祐(ひろ)は、床にポツンと座ったままです。。
ひざを両腕で、抱かかえて考えておりました。
”ムサシが、来る”
”まだ、残り香が漂っていそうな、この部屋に来る”
祐は、怯えた様子もなく。
ムサシが来るであろう玄関を、ジッと見詰めて
ピンポーン
「ガチャッ」
いきなりドアが開いて、ムサシが入って来ました。
祐は、そのムサシに、ジッと視線を注いでいます。
ムサシは、思いっ切り不機嫌な顔と、態度で祐を威圧します。
「ありがとう。ムサシ。御蔭で綾川さんと、最後の名残を惜しむ事ができた」
「でも、僕は謝らないよ」
「僕と君には、必要なことだったんだ」
そこまで祐が言うと、ムサシは祐を抱かかえて、ベッドに放り投げたのです。
「ドスン」
祐が、ベッドに叩き付けられてムサシが覆い被さってくる
「ムサシの馬鹿ヤロウ。こんなことになるのは、判ってたじゃないか」
「それでも、彼を泊めろといったくせに・・・・」
もうふたりは、何が何だか判ら無くなってしまいました。
言葉が、全く役に立ちません。
ふたりは、お互いの裸体を擦り付ける事の他を、考えられなくなってしまったのです。
セックスとは、お互いの裸体を、思いっ切り擦り付ける行為なのです。
祐は、綾川さんに、カラカラになるまで搾り取られた上に、ムサシからも徹底的に搾り取られたのでした。
それから、1ヶ月もすると。綾川さんは、会社を辞めました。
送別会は、祐が幹事をしました。
他の人が幹事をやるなんて、誰も考えていませんでした。
小さな会社の2/3くらいの人達が、来てくれました。
綾川さんは、人に好かれる人でした。
幸せな人でした。
これで、祐が一年後に会社を辞める必要は無くなったけれども。
祐は、大きなものを無くしてしまいました。
それは、ムサシを選んだからだけれども。
ムサシには埋められない事も、一杯あったのです。