私好きな人がいる。
多分好きな人。
恋愛がどう言うものか?
理解してはいないけれど、その男が他の人と話すだけで、絶望感を感じる、目で追ってしまう、腹が立つ、怒りが込み上げてくる。
職場が近づく度に帰りたくなる。
「チッ」鋭い舌打ちに反射的に前を睨むと、眉間に皺を寄せたスーツの女が「邪魔」と鋭く吐き捨てた。
考えるより先に「おめーが邪魔なんだよ、舌打ちしてんじゃねぇよ、クソババァ」と怒鳴り返していた。
中年の女は改札を通った所で「何よアンタ」声を震わせ怒鳴り返してきた。
「黙れババァ」中指をたてて前を歩く「くたばれババァ」と小さく呟く。
今日はお気に入りのブーツを履いたのに。
ブーツは歩き易いからいい、ダッフルコートを合わせるとすごく可愛いから好き、我ながら瞬間湯沸かし器の如くだと思う。
断続的にら怒りが込み上げては怒りが引き、前を横並びで歩く幼稚園の送迎帰りの母親に殺意を抱く。
「横並びで歩いてんじゃねぇよ焼け死ね、クソ女共」縛り上げて目の前でガキを締め殺してやろうか。
母親3人は話しに夢中で道を譲る気配は無い。
すれ違い様に睨みつけると「はぁー」と馬鹿にしたような声のあとに何やら話して、大きな笑い声が聞こえて来た、怒りで息苦しくなる。
始業前に明美さんに「きいてよ今日朝から最悪だったんだよ、中年女に邪魔って怒鳴れて、横並びの非常識3人ママには進路妨害されてさー
朝から中指たてちゃった」
明美さんは愛想のない顔で私は大嫌いなんだけど、今話す相手は明美さんしかいない。
「やぁね朝から、でも中指立てるなんてロックじゃない、可愛い手で」
は?中指を立てるのってロックなの?
「ホームアローンのイメージですけどねー」
私は指が短い、でも可愛い手って言われと馬鹿にされた見たいで微かにイラついた。
「私は指が短いんですよねー、ほら
明美さんは指が細くて羨ましい」
手の平を明美さんに差し出した。
明美さんの手は指が長いけど、私の手と比べるとゴツゴツしている。
「かわいい手、お手入れしてるの」
「んーたまにハンドクリームつけて寝るくらいですよ」
日報を印刷してファイルに挟む
「今日の日高所長の機嫌はどうかしらね」
この頃の私は兎に角イライラしていた、短い髪と硬い髪にも、少し伸ばすと爆発して鳥の巣みたいになる事も、同僚と上司にも、朝の電車も乗客も全て、前から歩いてくる人も、好きな人も。
夜寝れなくなるし、急に泣けてきたり。
好きな人にも衝動的に愛の告白したり、嫌いな同僚には敵意むき出しに皮肉をいったり。
怖い上司を負けん気だして睨みつけたり。
結局、退社した。