【TOKYOオリンピック物語】


野地秩嘉(のじつねよし)氏の心に響く言葉より…


あの頃と違い、今の人たちは何かを待っている。

いわく、

「景気がよくなるのを待って、このプロジェクトにとりかかろう」とか、

「この仕事がうまくいったら、次を仕掛けよう」…などと。

また、「世論調査の数字がもう少しアップしたらこの政策を進めよう」という政治家も多い。

「もう少しお金をためてから、起業する」人もいるだろうし、「先方の機嫌がよくなってからプランを提案しよう」というビジネスマンもいる。


みんな、何かが起こるのを期待して待っている。

自分から動いて、状況を変えようとしない。

しかし、待っていても、何も起こることはない。

待ちの姿勢が日本社会の元気を奪ったのだ。

私はそう考える。


20年来、日本は停滞し、漂流している。

復活するための方策が官民を問わず、いくつも提案されているけれど、なかなか効果が表れていない。

思うに、個々の具体策は別として、景気を上向きにするのに必要なのは、結局のところ、みんなが待ちの姿勢をやめることではないか。


「よし、やってやろう」というチャレンジングな気持を持っている人が増えない限り、社会に活力は沸いてこない。

活力のある人たちには共通点がある。

彼らは挑戦が好きだ。

他人にうながされてではなく、自ら変化を求め、新しい目標に向かって、がむしゃらに突き進む。

いわば物好きな人たちで、企業の創業者にはそういうタイプが多い。


また、活力がある人たちには好奇心がある。

新しいものが好きで、いわば物好きな人たちで、新しいところへ出かけていく。

社会が変化するには、元気で物好きな人と新しい何かが必要なのだ。


過去の業績によりかかって企画を考えたり、他人の提案をくさしたり、成功者をうらやむことでなく、自ら変わることの大切さ。

そんな自己変革の成功例として私が見つけ出したのが1964年の東京オリンピックであった。

東京オリンピックは日本の社会システムを変化させ、その結果、経済成長を加速させたイベントだった。


人は夢があれば下を向くことはない。

今、私たちが模範にするべきは新しい何かを求めて大きく変わること、そして、当時の人々が持っていた、変化を恐れない腹のくくり方を学ぶことだ。

『TOKYOオリンピック物語』小学館



全国民が奮い立つような、大きな国家的イベントが少なくなってしまった。

ワールドカップの視聴率が驚異的だったとはいえ、当時の東京オリンピックの盛り上がり方は別格だった。

東京オリンピックでは、多くの分野で大いなる挑戦と創造が行われ、それをきっかけとして様々な会社や業界が飛躍した。


それは例えば…

名作中の名作といわれるオリンピックポスターを製作した、グラフックデザインの世界。

コンピューターを駆使して大規模イベント・オリンピックを成功させた、コンピュータの世界。

毎日一万人の腹を満たすという、選手村での大量調理やセントラルキッチン方式を確立した、ホテル・レストランの世界。

オリンピックでの警備をきっかけに始まった、民間警備の世界。

映画「東京オリンピック」の誕生から始まる、新たな映像の世界。


かつての我々の先輩達は、未だ誰も踏み込んだことのない、新たなプロジェクトに、多くの人たちが無給に近い状態で飛び込んだ。

この仕事に関わることができることに名誉を感じ、国家のためという使命感に燃えて。


人々の気持が萎縮しているときは、前向きな挑戦や創造は生まれない。

しかし、人は何か少しでも夢を持つことができれば、下を向くことはない。

震災、津波、原発と、様々な難問が押し寄せる今、我々は、いつまでも下を向いて、何かが起こるのを期待して待っていてはいけない。


「東京オリンピック」は、日本を大きく変えた。

今こそ、あの頃の熱い気持を取り戻し、日本の復興と進歩のために、立ち上がるときだ。

遠くかなたの夢をつかむため、待つのではなく、前を向いて挑戦し続けたい。




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【人の心に灯をともす】 より

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