N君のことを色々書いたけれど、勘違いしないで下さいね?
N君は、とっても質(たち)の良い子でした。
素直で、真っ直ぐで、裏表が無くて。それに聡明で。
私は大好きでした。
もし、あの会社からメンバーを引き抜いて会社を起業するとしたら。
一番に思い浮かぶのは、N君の事です。
アキ君は二番目です。
それくらいの分別は、私にも有ります。
N君は過度のボディタッチをして、私を困らせたけれども。
二十歳前の彼女が、チャンといたのです。
常に道を踏み外さない。キチンとした人でした。
そんなN君でしたが、二人だけになると、こんな話をすることが有りました。
「hiroさん。俺、hiroさんと一緒に仕事がしたいなあ」
私は、無責任な事は云えないので
「俺も、只の使いっぱしりが欲しい」
とふざけて返事をします。するとN君は真剣になって
「hiroさん、真面目に聞いてよ!」
と私の目を見据えます。
私も常に考えていたのです。
毎年入ってくる新入社員を、どう教育していけばいいのか?
これは、本当に悩ましい事でした。
なにしろ教育がどうしたの前に、目標にしたい先輩が少なかった。
先輩は、数年後の自分の姿でも有る訳です。
私は、ゆっくりと話しました。
「N君。確か高専の化学系出身だよね」
「うん」
「この会社は、確かに化学系の仕事は少ない。けれど、会社の技術が進んでくれば、君の出番が
必ず来ると思う。君が慣れない機械設計をするよりは、其のチャンスを待つ方がいいと思うよ」
「そうかな?そんな出番が来るかな?」
半信半疑だったけれど・・・・・・彼は、其のチャンスをしっかり掴んで、会社の大事な人にな
って行きました。