「き、キリヤマ?どうしちゃったケン?」
ヤマイヌが尋ねると
「これで後がないから、本気になれる。」
とキリヤマは応える。
「ちょっと…それじゃあさっきまでは本気でやってなかったみたいじゃ…!」
「何が本気だ舐めてんのか…!止められるっつったのはアンタだろ!?あぁっ!?」
キリヤマの言葉にタカハシだけでなくハットリでさえも彼に軽蔑の眼差しを向けた。
これがこれから自分たちのゴールを守らせなければならないプレイヤーなのかと。
「ちぃ…!いい機会だ。この勝負俺が勝ったらお前らはこのクラブを退会しろ!メンバーは俺達が集める。」
「…!!」
「そ、そんなぁ!そんなのあんまりだワン!」
タカハシの言葉にキリヤマはピクッと反応しヤマイヌは苦々しい声を上げる
「いいよ。その代わり俺が勝ったら君たちはここに入って。」
キリヤマはタカハシの言葉を受け入れるつもりだ。その言葉に対しタカハシは
「ああ、いいぜ?アンタらに従ってやるよ。」
タカハシは次の勝負の体制に入る。
「これで…決める!!」
渾身の力を込めたシュートがあとのないキリヤマの守るゴールに向かう。ボールはゴールの右上に向かっていた。タカハシには、またもあの男が反応できずにこの地を去るしかなくなる、そんなシナリオを思考の中で完成させていた。対するキリヤマはさっきとは比べ物にならないほどの力の入った目をしていた。
「はあああっ!!」
というさっきまでの彼からは想像もできないほどの咆吼をあげ、タカハシの放ったボールに飛びかかる。
ザザッという靴音をさせ、タカハシのシュートをパンチングで弾く。キリヤマがタカハシのシュートを初めて止めた瞬間だった。
「やった!キリヤマが止めたケン!」
キリヤマの活躍にヤマイヌが歓喜する。
「ま、まぐれだ…!次、決めれば俺の!」
タカハシは自分に言い聞かせるように自身の優勢を訴えかける。それに対し
「そうだね、外さなければ。」
とキリヤマはなおも煽る。キリヤマが話している間にアカシがパンチングによって弾かれたボールを拾ってタカハシに向かって投げ渡していた。タカハシはそのボールを受け取ると、一旦ボールを止めてゴールを見る。
すうっ…はぁっ…とあの男に対する憎悪と呼べる感情を吐き出すように深呼吸した。そして思案する。左下だ、そう思い思案した場所へボールを打ち込む。
「うぉらっ!!」
タカハシはボールを打ち込む。ボールは彼の狙った場所、ゴールの左下へ正確に向かっていた。先ほどのキリヤマの好セーブを考慮しての判断だった。先ほどのシュートにて上側に打てば高身長である彼にとっては有利となってしまうと考え、また比較的打たれやすい右側への反応が早いことがうかがえた。さらにパンチングを使ったことからキャッチする能力は低いのだと考察した。その判断から左下へシュートを打ったのだ。これで俺の勝ちだ、タカハシは勝ちを確信していた。
タカハシの考えは間違っていなかった。確かに高身長である彼に低いシュートはとても有利と言える。しかもコロコロと地面を転がりそうなほど低空飛行でパワーのあるシュートは簡単に止められそうで実は反応のしづらいものなのである。
「っ!」
しかもキリヤマは逆をつかれたのか一度右足を踏み込んでいた。しかし、素早く立ち直り、逆の足を踏み込みタカハシの打ったシュートを捕らえる。
「やああ!!」
と、またも咆哮をあげ彼はシュートを潰すかのように右腕を振り下ろした。ずざざっという摩擦音が響き、ガツッという音がした。キリヤマの腕にはタカハシの放ったボールががっしりと握られていた。
「すごいケン!キリヤマー!」
ヤマイヌは歓喜してピョンピョンと跳ねる。
「…ちぃっ!」
タカハシは勝利を確信しかけていたシュートが止められて苦難の表情を浮かべた。見守っているアカシとハットリもタカハシのシュートは決まってしまったのだと思っておりキリヤマの姿を見ながら唖然としてしまっていた。しばらくしてボールを握りながらうずくまっていたキリヤマが立ち上がろうとする。
「う…くっ…!」
しかしその表情は苦痛に満ちていた。どうやら先ほどのセーブした時ゴールポストに背中をぶつけてしまったようだ。背中を見る限り打撲だろうか、ズキズキと痛みを背負ってしまった。
「キリヤマ!どうしたケン!?」
ヤマイヌはキリヤマの声に不安の表情を浮かべる。
「大丈夫。次の勝負絶対負けない。」
キリヤマはタカハシに掴んでいたボールを投げる。タカハシはそれを右足で受け取る。
「これで同点かよ…俺もあとがねぇってわけか。」
「…負けない!」
キリヤマはタカハシを開花したようにギラギラした目で鋭く見据える。
「ムカつくぜその目…!いいぜ…やっぱり俺に考えるサッカーは向いてねぇ…。いつも通り力で勝負してやる!」
タカハシの手は握りしめられワナワナと震えている。あんなにもあの男のペースに乗るものかと思っていたのに今や完全にあの男に乗せられている気分だった。この男は食えない、そう思っていた。今までの彼がどう生きてきたのかは知らないが、ゴールキーパーのプレッシャーというものはエースストライカーとは似て非なるものだろう。チームの最後の砦。心理戦で動じない心、これがゴールキーパーのキリヤマという男なのか。
「…よっしゃ。行くぜ!」
掛け声とともにタカハシのシュートが放たれる。
「あ…。」
声を発したのはハットリだった。タカハシのシュートはとても鋭く力のあるものだった。しかし外れていた、大きく左にズレていたのだ。
「嘘…だろ。」
タカハシはシュートの軌道がズレていることを察すると落胆の表情に変わる。この勝負はキリヤマの勝ちだ。この場にいる者のほとんどがそう思った。しかしキリヤマはタカハシのシュートの軌道が反れていることに気づかなかった。そのため彼のシュート目指して走っていた。そして彼のシュートを足で捉える。
「はあああっ!!」
捉えたシュートをキリヤマは打ち返す。そのボールはシュートを打ったタカハシの元へ飛んでゆく。
「…は!?」
タカハシは動けなかった。勝負に負けてしまったショックもあるが、それ以上にあまりにも予想してなかった出来事だったのだ。
「タカハシ!」
ハットリが叫ぶ。アカシは焦る。その時タカハシの横から小柄な体が飛び出した。
「危ないっ!」
その声とともにその体の頭がタカハシに向かっていたボールをはじく。弾かれたそのボールはゴールネットに刺さった。
「お前…。」
タカハシは自分の前に現れたその小柄な体をみて驚く。ヤマイヌだった。
「へへへ…これがワイの得意技だケン…!」
ヤマイヌは得意げにいう。彼はこぼれ球を捉え、再度攻撃に転じるというプレイが得意なのだった。
「あっ…。入れられちゃった。」
キリヤマは入れられてしまったことにガックリとした。キリヤマだけでなくハットリ達も予測できなかった展開に驚愕した。
「あ…あーあ。ははっ俺の負けかぁ…。」
結果としてゴールは決まったが当然タカハシは負けを認めた。そしてヤマイヌをみて
「ありがとな、お前!初心者だと思ってたけどすげーじゃん。」
とヤマイヌの頭をわしゃっと撫でる。
「えへへ…。伊達に15年生きてないケン!」
ん?とその言葉にタカハシは疑問を抱く。
「じゅ…15?ってことはお前…15歳ってことか?そんなまさか。」
ハットリとアカシもまさかと思った。
「ワイ15歳だケン!キリヤマも〜!」
ヤマイヌのセリフと共にキリヤマはヤマイヌとタカハシの元に近づいて来た。そしてキリヤマはヤマイヌをヒョイっと持ち上げる。
「ヤマイヌ、小さいけど15歳。」
「お、俺達より歳上だったのか…。」
ハットリ達3人はなんだか申し訳なくなった。これからは呼び捨ては極力控えようと心に刻む。3人が2人の年齢に驚いている時キリヤマが声をかける。
「ところでさっきの…連携?かどうか分からないけど。良かったよね。」
タカハシはハッとする。連携?その言葉で先ほどの勝負の条件を思い出す。そうか俺達はこれからこいつらと共にチームにならなければならない。
「ワイ、タカハシとツートップならどんなチームともやっていけそうな気がするケン!」
ヤマイヌはタカハシを見てニコニコする。タカハシは悪い気はしなかった。
「そ、そうか?…そうだな。俺達2人なら、どんなチームが相手でも点を取れる気がするぜ!」
タカハシは、にまっと微笑む。調子のいいやつだ、と思ったがこいつらとはもうチームなんだ、そう思いながら受け入れる。
「そうしてくれると助かるよ。俺のプレッシャーも減る。」
とキリヤマが話す。タカハシはキリヤマを苦笑いしながら睨みつける。
「おいおい困るぜそんな意気込みじゃ。俺の負けた相手が何回も失点なんてして欲しくねぇよ!」
タカハシは勢いでキリヤマの背中を叩く。
「痛ッ…。」
その行為は先ほどゴールポストにぶつけた背中の痛みをぶり返させた。
「あっす、すまん…。」
「ふふっ。タカハシ、キリヤマさんをカバーしてあげないとね。」
謝罪するタカハシにアカシは薄く笑いながら言葉をかける。
「とにかく、これからチームとして5人仲良くさせて頂きます!またこういうことがあるかもしれないですが…。よろしくお願いします!」
ハットリは締めるようにチームとしての激励をあげる。それに続き4人が和解する言葉をかけ合う。5人がチームとしてまとまる。
「よーしこれからたくさん練習出来るな!タカハシ、アカシ!」
「うん!…まだ人数は足りないけど。」
「まあそんなのは気がついたら集まってるものだワン!」
「まったく適当だな。こんなチームに入ってくれるやつ見つかるか?」
「大丈夫。俺達は強くなるよ。」
「ああ、そうだな。」
「ポジション取られないようにね。」
「言ってくれるじゃねぇか…!」
これが勝気なエースストライカーとちょっと気が抜けてるゴールキーパーの出会いだった。